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怪指纹:蠕动在黑暗中的怪影

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:暗闇に蠢くもの 翌日の各新聞には、この意外な犯人発覚の径路が、夜更けの隅田川、ボート遊びの男から説き起して、事細(ことこ
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暗闇に蠢くもの


 翌日の各新聞には、この意外な犯人発覚の径路が、夜更けの隅田川、ボート遊びの男から説き起して、事細(ことこま)かに報道され、全読者に思いもかけぬ激情を味わせた。血染めのハンカチ、切断された生指、美貌の生華師匠、その不思議な失踪、分けても十箇の罐詰と十斤の食パンの謎は、二人以上の人の集るところ、必ず好奇の話題となって、さも気味悪げに囁き交されるのであった。
 北園竜子の写真を手に入れる事、彼女の戸籍簿を調べる事、三島駅前の運送店に張り込みをする事という、中村捜査係長の三つの捜査方針は、戸籍簿を除いては全く失敗に終った。
 刑事を八方に走らせ、竜子の知人という知人を訪ねて、写真を探し求めたけれど、流石に殺人鬼は用心深く、どの知人の手元にも一葉の古写真さえ保存されていなかった。
 また三島駅前の張り込みは、少しの抜かりもなく行われたが、運賃前払いの十数箇の荷物は、運送店の倉庫に積み上げられたまま、受取人の姿はいつまでたっても現われず、三島駅にそれらしい人物の下車した様子もなかった。
 ただ一つ、戸籍簿だけは満足な結果が得られた。犯人は意外にも偽名もせず、寄留届もちゃんとしていたので、戸籍は何の苦もなく判明したが、それによると、北園竜子は原籍静岡県三島町の北園弓子(ゆみこ)というものの私生児で、母は竜子の十三歳の時病死しており、竜子には兄弟もなく、近い身寄りは悉く死亡しているという孤独な身の上であることが分ったが、それ以上戸籍簿からは何の()るところもなかった。原籍の番地を調べても、北園の家は遠い昔に跡方もなくなって、母の弓子を記憶している人さえない有様であった。
 そして、竜子失踪の翌々日の夜となった。宗像博士の事務所へは、中村警部から、その都度(つど)電話の報告があったので、博士は捜査の行き悩んでいることを知り、博士自身、警察とは別に、どんな捜査方針を採るべきかを苦慮していた。
 いつもなれば、午後五時には事務所を閉めて帰宅する博士が、その夜は八時になっても、例の実験室にとじこもって、しきりと考えごとをしている。その様子を、次の間から新しく傭い入れられた助手の(はやし)という青年が、心配そうに窺っていた。
 林は去年ある私立大学の法科を出たばかりの、まだ二十五歳の青年であったが、探偵小説を愛読した余り、未来のシャーロックホームズを夢見ている男で、小池、木島の二人の先任助手が、殺人鬼の毒手に(たお)れたことも承知の上、志願して博士の助手となったのである。
 謂わば、この事件を目当てに(やと)われたようなものであったから、三重渦巻の指紋の主が、意外にも美しい女性と分り、その女性が不思議な失踪をしたことを知ると、林はもう夢中であった。飛んでもない見当はずれの想像説を組み立てては、博士に笑われて、頭を掻きながら引下る事も度々であった。
 彼は、宗像博士を現代随一の名探偵として畏敬(いけい)していた。実験室にとじこもっている博士の頭の中に、どんなすばらしい論理が組立てられているのかと、咳払いの聞える度に、影法師の動く度に、ただその事ばかり考えていた。
「林君、ちょっとここへ来てくれ給え」
 突然ガラス戸の向うから博士の声が洩れて来た。林は待ち兼ねていたように「ハア」と答えて、勢いよく実験室へ飛び込んで行ったが、見れば、博士の顔に明るい微笑が漂っている。さては、何か妙案が浮かんだのに違いないと、林も思わずニコニコと笑った。
「林君、君は幽霊とかお化けとかいうものを怖がる(たち)かね」
 博士の藪から棒の質問に先ず面喰った。
「それはどういう意味でしょうか。まさか、先生が幽霊なんかを信じていらっしゃる訳ではないでしょうが……」
