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怪指纹:妖魔

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:妖魔 その日の午後三時頃、待ち兼ねている宗像博士のところへ、中村警部から電話がかかって来た。「大変おくれまして。例の人物
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妖魔


 その日の午後三時頃、待ち兼ねている宗像博士のところへ、中村警部から電話がかかって来た。
「大変おくれまして。例の人物の住所が判明したのです。若しお差支(さしつかえ)なければ、これからすぐ青山高樹町(たかきちょう)十七番地の北園竜子(きたぞのりゅうこ)という家を訪ねて、お出で下さいませんか。高樹町の電車停留場から一町もない場所ですから、じき分ります。僕も今そこへ来ているのです」
 警部の声は犯人を突き留めたにしては、何となく元気がなかった。
「北園竜子、キタゾノ、リュウコ、アアやっぱり女でしたね。それがあのRK本人ですね」
「そうです。今まで調べた所では、そうとしか考えられません。しかし、残念なことに、その家は、昨日引越しをしてしまって、空家になっているのです。……イヤ、詳しいことはお会いしてからお話しましょう。ではなるべく早くお出でをお待ちします」
 という訳で、博士は直ちに自動車を青山高樹町に飛ばした。運転手に尋ねさせると、北園竜子の住んでいた空家はじき分ったが、それは大邸宅と大邸宅に挟まれた、ごく手狭な建物であった。
「ヤア、お待ちしていました。汚いですが、こちらへお入り下さい。今丁度(ちょうど)昨日まで北園に使われていた婆さんを見つけて、調べを始めようとしている所です」
 空家の中から中村捜査係長が飛び出して来て、博士を屋内に導いた。階下が三間、二階が二間程の、ひどく古めかしい建物である。
 その階下の八畳の座敷に、中村氏の部下の刑事が胡坐(あぐら)をかいていて、その前に六十歳程の小柄な老婆がかしこまっていた。博士が入って行くと、刑事は丁寧に目礼して、有名な民間探偵に敬意を表した。
「この人が北園竜子に使われていたお(さと)さんというのです」
 中村警部が紹介すると、老婆は博士をえらいお役人とでも思ったのか、オドオドしながら行儀のよいお辞儀をした。
 さて、それから宗像博士の面前で、老婆の取調べが始められたが、その結果判明した点を略記すると、老婆は一年程この家に使われていた事、北園竜子は三十九歳だといっていたが、見たところ三十前後と云ってもいい程若々しい美人であったこと、彼女は数年(ぜん)夫に死別し、子供もなく、両親も兄弟もなく、ひどく淋しい身の上であったこと、少しは貯金もあったらしい様子だが、職業としては生華(いけばな)師匠(ししょう)をしていたこと、弟子の娘さん達の外に、友達といっては生華の仲間の婦人数名が出入りするだけで、全く孤独な生活をしていたこと、今度の引越しは郷里の三島(みしま)在へ帰るのだと云っていたが、そこにどんな親戚があるのか、老婆は少しも知らぬこと、引越しを思い立ったのは一週間程前で、それから不要の品を売払ったり、女手ばかりでボツボツ荷造りをしたりして、荷物を送り出したのは、昨日のお昼頃であったこと、運送屋が荷物を運び出してしまうと、老婆は(ひま)を出され、主人を見送るからといっても聞き入れられず、そのまま同じ区内の身寄りの者の所へ立去ったこと(若し北園竜子が犯人とすれば、指を切ったのは、無論その(のち)に違いない)だから、主人の竜子が何時の汽車に乗って、どこへ行ったかは少しも知らぬことなどであった。
「で、あんたの主人には、特別に親しくしている男の友達というようなものはなかったのかね。くだいて云えば、マア情夫といったようなものだね」
 中村警部が訊ねると、老婆は暫くもじもじと躊躇していたが、やがて思い切ったように語り出した。
「それがあったのでございますよ。こんなことをお喋りしてしまっては、御主人様に申訳ございませんが、お(かみ)のお訊ねですから、何もかも申上げてしまいます。
