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怪指纹:魔术师

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:魔術師 そして、間もなく、復讐鬼のいわゆる第二幕目の幕開きの日がやって来た。四日の夜がすぐ目の前に近づいて来た。 川手氏
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魔術師


 そして、間もなく、復讐鬼のいわゆる第二幕目の幕開きの日がやって来た。四日の夜がすぐ目の前に近づいて来た。
 川手氏の邸宅は、妖雲に包まれたように、不気味な静寂に閉されていた。妙子さんはあれ以来ベッドについたきりで、日夜底知れぬ恐怖に打震えていたし、川手氏も一切の交際を絶って、妙子さんを慰めることと、仏間にこもって、なき雪子さんの冥福(めいふく)を祈ることにかかり果てていた。
 さて、当日の四日には、予め川手氏の依頼もあって、同邸の内外には、十二分の警戒陣が敷かれた。
 先ず警視庁からは六名の私服刑事が派遣され、川手邸の表門と裏門と塀外(へいそと)とを固めることになったし、邸内妙子さんの部屋の(そと)には、宗像博士自ら、小池助手を引きつれて、徹宵見張りを続けることにした。
 妙子さんの部屋は、屋敷の奥まった箇所にあり、二つの窓が庭に面して開いている(ほか)には、たった一つの出入口しかなかった。博士はそのドアの外の廊下に安楽椅子を据えて夜を明かし、小池助手は二つの窓の外の庭に椅子を置いて、この方面からの侵入者を防ぐという手筈であった。
 早い夕食を済ませて、一同部署についたが、川手氏はそれでもまだ安心しきれぬ(てい)で、妙子さんの部屋に入ったり出たりしながら、廊下の宗像博士の前を通りかかる度に、何かと不安らしく話しかけた。
 博士は笑いながら、妙子さんの安全を保証するのであった。
「御主人、決して御心配には及びませんよ。お嬢さんは、()わば二重の鉄の箱に包まれているのも同然ですからね。お邸のまわりには事に慣れた六人の刑事が見張っています。その目をごまかして、ここまで入って来るなんて殆んど不可能なことですよ。()し仮りにあいつが邸内に入り得たとしてもですね、ここに第二の関門があります。たった一つのドアの(そと)には、こうして僕が頑張っていますし、窓の外には、小池君が見張りをしている。しかも窓は全部内側から掛金がかけてあるのです。このドアもそのうち僕が(かぎ)をかけてしまう積りですよ」
(しか)し、若し隠れた通路があるとすれば……」
 川手氏の猜疑(さいぎ)は果てしがないのである。
「イヤ、そんなものはありやしません。さい(ぜん)僕と小池君とで、お嬢さんの部屋を隅から隅まで調べましたが、壁にも天井にも床板にも、少しの異状もなかったのです。ここはあなたのお建てになった家じゃありませんか。抜穴(ぬけあな)なんかあってたまるものですか」
「アア、それも調べて下すったのですか。流石(さすが)に抜目がありませんね。イヤ、あなたのお話を聞いて、いくらか気分が落ちつきましたよ。しかし、わたしは、今夜だけはどうしても娘の(そば)を離れる気になれません。この部屋の長椅子で夜を明かす(つも)りです」
「それはいいお考えです。そうなされば、お嬢さんには三重の守りがつく訳ですからね。あなたがこの部屋の中にいて下されば、僕達も一層心丈夫ですよ」
 そこで川手氏は、そのまま妙子さんの部屋に入って、寝室につづく(ひか)えの()の長椅子に腰をおろし、暫くの間は、ドアを開いたままにして博士と話し合っていたが、この際会話のはずむ筈もなく、やがて、川手氏は長椅子の上に横になったまま黙りこんでしまったので、博士は預って置いた鍵を取出して、ドアに(しま)りをした。
 夜が()けるに従って、邸内は墓場のように静まり返って行った。町の騒音ももう聞えては来なかった。女中達も寝静まった様子である。
 宗像博士は、強い葉巻煙草(たばこ)をふかしながら、安楽椅子に沈み込んで、ギロギロと、鋭い目を光らしていた。庭では小池助手が、これも煙草を吸いつつ、椅子にかけたり、椅子の前を歩哨(ほしょう)のように行きつ戻りつしたり、睡気(ねむけ)を追っぱらうのに一生懸命であった。
 十二時、一時、二時、三時、長い長い夜が更けて、そして、夜が明けて行った。