「ハハハ……、幽霊そのものは存在しないにしても、幽霊を怖がる恐怖心だけは、不思議と誰にもあるものだよ。君はそういう恐怖心が強いかどうかと訊ねるのさ」
「アア、そうですか。それなら、僕は怖がらない方です。真夜中に墓地を歩き廻ったりするのは大好きな方です」
「ホウ、そいつは頼もしいね。それじゃ、これから一つ僕と一緒に、夜の冒険に出かけるのだ。うまく行けば、すばらしい手柄が立てられるぜ」
「夜の冒険といって、一体どこへ行くのでしょうか」
「北園竜子の住んでいた空家へ、これから二人で忍び込むのだ。そして、空家の中で夜明かしをするのだ」
「では、あの空家に何か怪しいことでもあるとおっしゃるのですか」
「怪しいことがあるかも知れない。ないかも知れない。それを二人で試して見るのだ」
 林助手には博士が何を考えているのか、まだよく分らなかった。しかし、無論北園竜子捜査に関する、何かの手掛りを得るためには違いない。
「まさか、あの空家に幽霊が出るという訳ではありますまいね」
 林が冗談らしく笑うと、博士は案外真面目な顔で、
「ウン、幽霊が出てくれるといいんだがね。わしは、それを念じているくらいなんだよ」
 と訳の分らぬ事を云った。
 林助手は就職()もなかったけれど、博士の奇矯(ききょう)な言動には、もう慣れっこになっていた。一日中実験室にとじこもって一言も口を利かないで、哲学者みたいに瞑想(めいそう)に耽っているかと思うと、突然車にも乗らないで、異様なモーニングの裾を(ひるが)えしながら、鉄砲玉のようにどこかへ飛び出して行く。そして、そのまま二日も三日も帰らないことさえ珍らしくはなかった。名人肌ともいうべき奇行家なのだ。
 その調子を呑み込んでいるので、突如として「化物退治」のお供を命じられても、今更驚くことではない。イヤ、そういう突飛な企ての裏に、博士のどんな深い智慧が隠されているのかと思うと、未来のシャーロックホームズは、嬉しさに身内がゾクゾクするのであった。
 それから、二人が葡萄酒とサンドイッチを詰めた小鞄(こかばん)をさげて、自動車に乗り込み、青山高樹町の問題の空家の一町ほど手前で下車したのは、もう九時半頃であった。
 前にも記した通り、その辺は物淋しい屋敷町なので、さして夜も更けていないのに、殆んど人通りもなく、まばらな街燈の光も薄暗く、商店街に比べてはまるで別世界のように、ひっそりと静まり返っていた。
「僕らは無断であの空家へ忍び込むのだからね。そのつもりで、通行人などに怪しまれないように」
 博士は小声に注意を与えながら、足音も盗むようにして、空家の裏側の路地へ忍び込んで行く。細い路地には電燈もなく、全くの暗闇である。その闇の中を、手探りで、二人の洋服男が影のように忍んで行く有様は、若し第三者が見たならば、探偵どころか、恐るべき夜盗の類と早合点したことであろう。
 空家の勝手口に辿りつくと、先に立った博士は、ポケットから鍵束のようなものを取出して、それをあれこれと戸の錠前に当てがっていたが、忽ち易々と錠をはずし、ソッと板戸を押し開いて、真暗な土間へ入って行った。
 いよいよ夜盗である。博士は錠前破り専門の盗賊も及ばぬ巧みさで、空家の戸締りを開いたのだ。
「林君、ここで靴を脱ぐんだ。声を立ててはいけないよ。わしがいいというまでは、無言の(ぎょう)だ。いいかね、忘れても音を立てたり、声を出したりするんじゃないよ」
 博士は暗闇の土間に立って、林助手の耳に口を寄せ、やっと聞える程の囁き声で命じた。
 靴を脱いで、板の間に上り、手探りで、博士のあとについて行くと、博士は中の間と覚しき部屋で立止り、林助手の肩を押えて坐れという合図をして、自分も、その暗闇の中に胡坐をかいた。
 声を出すなと云われているので、これからどうするのかと質問する訳にも行かず、林は博士の隣に坐ったまま、息を殺すようにして、真暗なあたりを見廻すばかりであった。
 電車通りからは遠く、自動車も滅多に通らぬ横町なので、滅入(めい)るように静かだ。その上にこの暗闇、山奥の一軒家にでもいるような心細さである。
 やがて、暗闇に目が慣れるにつれて、あたりの様子が、ほのかに見分けられるようになって来た。階下は三間(みま)ほどの狭い借家、それが荷物を運び出したまま、どの部屋も開けっぱなしになっているので、階下全体が一つの大きな暗室のような感じである。初めは白い襖がポーッと浮かび出し、それから障子、黄色い壁、床の間と段々物の形が見え始め、やがて、障子の(さん)が算えられる程にはっきりして来た。