 どこのお方か、何というお名前か、わたしは少しも存じませんが、何でも四十五六のデップリと(ふと)った背の高い男の方でございますよ。その方がいらっしゃる時分には、奥様が必ずわたしを遠方へお使いにお出しになるものですから、妙な話ですが、まるでお顔を見たこともなければ、お声を……アア、そうそう、たった一度、ある晩のことでした。奥様に云いつけられたお使いを、思いの(ほか)早くすませて帰って見ますと、丁度そのお方も格子を開けてお帰りになるところで、出会いがしらに、電燈の光で、たった一度お顔を見たことがございます。それは立派な好男子の方でございましたよ」
「フーム、それで、あんたは、今でもその男に出会えば、これがそうだったと顔を見分けることが出来るかね」
「ハイ、きっと見分けられるでございましょう。たった一度でしたが、奥様があんなに隠していらっしゃる方かと思うと、いくら年寄りでも、やっぱり気を附けて、胸に刻み込んで置くものでございますよ」
 老婆は歯の抜けた口をすぼめて、ホホホと笑うのであった。
「で、その男は泊って行くこともあったのかね」
「イイエ、一度もそんなことはございません。わたしがお使いから戻るまでには、きっとお帰りになりました。ですが、その代り、奥様の方が……」
「エ、奥様の方が、どうしたというの?」
「イイエね、奥様の方がよく(そと)でお泊りになったのでございますよ」
「ホウ、そいつは変っているね。で、どんな口実で留守にしたの?」
「遠方のお友達の所へ遊びにいらっしゃるのだと申してね。一晩も二晩もお留守になることが、ちょくちょくございました。どんなお友達だか知れたものじゃございませんよ」
 それを聞くと、捜査係長と私立探偵とは、思わず目を見合せた。若しその竜子の外泊の日が、これまでの殺人事件の日と一致すれば、愈々(いよいよ)この女を疑わなければならないのだ。
 そこで、中村警部は川手氏の二人の令嬢が殺害されたと覚しき日附、その死体が陳列館やお化け大会へ運ばれた日附、それから川手氏自身が行方不明になった日附などを思い出して、それらの事件の当夜、竜子が外泊したかどうかを確めて見ることにした。
 老婆の記憶を呼び起すのに、ひどく手数と時間がかかったけれど、月々の行事などに結びつけて、結局それらの事件の日と竜子の外泊の日とがピッタリ一致していたことを確め得たのである。
 中村警部はこれに勢いを得て、更に質問をつづけた。
「で、奥さんの様子に、近頃、何か変ったところはなかったかね。どうして突然引越しをする気になったか、どうもそこの所が少しはっきりしないようだが」
「サア、わたしもそれを不思議に思っているのでございますよ。変った様子といえば、引越しの十日余り前から、奥様は何か深い心配事でもおありの様子で、いつもの奥様とはまるで人が変ったように、ソワソワしていらっしゃいました。
 わたしなんかには何もお話しにならないので、事情はちっとも存じませんが、なんでもよっぽどの御心配事のようで、それから間もなく引越しの話が持上ったのでございます」
 老婆との問答の、後々(のちのち)に関係のある重要な点は、以上に尽きていた。
 老婆の取調べが終った頃、引越しの荷物を運んだ運送屋の若い者が、一人の刑事に連れられて入って来た。そこで又問答が行われたのだが、その結果、北園竜子の大小十三箇の引越し荷物は、運賃前払、東海道三島駅前運送店留置(とめおき)という指図で、昨日の夕方貨車に積み込んだことが判明した。
 運送屋が帰るのと入れ違いに、待ち兼ねていた鑑識課の指紋係が、指紋検出の道具を携えて入って来た。窓のガラスだとか、襖の(かまち)や引手だとか、家の中のあらゆる滑かな箇所が、次々と検査されて行った。その結果を簡単に記すと、不思議なことに、屋内の滑かな物の表面は、悉く布様のもので拭き取った形跡があり、指紋らしいものはどこにも発見されなかったが、ただ一つ、流石にここだけは拭き忘れたのか、便所の中の白い陶器の表面に、幾つかの指紋が検出された。そして、その一つに、問題の三重渦状紋がはっきりと残っていたのである。
 刑事達は歓声をあげんばかりであった。愈々三重渦巻の怪犯人は北園竜子と決ったのだ。老婆が云った四十五六の情夫というのが相棒かも知れない。(うわさ)によれば竜子は非常に若々しく見える、風にも堪えぬ風情(ふぜい)の、なよなよとした美人だという。ただ、いくら尋ね廻っても写真が手に入らぬのが残念だが、附近の人々は口を揃えて、その美貌を説き聞かせてくれる。妖魔だ。今の世の妲己のお(ひゃく)は、(たくま)しい情夫と力を合せて、残虐の数々を演じ、忽然として大都会の唯中に消え失せたのだ。
