そうはいっても、以上のレコードと、日本で再プレスしたヴェルディの『レクイエム』のレコードとでは音はずいぶんちがう。後者は、現在の普通のレコードにずっと近く再調整されているのである。このレコードにのっている福原信夫氏の解説には、残されたサバタのレコードの中には、いろいろな歌手の最盛期の録音があり貴重だとあるけれども、私には、歌手が全盛期でいることもさることながら、サバタの記録であるがためにさらに貴重なレコードとなるのであって、このヴェルディの『レクイエム』にしても、この曲のレコードとして最高のそれに列するものだろう。私には、この曲はあまりにも十九世紀趣味にぬりたくられた教会音楽として、終わりまで一度にきき通せた覚えもないくらい苦手なので、それ以上のことはいえないのだが。