 午前五時、廊下の窓に清々(すがすが)しい朝の光がさしはじめると、宗像博士は安楽椅子からヌッと立上って、大きな伸びをした。とうとう何事もなかったらしい。流石の復讐鬼も、二重三重の警戒陣に辟易(へきえき)して、第二幕目の開幕を延期したものらしい。
 博士はドアに近づくと、軽くノックしながら川手氏に声をかけた。
「もう夜が明けましたよ。とうとう奴は来なかったじゃありませんか」
 返事がないので、今度は少し強くノックして、川手氏を呼んだ。それでも返事がない。
「おかしいぞ」
 博士は冗談のように呟きながら、手早く鍵を取出し、それでドアを開けて、室内に入って行った。
 すると、アアこれはどうしたというのだ。川手氏は長椅子に横たわったまま、身体中をグルグル巻きにされて、固く長椅子に(しば)りつけられていた。その上、口には厳重な猿轡(さるぐつわ)だ。
 博士はいきなり飛びついて行って、先ず猿轡をはずし、川手氏の身体をゆすぶりながら叫んだ。
「ど、どうしたんです。いつの間に、誰が、こんな目に合せたのです。そして、お嬢さんは?」
 川手氏は絶望の余り、物を云う力もなかった。ただ目で(つぎ)()をさし示すばかりだ。
 博士はその方を振り返った。間のドアが開いたままになっているので、妙子さんのベッドがよく見える。だが、そのベッドの上には、誰も寝てはいないのだ。
 博士は寝室へ駈け込んで行った。余程慌てていたと見え、大きな音を立てて椅子の倒れるのが聞えた。
「お嬢さん、お嬢さん…………」
 だが、いない人が答える筈はない。寝室は全くの空っぽだったのである。
 博士は青ざめた顔で再び控えの間に戻って来た。そして手早く川手氏の(いまし)めを解くと、
「一体これはどうしたというのです」
 と叱責(しっせき)するように訊ねた。
「何が何だか少しも分りません。ウトウトと眠ったかとおもうと、突然息苦しくなったのです。あれが麻酔剤だったのでしょう。口と鼻の上を何かで(おさ)えつけられているなと思ううちに、気が遠くなってしまいました。それからあとは何も知りません。妙子は? 妙子は(さら)われてしまったのですか」
 川手氏は無論それを知っていた。だが、聞かずにはいられないのだ。
「申訳ありません。しかし、僕の持場には少しも異状はなかったのです。あいつは窓から入ったのかも知れません」
 博士は云い捨てて、窓のところへ飛んで行くと、サッとカーテンを開き、掛金をはずして、すりガラスの戸を上に押し上げ、庭を覗いた。
「小池君、小池君」
「ハア、お早うございます」
 何としたことだ。小池助手は別状もなく、そこにいたのである。そして何も知らぬらしく、間の抜けた挨拶をしたのである。
「君は眠りやしなかったか」
「イイエ、一睡も」
「それで、何も見なかったのか」
「何もって、何をですか」
「馬鹿ッ、妙子さんが攫われてしまったんだ」
 博士はとうとう癇癪玉(かんしゃくだま)を破裂させた。
 だが、よく考えて見ると、小池助手に落度のある筈はなかった。彼が犯人を見逃したのではない証拠には、窓は二つとも、ちゃんと内側から掛金がかけられ、少しの異状もなかったからである。
 とすると、あいつは一体全体、どこから入って、どこから出て行ったのであろう。室内に抜け穴なんかないことは十分調べて確めてある。ドアには外から鍵がかかっていた。窓の締りにも別条はない。アア、愈々お化けだ。お化けか幽霊ででもない限り、密閉された部屋に忍び込んだり、抜け出したり出来る筈がないではないか。
 しかし、幽霊が麻酔薬を()がしたり、人を縛ったりするものであろうか。イヤ、それよりも、曲者(くせもの)自身は幽霊のように一分(いちぶ)か二分の隙間から抜け出たとしても、妙子さんをどうして運び出すことが出来たのだ。妙子さんは血の通った人間だ、隙間などから抜け出せるものではない。
 流石の名探偵宗像博士も、これには全く途方に暮れてしまった様子であった。だが、(いたず)らに途方に暮れている場合ではない。あらん限りの智恵を絞って、このお化じみた謎を解かなければならぬ。
 博士はふと思いついたように、慌しく女中を呼んで、玄関と門とを開かせると、気違いのように門の外へ飛び出して行った。云うまでもなく、外部を固めている六人の刑事に、昨夜の様子を訊ねるためだ。
 だが、その結果判明したのは、表門にも裏門にも、その(ほか)邸を取りまく高塀のどの部分にも、全く何の異状もなかったということである。彼等は異口同音に、外からも内からも、門や塀を越えたものは決してなかったと確信に満ちて答えたのであった。