 やがて、中村係長の(めい)を受けて、四方に散っていた刑事達が、次々と帰って来た。附近の住宅や、その近くに住む竜子の生華の弟子を訪ねて、聞込みの報告を持ち寄るもの、夜番(よばん)の爺さんを叩き起し、出入商人の御用聞きを引きつれて来るもの、一々を記していては際限がないが、それらの聞込みや問答からは、読者に伝えて置かなければならぬ程の、重大な事柄は殆んど発見されなかった。
 だが、その中にただ一つ、ここに書き漏らすことの出来ないのは、一人の刑事に連れられて来た食料品店の御用聞きの陳述である。
「そういえば妙なことがあるんですよ。一昨日の夕方、こちらへ御用を聞きに来ますと、奥さん自身で勝手口へ出ていらしって、今夜中に届けてくれって、妙な註文をなすったのです」
「フム、妙な註文とは」
「それがね、実に妙なんです。店で売っている牛肉の罐詰と、福神漬の罐詰の大きい奴を五つずつと、それから、パン屋さんで食パンを十(きん)買って、一緒に届けてくれっておっしゃるのです。
 そんなに沢山どうなさるんですって、聞いたら、奥さんは怖い目で睨みつけて、何でもいいから持ってお出で、その代りにこれを上げるといって、一円下すったのです。それはもう使ってしまいましたがね。そして、お前の店には内しょに出来ないだろうけれど、パン屋さんにも、その外の人にも、あたしがこんな註文をしたことは、決して云うんじゃないよって、口止めされたんです。しかし、警察の旦那には白状しない訳に行きませんや」
「で、君はそれを届けたのか」
「エエ、夜になってからお届けしました。すると、婆やさんはいないと見えて、やっぱり奥さん自身で受取りに出ていらっしゃいました」
 中村警部はそれを聞くと、何だかえたいの知れぬ不気味な謎にぶッつかったような気がした。一体これは何を意味するのだ。その翌日引越しをする矢先になって、十斤のパンと十個の罐詰を註文するなんて、狂気の沙汰ではないか。まさか罐詰やパンを国への土産(みやげ)にする奴もなかろう。それとも彼女は逮捕を恐れる余り、人里離れた山の中へ、たて(こも)る積りででもあったのだろうか。
 美しい殺人鬼とパンと罐詰。この妙な取り合せは何となく滑稽な感じであった。だが、そのおかしさの裏には、ゾッとするような不気味なものが隠れていた。中村警部は、ふとそれに気附くと、心の底からこみ上げて来る、一種異様の戦慄を感じないではいられなかった。
 その日の取調べは、この御用聞きの不思議な陳述を以て一段落を告げた。宗像博士は、終始これという意見を挟むこともなく、中村警部の活動を傍観していた。
 やがて、捜査係長と民間探偵とは、刑事達と別れて、同じ自動車で帰途についた。
「僕が今考えているのは、無論偽名だとは思いますが、兎も角あいつの戸籍簿を調べて見ること、一枚でもあいつの写真を探し出すこと、それから荷物の送り先の三島駅の運送店に張込みをすることなどですが、そういう正攻法では、うまく行きそうもないような気がします。何だか今日の取調べには、不気味な気ちがいめいた匂いがつき纒っていたじゃありませんか」
 中村警部が半ば独言のように呟いた。
「気違いめいているのは最初からですよ。殺人犯人が死体を衆人に見せびらかすなんて、正気の沙汰じゃありません。恐るべき狂人の犯罪です。狂気の分子は到る(ところ)にちらついています。しかし、犯罪にかけては天才のように正確無比な奴です」
 博士は殺人鬼を讃嘆するように溜息をついた。
「今日のパンと罐詰の一件なんか、僕は何だかゾーッとしましたよ。ナンセンスのようでいて、実はその奥にえたいの知れない怪物の着想が隠されているような気がするのです」
「怪物の着想、そうです。僕もそんな風のものを感じます。例えばですね。君は三重渦巻の指紋の持主が女性、しかも美しい女性であったことを、どう考えますか。
 この事件には最初から女性がいたのでしょうか、しかし、我々は眼帯の大男と、黒眼鏡の小男しか見ていないではありませんか。
 僕は今こんなことを考えているのですよ。あの少年のように小柄で、素敏(すばしっ)こい黒眼鏡の男こそ、外ならぬ北園竜子その人ではなかったかとね」
 中村警部はそれを聞くと、ハッとしたように顔を上げて博士を見た。そして、そのまま二人は、お互の目の中を覗き合うようにして、いつまでも黙り込んでいた。

