「帽子が僕をグリフィンドールに入れたのは」ハリーは打ちのめされたような声で言った。
「僕がスリザリンに入れないでって頼んだからにすぎないんだ……」
「そのとおり」ダンブルドアがまたにっこりした。
「それだからこそ、きみがトム・リドルと違う者だという証しょう拠こになるんじゃ。ハリー、自分が本当に何者かを示すのは、持っている能のう力りょくではなく、自分がどのような選せん択たくをするかということなんじゃよ」
ハリーは呆ぼう然ぜんとして、身動きもせず椅い子すに座っていた。
「きみがグリフィンドールに属ぞくするという証しょう拠こがほしいなら、ハリー、これをもっとよーく見てみるとよい」
ダンブルドアはマクゴナガル先生の机の上に手を伸ばし、血ちに染そまったあの銀の剣つるぎを取り上げ、ハリーに手渡した。ハリーはぼんやりと剣を裏うら返がえした。ルビーが暖だん炉ろの灯あかりできらめいた。その時、鍔つばのすぐ下に名前が刻きざまれているのが目に入った。
ゴドリック・グリフィンドール
「真しんのグリフィンドール生せいだけが、帽ぼう子しから、思いもかけないこの剣を取り出してみせることができるのじゃよ、ハリー」ダンブルドアはそれだけを言った。
一いっ瞬しゅん、二人とも無言だった。それから、ダンブルドアがマクゴナガル先生の引き出しを開け、羽は根ねペンとインク壷つぼを取り出した。
「ハリー、きみには食べ物と睡すい眠みんが必要じゃ。祝いわいの宴うたげに行くがよい。わしはアズカバンに手紙を書く――森もり番ばんを返してもらわねばのう。それに、『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』に出す広こう告こくを書かねば」ダンブルドアは考え深げに言葉を続けた。
「『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の新しい先生が必要じゃ。なんとまあ、またまたこの学科の先生がいなくなってしもうた。のう」
ハリーは立ち上がってドアのところへ行った。取っ手に手をかけたとたん、ドアが勢いきおいよく向こう側から開いた。あまりに乱らん暴ぼうに開いたので、ドアが壁かべに当たって跳はね返ってきた。