 そうして、十分、二十分と無言の行をつづけているうちに、林助手は喋るなと云われていても、何だか口がムズムズして、もう我慢が出来なくなった。彼は博士の耳の側へ口を持って行って、まるで()の鳴くような低い声で、ソッと囁いた。
「先生、僕らは一体何を待っているのですか。こんな空家の中で、こうしていたって、別に何事も起りそうもないじゃありませんか」
 すると、博士は(かすか)に舌打ちをして、林の耳に口を寄せ、押し殺した声で囁き返した。
「幽霊が出るのを待っているんだよ。喋っちゃいけない。少しでも物音を立てたら、出なくなってしまうんだからね」
 そう云って、叱りつけるように、肩の所をグッと押えられたので、林はもう囁き声で質問する事も出来なくなった。
 変だな、先生気でも違ったのじゃないかしら、この家で人殺しがあった訳じゃなし、お化けや幽霊の出る因縁がないじゃないか。
 だが、先生程の人が、こんなに真剣になっているんだから、ひょっとしたら本当に幽霊が出るのかな。一体その幽霊というのは、何者であろう。待てよ、幽霊といったって、無論昔の怪談にあるような奴が現われる筈はない。先生がそんなものを信じているとは考えられない。すると……アア、そうだ。若しかしたら……。
 林助手は、何だか博士の待っているものの正体が、おぼろげに分って来たような気がした。そして、その想像が、彼をゾーッとさせた。若しそんなことがあり得るとしたら、そいつは幽霊なんかより、幾層倍も気味悪く、恐ろしい代物に違いなかった。博士がお化けとか幽霊とか形容したのも(もっと)もである。
 彼は何だか背筋がゾクゾク寒くなって来た。じっと目を凝らしていると、ポーッと白い襖の蔭から、黒い朦朧としたものが、ヒョイとこちらを覗いては引込んで行くような気がした。
 何かソッと腕に(さわ)るものがあるので、びっくりして振り向くと、博士がサンドイッチを摘んで彼に渡そうとしているのだ。どうやら博士自身もそれを頬張って、ムシャムシャやっている様子だ。
 無言でそのサンドイッチを受取って、口に入れたことは入れたが、博士の所謂(いわゆる)幽霊が気になって、今にもそいつが、向うの真暗闇から、バアッと飛び出して来るのではないかと思うと、食慾どころではなかった。
 あとになって考えて見ると、そうして坐っていたのは一時間余りに過ぎなかったのだが、その一時間の長かったこと。林助手にはそれがたっぷり十時間にも感じられたのであった。
 じっと我慢をして坐りつづけている彼の網膜には、あらゆる奇怪なるものの姿が、走馬燈のように去来し、耳には、彼自身の動悸の音が、種々様々の意味を持って、悪魔の言葉を囁きつづけた。
 目を閉じれば瞼の裏の眼花となり、目を開けば暗闇の部屋に蠢く怪しい影となって、幻想の魑魅魍魎が目まぐるしく跳梁(ちょうりょう)するのだ。
 無言の行が永引くにつれて、彼の全身には、ジットリと脂汗が浮かび、息遣いさえ異様にはずんで来るのを、どうすることもできなかった。
 ふと気がつくと、頭の上に、人でも歩いているような気配が感じられた。二階の闇の中を、誰か歩いているのかしら。ハッとして、耳をすましたが、その物音は二三度ミシミシと幽に鳴ったばかりでやんでしまった。
 気のせいかしら、今のは耳鳴りの音だったのかしらと怪しんでいると、今度は、すぐ次の間の梯子(はしご)段がミシミシと鳴りはじめた。
 足音を忍ばせて、何者かが階下(した)へ降りて来る様子だ。
 すると、闇の中から、誰かの手がニューッと伸びて、林助手の肩先をグッと押えつけた。宗像博士の手だ。博士が身動きしてはいけないと、無言の指図をしたのだ。そんな指図を受けなくても、林助手はもう金縛りにでもあったように身がすくんで、足音の主に立向って行くような勇気は少しもなかった。
 まさかお化けや幽霊ではあるまい。幽霊が足音を立てる筈はない。では一体何者であろう。林助手にはそれがおぼろげに分っていた。分っているからこそ、一入(ひとしお)恐ろしいのだ。
 やっと階段の(きし)みがやむと、次の間の闇の中に、朦朧として黒い人影が浮び出した。やっぱり人間だ。