    那天下午三点光景,中村警部给正在等候着的宗像博士挂来了电话。
 
    “回电话晚了,很对不起。那人的住所弄明白了,如果您方便的话,请您现在就去青山高树街十七号叫北园龙子的家好吗?那地方离高树街的电车站不到一百米,所以马上就知道。我现在也在那里。”
 
    从查清了犯人的下落来说,警部的声音总觉得还是没有精神。
 
    “北园龙子,啊,果然是女人!那就是那个R-K本人吧?”
 
    “是的。据我刚才所调查的,只能这样认为。可遗憾的是,她的家昨天搬走了,是所空房子。……啊,详细情况见面后再说吧。那请您尽量早点来,我等着。”
 
    于是博士立即坐车前往青山高树街。让司机一问,立即知道了北园龙子住的空房了。那是一幢夹在大住宅和大住宅中间极其窄小的房屋。
 
    “啊,我一直等着您。请进。刚好找到了被北园雇用到昨天的老太太,正要开始讯问她。”
 
    中村侦查股长从空屋中跑出来,把博士领到了屋内。这房间很古老了,楼下三间,楼上两间。
 
    在那楼下的有八张铺席大小的客厅里盘腿坐着中村部下的一名刑警,在他面前毕恭毕敬地坐着一位六十岁左右身材矮小的老太婆。博士一进去,刑警立即恭恭敬敬点一点头,向这位有名的民间侦探表示了敬意。
 
    “这个人叫阿里,是一直被北园龙子雇佣的保姆。”
 
    中村警部一介绍,大概老太太以为博士是个大官什么的,立即战战兢兢地行了一个规规矩矩的礼。
 
    随后在宗像博士面前开始讯问老太太,现将讯问结果弄清的事情略述如下:老太太被这家雇了一年左右;北园龙子年轻漂亮,自己说是三十九岁,但看上去可以说是只有三十岁左右;她几年前就失去了丈夫,没有孩子,没有父母,也没有兄弟姐妹,身世凄凉;看样子也有一点储蓄,但作为职业她一直当插花师博;除了当她徒弟的姑娘们以外,要说朋友的话就只是几个插花的女友出入家里,完全过着孤独的生活;这次搬家说是回老家三岛,但那儿有什么样的亲戚,老太太一无所知;想起要搬家是在一星期前,那以后又是卖掉不需要的东西,又是自己一个人一点点捆绑行李的,昨天中午才送出行李;运输行一搬走行李老太就被辞退了,老太说想送东家也没有同意,于是径直回到同一区内的亲属那儿去了(假如北园龙子是犯人,那么她切掉手指当然一定在这以后),所以对东家北国龙子乘几点的火车去了什么地方则一无所知。
 
    “那么,你的东家有没有那种对她特别亲热的男朋友呢?说通俗一点,有没有情夫一类的人呢?”
 