    不久,复仇狂的所谓第二出戏开幕的日子来到了。十四日晚迫在眉睫。
 
    川手的公馆像是被妖云笼罩着似地充满着死一般的沉寂。妙子自那以后一直卧床不起,莫名其妙地吓得日夜发抖,川手也中断了所有交际,一天到晚安慰妙子,躲在佛堂里为去世的雪子祈祷冥福。
 
    当天十四日,由于事前受川手所托,该公馆内外布下了森严的警戒网。
 
    首先将由警视厅派来了六名便衣警察,加强防守康公馆的大门、里门和墙外,在宅内的妙子房间的外面,决定由宗像博士亲自率领小池助手通宵达旦进行看守。
 
    妙子的房间在公馆的尽里头,除了有两扇窗户面向院子开着外,其余只有一处出入口。博士准备在那门外的走廊上放上一张安乐椅熬过一夜,小池助手准备在两扇窗户外的院子里摆上椅子防备有人从那儿入侵。
 
    早早吃罢了晚饭,大家都到岗位上去了,但川手好像还不放心,他在妙子的房间里出出进进的,每次通过走廊上的宗像博士的前面时总要不安地搭几句话。
 
    博士笑着说他保证妙子绝对安全。
 
    “东家,您用不着担心,因为小姐等于被藏在双重铁箱里嘛。公馆的周围由六名熟练的刑警在看守,要瞒过他们的眼睛进到这儿,这几乎是不可能的,即使那家伙进得了宅内,这里也还有第二道关口,仅有的一扇门的外面由我这样坚持着,窗外则由小池君看守着,而且窗户全部从内侧挂上了窗钩,这门我也打算过会儿就锁上它。”
 
    “可是,如果有暗道的话……”
 
    川手的猜疑没有止境。
 
    “不,哪会有呢。刚才我和小池君把小姐的房间彻底查了一遍,墙壁、天棚和地板都没有一点异常。这儿木是您建造的家吗?要是有地道,那还了得!”
 
    “啊,这也善我调查了吗?到底是用心周到呀。啊,听了你的话,心里踏实了些,只是今晚我是怎么也不想离开我女儿身旁了,打算就在这房间的沙发上熬过一夜。”
 
    “这是好主意呀。要是您这么做,小姐就有三重防守学。要是您呆在这房间里,我们心里也就踏实啦。”
 
    于是川手径直走进妙子的房间,在与卧室相连的休息室长沙发上坐了下来,开着门跟博士聊了一会儿;但这种时候当然,不会谈得很起劲,不久就躺在长沙发上不吱声了,所以博士取出了代为保管的钥匙锁上了门。
 
    随着夜深,宅邪内渐渐像坟墓一样寂静起来,街上的噪声也听不到了,女佣人们也都好像入睡了。
 
    宗像博士一面抽着很烈的烟卷儿,一面坐在安乐椅上目光炯炯地朝四下里张望着。院子里,小油助手也一面吸着烟,一面或是坐在椅子上或是在椅子前面像岗哨一样来回走动,拼命地驱赶着睡意。
 
    十二点、一点、二点、三点,漫长的黑夜渐渐结束了。宗像博士从安乐椅上~下子站了起来,使劲地伸个懒腰。好像终于什么事都没有发生,就连复仇狂也似乎被双重、三重的警戒网吓退了,推延了第二幕的开幕时间。
 
    博士一靠近门就~面敲门一面向川手喊道:
 
    “已经天亮啦,那家伙不是终于没有来吗?”
 