 息を殺して見ていると、そのものは、二人がそこに坐っているとも知らず、スーッと中の間を通り抜けて、奥座敷の縁側の方へ消えて行った。そして、ギイーと開き戸の軋む音。
 あんな音のする開き戸がほかにある筈はない。縁側の隅の手洗い場だ。オヤ、すると、あの怪しい人影は、手洗い場へ入る為めに、二階から降りて来たのであろうか。
「先生、あれは何者です」
 博士の耳に囁くと、博士も囁き返す。
「分らないかね」
「何だか、分っているような気がします。でも、今の奴は黒い洋服を着ているように見えましたぜ。男のようでしたぜ」
「それでいいのだよ。あれがあいつのもう一つの姿なのだ」
「捉えるのですか」
「イヤ、もう少し様子を見よう。相手をびっくりさせてはいけない。もう袋の鼠も同じことだからね」
 そして、二人はまた押黙ってしまったが、すると、再び開き戸の軋む音がして、黒い影が戻って来た。
 暗闇とは云え、相手も闇に慣れている筈だ。見つけられてはいけないと、二人は中の間の隅に身を縮めて、息を殺した。
 黒い影は、足音も立てず、スーッと中の間へ入って来たが、ふと何かの気配を感じたように、そこに立止ってしまった。どうやら、闇をすかして、こちらを見つめているらしい様子だ。匂いを気附いたのかしら。それとも幽な呼吸の音が相手の耳に入ったのかしら。
 闇の中の、息もつまるような、脂汗のにじみ出すような、恐ろしい睨み合いであった。そして、黒い影の口から「アッ」という幽な叫び声が洩れたかと思うと、怪物は風のように次の間へ逃げ込み、大きな音を立てて階段を駈け上って行った。
「見附けられたね。だが、大丈夫だ。逃げ路はないのだ。サア来たまえ」
 博士はそう云って、鞄の中から二箇の懐中電燈を取り出すと、一つを林助手に手渡し、パッとそれを点じて、先に立った。
 階段を上って見ると、二階は、僅か二間しかない上に、家具も何もないガランとした部屋なので、一目で見渡すことが出来る。
「オヤ、変ですね。誰もいないじゃありませんか」
 博士の振り照らす懐中電燈の光が、二つの部屋をグルッと一巡したのに、その光の中へは何者の姿も現われなかった。
 調べて見ると、両側の窓の雨戸は閉まったまま、中からちゃんと(くるる)がかかっている。二つの押入れも開いて見たが、中は何もないがらんどうだ。
(ほか)に隠れる場所もないし、どこへ消えてしまったのでしょう」
 林助手はけげんらしく呟いたが、呟いているうちにゾーッと背筋が寒くなって来た。やっぱり幽霊だったのかしら。それともあいつは、幽霊よりも不気味な魔法使なのかしら。
「シッ、静かにしたまえ。あいつが聞いているじゃないか」
 博士の囁き声を聞くと、「ソレ、そこに!」と云われでもしたように、又ドキンとした。
「どこに隠れているのでしょう」
 怖々(こわごわ)訊ねると、博士は闇の中でニヤニヤと笑っているらしく、懐中電燈の光で、ソッと天井を指し示した。
「エッ、では、この上に?」
 囁き声で聞き返す。
「そうだよ。外に逃げ場所はないじゃないか」
 博士は囁いておいて、一方の押入れを覗き込み、懐中電燈でその天井板を調べていたが、オズオズと近よる林助手の腕を掴んで、耳に口をつけ、
「ここだよ。この天井板がはずれるようになっているのだ。……君、勇気があるかね」
 と、からかい気味に訊ねた。
 林助手は、勇気がないとは答え兼ねた。相手はお化でも幽霊でもない、生きた人間、しかも一人ぼっちで逃げ隠れている奴だ。それを怖がって尻ごみするようでは、探偵助手の恥辱である。
「僕この上へ(あが)って、確かめて見ましょう。先生はここにいて下さい。若し相手が手強(てごわ)いようでしたら、声をかけますから、加勢に来て下さい」
「じゃ、捉えなくてもいいから、ただあいつがいるかいないかだけを確かめてくれ給え。あとは警察の方に任せてしまえばいいのだから」
 ヒソヒソと囁き交して、林助手は上衣を脱ぎ、なるべく物音を立てないように注意しながら、押入れの中段によじのぼり、天井板をソッと横にずらせて、(ほこり)っぽい屋根裏へ這い上って行った。
 彼は嘗て、猟奇の心から、電燈工夫のあとについて、自宅の天井へ上って見た事があるので、屋根裏というものがどんな構造になっているかを、大体知っていた。天井のどの辺を足場にして這えばいいかというような事も心得ていた。