    中村警部一问,老太就踌躇了好一阵子,过了一会才下了决心似地说道:
 
    “有的。说这种话对不起东家,但既然官府间我,我就什么都说了吧。是什么地方的人,叫什么名字,这我一点也不知道,好像是个四十五六岁的胖墩墩的高个子。他来的时候,太太总是打发我去很远的地方买东西,所以说起来奇怪,脸也没有看到过,声音也……啊,对了对了,只见过一次。那是有一天晚上的事。回来一看,那位先生也刚打开拉门要回去,迎头碰上时在电灯光下见过一次面。那是一个仪表堂堂的美男子哩。”
 
    “哦。所以你现在要是遇上那男的也能认出他的脸来吧?”
 
    “是的,一定能认出来吧。虽然只一次,但一想到那是太太那样藏起来的人,不管他岁数怎么大,我还是很注意的,把他深深地刻在脑海里呐。”
 
    老太抿起掉了牙齿的嘴呵呵呵地笑道。
 
    “那么,那个男的有时候也过夜吗?”
 
    “不,一次也没有。在我办完事回来之前一定回去。不过太太她……”
 
    “太太她怎么啦?”
 
    “不过太太她倒是常在外面过夜的。”
 
    “噢,这可与众不同!那她是以什么样的借口外出过夜的呢?”
 
    “她常外出,说是去远方的朋友那儿玩,谁知道那是什么样的朋友呢!”
 
    听着这话,侦察股长和私立侦探不由得互相看了一眼。如果这龙子在外过夜的日子与迄今为止的凶杀案的日子一致,那就更要怀疑这个女人了。
 
    于是中村警部想起了好像是川手的两个女儿被杀害的日期,那尸体被运到陈列馆和“妖魔鬼怪大会’的日期以及川手自己失踪的日期,决定查证一下案发的当夜,龙子是否在外面过夜。
 
 
 
 
    为唤起老太的记忆,既费事又费时,与每月的节日等联系起来让她回忆,最后总算弄清发生那些案件的日子与龙子在外过夜的日子完全吻合。
 
    中村警部乘势继续问道:
 
    “那么,太太最近有什么异常的地方吗?她为什么突然要搬家呢?好像这点还有点不太清楚。”
 
    “这个么我也觉得有点奇怪。要说异常的地方,太太倒是从搬家的十多天前起好像有桩大心事似的,像是变了个人,整天心神儿不定。她根本不跟我这种人说话,所以情况我一点也不知道,好像是桩很大的心事,没有多久就发生了搬家这件事。”
 
    向老太调查完的时候,一名刑警带了运送搬家行李的运输行的一个小伙子,于是又进行了查问,结果弄明北园龙子的大小十三件搬家行李运费是预付的,按她留在东海道三岛站前运输行这一要求,于昨天傍晚装上了货车。
 
 
 
 
    运输行的人刚走,一直等待着的鉴别课负责鉴别指纹的人带着取指纹的工具走了进来。窗户的玻璃、隔扇的框框和拉手等家中所有平滑的地方都逐一作了检查,结果奇怪的是,屋内平滑物体的表面都有用布样的东西擦拭的痕迹,哪儿都没有发现指纹,只是在厕所里白陶器的表面取到了几个指纹,大概只是这儿忘擦了吧。
 
    其中一个上面清楚地留着三重涡状纹。
 
    刑警们快要欢呼起来了。那三重旋涡的怪犯人一定是北园龙子。老太所说的四十岁左右的情夫也许是同案犯。据说龙子是个看上去非常年轻的袅娜轻盈的美女,可遗憾的是,无论怎么到处寻问都没有得到照片,但附近的人都异口同声地说她是个罕见的美人。是个妖魔!今世的姐己与她身材魁梧的情夫同心合力,竭尽残暴之能事,忽然又消失在大都市之中。
 
