「な、何ですって」ウィーズリー氏がきょとんとした声をあげた。
「『例のあの人』が ジニーに、ま、魔法をかけたと でも、ジニーはそんな……ジニーはこれまでそんな……それともほんとうに」
「この日記だったんです」
ハリーは急いでそう言うと、日記を取り上げ、ダンブルドアに見せた。
「リドルは十六歳さいの時に、これを書きました」
ダンブルドアはハリーの手から日記を取り、長い折おれ曲がった鼻の上から日記を見下ろし、焼け焦こげて、ぶよぶよになったページを熱心に眺ながめ回した。
「見事じゃ」ダンブルドアが静かに言った。
「たしかに、彼はホグワーツ始まって以来、最高の秀しゅう才さいだったと言えるじゃろう」
次にダンブルドアは、さっぱりわからないという顔をしているウィーズリー一家のほうに向き直った。
「ヴォルデモート卿きょうが、かつてトム・リドルと呼ばれていたことを知る者は、ほとんどいない。わし自身、五十年前、ホグワーツでトムを教えた。卒業後、トムは消えてしまった……遠くへ。そしてあちこちへ旅をした。……闇やみの魔ま術じゅつにどっぷりと沈しずみ込こみ、魔法界でもっとも好このましからざる者たちと交まじわり、危き険けんな変へん身しんを何度も経へて、ヴォルデモート卿として再び姿を現した時には、昔の面おも影かげはまったくなかった。あの聡そう明めいでハンサムな男の子、かつてここで首しゅ席せきだった子を、ヴォルデモート卿と結びつけて考える者は、ほとんどいなかった」
「でも、ジニーが」ウィーズリー夫ふ人じんが聞いた。
「うちのジニーが、その――その人と――なんの関係が」
「その人の、に、日記なの」ジニーがしゃくり上げた。「あたし、いつもその日記に、か、書いていたの。そしたら、その人が、あたしに今学期中ずっと、返事をくれたの――」