 態と懐中電燈は消したまま、蜘蛛(くも)の巣と埃の中を、四ん這いになって、ジリジリと進んで行った。
 博士に軽蔑されまいと、痩我慢を出しては見たものの、そうして何の隔てるものもなく、真の闇の中で、えたいの知れぬ怪物に相対しているかと思うと、不気味さは一入であった。
 広くもない屋根裏のこととて、脅えながらも、ジリジリと進んで行くうちに、もうその中央の辺に達していた。
 息を殺し、耳をすまして、じっとしていると、どこからか「ハッハッ」と小刻みの呼吸(いき)の音が聞えて来る。
「オヤ、それじゃ、相手も怖がっているのだな。あの烈しい息遣いはどうだ」
 それと悟ると、林助手は俄かに勇気が出て来た。
「よしッ、思い切って、懐中電燈で照らしてやれ」
 彼はいきなりそれを点じて、人の気配のする方角を、パッと照らして見た。
 すると、その丸い光の中に、案の定、一人の異様な人物が蹲まっていた。
 古ぼけた黒の背広服の襟を立て、黒のソフト帽の(つば)をグッとさげて冠っている。そのソフト帽の下から、大きな眼鏡がギラギラと光って見える。ひどく小柄な弱そうな奴だ。その姿を見て、林はまた一段と勇気をました。
 パッとさし向けられたまぶしい光に、その人物は思わず顔を上げて、こちらを見たが、それはまるで追いつめられた小兎のようにオドオドした、見るも哀れな表情であった。
 細面(ほそおもて)の女のように優しい顔が、恐怖に青ざめ歪んで、目には涙さえ光っている。「どうか見逃して下さい。お願いです、お願いです」と手を合せて拝まんばかりの様子である。
「ナアンダ、こんな弱々しい奴だったのか。よしッ、それじゃ一つ引っとらえて、手柄を立ててやろう」
 林はますます大胆になって、無言のまま、ノソノソとその方へ這い寄って行った。だが、相手は猫の前の鼠のように、もう身動きさえ出来ないらしく、ただ泣き出しそうな顔で、じっとこちらを見つめているばかりだ。
 やがて、二人の顔と顔とが、一尺程の間近に接近した。相手の心臓の鼓動が聞えるかと思われるほどであった。それでも、相手はまだじっとしていた。
 林はなぜか妙な躊躇を感じた。相手が可哀想になって来た。そのやつれ果てた、哀願しているような表情は、一生忘れられないだろうと思った。
 しかし、躊躇している場合ではない。屋根裏に逃げ隠れているような奴を憐れむことはないのだ。彼は思い切って、サッと腕を伸ばすと、相手の手首を掴んだ。想像していた通り、非常にしなやかな細い手首であった。
 すると、相手の目がキラッと光った。「これ程頼んでも許してくれないのか」と叫んでいるように感じられた。そして、その態度が突然一変した。こんな弱々しい奴に、どうしてこれ程の力があるのかと、びっくりするような烈しい勢いで、掴まれている手首を振り放した。
 アッと思う間に、相手は本当に小兎のような素早さで、向うの闇の中に飛び退(すさ)っていた。
 ウヌ、逃がすものか。林はもう懐中電燈で照らしている余裕もなく、その方へ飛びかかって行った。天井板が今にも破れそうに、メリメリと鳴った。
 だが、飛びかかって行った場所には、どうしたのか相手の身体がなかった。身体はなかったけれど、頭の上の屋根の方から、二本の足がブラブラと下っているような気がした。
 オヤッ、変だなと思ったけれど、ゆっくり考えている暇はない。無我夢中で、その二本の足のようなものにしがみついて行った。
 すると、その足が、スーッと屋根の方へ引込んで行くような感じがしたが、次の瞬間には、それが恐ろしい勢で、グーンと下へ伸びて来た。
 アッと思う間に、林助手は天井板をメリメリ云わせて、そこに転がっていた。
 何が何だか分らなかった。懐中電燈は点火したまま転がっていたけれど、その異変の起った場所には直接の光が射さぬので、はっきり見定めることが出来ないのだ。
 だが、忽ち事の次第が分って来た。ほのかな反射光の中に、屋根の裏側の薄い板張が見えている。その板張の一部分に、ポッカリと二尺四方程の穴があいているのだ。穴の上には何の目を(さえぎ)るものもなく、遥かの彼方に、キラキラと星が光っている。
 アア、何ということだ。こんなところに屋上への抜け穴が用意してあったのだ。
 ガタガタと瓦を踏む音が聞える。怪物は林を蹴飛ばして置いて、屋根の上へ逃げ出したのだ。

