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恶灵(12)

时间: 2021-08-19    进入日语论坛
核心提示:第二信 早速返事をくれて有難う。君の提出した疑問には、今日の手紙の適当な箇所でお答えする積(つも)りだ。この手紙は前便とは
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第二信


 早速返事をくれて有難う。君の提出した疑問には、今日の手紙の適当な箇所でお答えする(つも)りだ。この手紙は前便とは少し書き方を変えて、小説家の手法を真似て、ある一夜の出来事を、そのまま君の前に再現して見ようと思う。そういう手法を()る理由は、その夜の登場人物が色々な意味で君に興味があると思うし、そこで取交わされた会話は、殆ど全く姉崎未亡人殺害事件に終始し、随って君に報告すべきあらゆる材料が、それらの会話の内に含まれていたので、その一夜の会合の写実によって、僕の説明的な報告を(はぶ)くことが出来るからだ。それともう一つは、説明的文章では伝えることの出来ない、諸人物の表情や言葉のあやを、そのまま再現して、君の判断の材料に供し度い意味もあるのだ。
 九月二十五日に姉崎曽恵子さんの仮葬儀が行われたが、その翌々日二十七日の夜、黒川博士邸に心霊学会の例会が開かれた。この例会は別に申合せをした訳ではなかったけれど、期せずして姉崎夫人追悼の集まりの様になってしまった。
 僕は幹事という名で色々雑用を(おお)せつかっているものだから、(二十三日に姉崎家を訪ねたのもその役目(がら)であった)定刻の午後六時よりは三十分程早く中野の博士邸を訪れた。君も記憶しているだろう。古風な黒板塀に冠木門(かぶきもん)、玄関まで五六間もある両側の植込み、格子戸(こうしど)、和風の玄関、廊下を通って別棟の洋館、そこに博士の書斎と応接室とがある。僕は女中の案内でその応接室に通った。いつの例会にもここが会員達の待合所に使われていたのだ。
 応接室には黒川博士の姿は見えず、一方の隅のソファに奥さんがたった一人、青い顔をして腰かけていらしった。君は奥さんには会ったことがないだろうが、博士には二度目の奥さんで、十幾つも年下の三十を越したばかりの若い方なのだ。美人という程ではないけれど、痩型の顔に二重瞼の大きい目が目立って、どこか不健康らしく青黒い皮膚がネットリと人を()きつける感じだ。挨拶(あいさつ)をして、「先生は」と尋ねると、夫人は浮かぬ顔で、
「少し怪我(けが)をしましたの、皆さんがお揃いになるまでと云って、あちらで(やす)んでいますのよ」
 と云って、母屋の方を指さされた。
「怪我ですって? どうなすったのです」
 僕は何となく普通の怪我ではない様な予感がして、お世辞でなく聞返した。
昨夜(ゆうべ)遅くお風呂に入っていて、ガラスで足の裏を切りましたの。ほんのちょっとした怪我ですけれど、でも……」
 僕はじっと奥さんの異様に光る大きい目を見つめた。
「あたし何だか気味が悪くって、ほんとうのことを云うと、こんな心霊学の会なんか始めたのがいけないと思いますわ。えたいの知れない魂達が、この家の暗い所にウジャウジャしている様な気がして。あたし、主人に御願いして、もう本当に()して頂こうかと思うんですの」
「今夜はどうしてそんな事おっしゃるのです。何かあったのですか」
「何かって、あたし姉崎さんがおなくなりなすってから、怖くなってしまいましたの。あんまりよく当ったのですもの」

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