    没有回答,所以这回稍使劲地破了一下门,喊了他几下,但还是没有回答。
 
    “奇怪!”
 
    博士一边开玩笑似地陶冶着,~边迅速掏出钥匙开了门,走进室内。
 
    啊,这是怎么啦?川手不是躺在沙发上,全身被一圈圈地缠着紧紧地缚在长沙发上吗?而且嘴被人用东西死死地堵了起来。
 
    博士猛地扑了过去;先去掉堵塞物,随后边晃着川手的身体边喊道:
 
    “怎、怎么啦?是谁在什么时候让你吃这种苦头的?小姐呢?”
 
    川手由于过分绝望,连说话的力气都没有了,只是用目光指着隔壁的套间。
 
    博士回头看了看那方向,中间的门洞开着,妙子的床看得很清楚。可是,床上没有睡着任何人。
 
    博士跑进卧室。好像是相当慌张,听到了椅子大声倒下来的声音。
 
    “小姐,小姐”
 
    可是,人不在怎么会回答呢!卧室空无一人。
 
    博士脸色苍白地又回到休息室,并迅速解开绑着川手的绳子,申斥似地问道:
 
    “究竟是怎么了?”
 
    “我一点也不清楚,刚迷迷糊糊地睡着就突然喘不上气来了。大概那是麻醉剂吧。就在我寻思着自已被什么东西捂着嘴和鼻子的时候神志就不清了。以后我就什么都不知道了。妙手呢?妙子是被拐走了吗?”
 
    川手当然知道这一点,但他禁不住这样问道。
 
    “真对不起,可我的岗位上一切正常呀。那家伙说不定是从窗户里进来的。”
 
    博士说罢就急忙跑到窗户那儿,哗地拉开窗帘,摘下窗钩,把毛玻璃的窗子推上去看了一下庭院。
 
    “小池君,小池君。”
 
    “啊,早上好。”
 
    怎么搞的!小池助手好端端地在那儿,而且好像一无所知。
 
    “你没有睡着觉学?”
 
    “没有,一点也没有睡。”
 
    “那么,什么都没有看到吗?”
 
    “什么?看见什么?”
 
    “混蛋!妙子被人拐走了!”
 
    博士终于气炸了。
 
    可是,仔细想来,小池助手是不会有过失的。不是他放走了犯人,证据是:两扇窗户都好好儿地从内侧挂着钩子,没有一点儿异常。
 
    那么,那家伙到底是从哪儿进来又是从哪儿出去的呢?室内没有地道什么的,这已充分调查清楚,门从外面上着锁,窗子也都关着。啊。越来越像是妖怪啦!只要不是妖怪或是幽灵什么的,哪能在严密关闭的屋子里溜进溜出呢!
 
    但幽灵怎么让人嗅麻醉药,把人缚住呢!不,即使坏人像幽灵一样从一分或二分的缝隙里溜出去,他怎么能把妙子运出去呢?妙子是个有血有肉的人,是不能从缝里钻出去的。
 
    连名侦探宗像博士都好像对此完全走投无路了。但现在不是徒然走投无路的时候。必须绞尽脑汁,解开这个谜。
 
    博士忽然想起来似地匆忙叫女佣人打开大门,随即像是发了疯似地跑到门外。当然是为了向守卫着外部的六名刑警打听昨晚的情况。
 
    结果判明,正门、后门、及公馆围墙的任何地方都正常。他们异口同声充满自信地说:无论是从外面还是从里面,都没有人越过大门和围墙。
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