    不久,接受中村股长命令分散在四面八方的刑警们都陆陆续续回来了,他们之中有走访附近的住宅和住在附近的龙子的插花徒弟,带回查访报告的;有敲门叫起值夜班的老头,领来常来往的推销员……要写下来的话就没个完了,但从这些查访和讯问中几乎没有发现值得事前告诉读者的重要情况。
 
    但其中只有一件不能在这儿漏写的,是被一个刑警领来的食品店推销员的如下陈述:
 
    “这么说,倒是有一件奇怪的事呀。前天傍晚我来这儿推销时,太太她亲自跑到厨房门口,订了一次奇怪的货,让我当晚给她送去。”
 
    “哦。这奇怪的货是……”
 
    “那呀实在是奇怪。她叫我买店里出售的牛肉罐头和福神酱菜罐头各五听,再在面包店买十斤面包一并替她送去。我问,买这么多干什么,太太立即狠狠地瞪了我一眼说:‘不管怎样你拿来就是了,我赏你这个。’说着给了我一元钱,不过我已经花掉了。她还不许我向外面说这件事,说:‘大概不能背着你店里的人,但对卖面包的和其他人都决不要说我订了这种货呀!对警察先生我就不能不坦白了。”
 
    “那么,你把那东西送去了吗?”
 
    “送了,到了晚上后替她送了。保姆好像不在,也是太太亲自出来取的。”
 
    一听这话,中村警部就觉得遇上了一个莫名其妙的使人感到可怕的迷。究竟这意味着什么呢?正要在第二天搬家的时候订十斤面包和十听罐头,这不疯了吗?哪会有把罐头和面包带回老家去作为礼物的家伙呢!还是她由于过分害怕逮捕,打算盘据在远离人烟的山中呢?
 
    美丽的杀人狂和面包、罐头,这奇妙的组合总使人觉得滑稽。但在这可笑的背后隐藏着一种令人毛骨悚然的东西。中村警部突然觉察到这一点,不由得不寒而栗。
 
 
 
 
    当天的调查以这一推销员的奇怪陈述告一段落。宗像博士自始至终没有谈什么意见,一直从旁边观察着中村警部的活动。
 
    不久,侦察股长和民间侦探与刑警们分手,乘同一辆汽车踏上了归途。
 
    “我现在在考虑这样一些事:我想当然是假名,但总之要调查一下那家伙的户口本;找出那家伙的照片,哪怕一张也好;另外再布置一些人埋伏在行李的运送目的地三岛车站的运输行。但我觉得靠这种从正面进攻的方法似乎不会顺利,今天的调查中总觉得犯人是一个令人可怕的疯疯癫癫的人,不是吗?”
 
    中村警部一半是自言自语地嘴咕道。
 
    “你说疯疯癫癫,那是打一开始就那样的。杀人犯拿尸体示众,那简直不是精神正常的人干的!这是可怕的狂人犯罪!疯狂的家伙时隐时现地出现在各种地方,但在犯罪方面,那是个如天才一般高超无比的家伙。”
 
    博士仿佛是赞叹杀人狂似地叹了一口气。
 
    “今天的面包和罐头这件事,我听了以后不知为什么全身直打战。听起来好像荒唐无稽,但我觉得其中隐藏着怪物离奇的主意。”
 
    “怪物的主意,对,我也感到有那东西。比如说,你对有三重旋涡指纹的人是个女人,而且是个美女这一点是怎么考虑的?这案件里打一开始就有女人吗?我01不是只看到戴眼罩的大个子和戴墨镜的小个子吗?我在这样想:那个像少年一样身材矮小,头脑机灵的戴墨镜的男人会不会就是这个北园龙子呢?”
 
    中村警部一听这话,吃惊似地拾起头来看了博士一眼,随后两人就互相注视着对方的眼睛似地缄默不语了。
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