    第二天,各报纸从深夜在隅田川划船游玩的男人说起,详细地报导了这一意外的发现犯人的途径,使所有读者领略了一种意想不到的激情。人们惶恐地互相窃窃私语,只要两人以上聚集的地方,沾满鲜血的手绢儿、被切下不久的手指、美貌无比的插花师傅及其奇怪的失踪、特别是十听罐头和十斤面包之谜一定会成为他们好奇的话题。
 
    中村侦查股长关于弄到北园龙子的照片、调查她的户口以及部署人员埋伏在三岛车站前运输行的三条搜查方针,除了户口本外完全以失败告终了。
 
    虽然让刑警们跑到四面八方走访龙子的所有熟人,请他们寻找龙子的照片,但到底是杀人狂,她小心谨慎,哪个熟人手头连一张旧照片都没有保存着。
 
    另外,三岛车站前万无一失地进行了埋伏,但预付运费的十几件行李依然堆放在运输行的仓库里,收货人始终没有露面,也毫无迹象表明有龙子模样的人物在三岛车站下了车。
 
 
 
 
    只是户口本得到了满意的结果。犯人出人意料地没有使用假名,寄居报告书也完备,所以户籍不费吹灰之力就弄明白了。根据户口本上的登记,北园龙子身世孤独,原籍为静冈县三岛镇,是个名叫北园弓子的私生子,母亲在龙子十三岁时病死了,龙子没有兄弟姐妹,近处的亲属都已去世。此外就没有从户口簿上得到什么线索了,即使调查了原籍的门牌,北园的家也早就无影无踪,无人记得她母亲弓子。
 
    到了龙子失踪的第王天晚上,中村警部给宗像博士的事务所挂来了电话,通报了搜查情况,博士因而得知搜查停止不前,他自己也在苦思冥想应该采取别的什么搜查方针。
 
    平时下午五点关闭事务所后回家的博士,这一夜到了晚上八点还闷在那实验室里,一个劲儿地思索着事情。新雇来的助手、一名胜林的青年从隔壁房子里十分不安地偷看着这一情况。
 
    林助手是刚从某私立大学法律系毕业的年方二十五岁的青年,他由于过于爱读侦探小说而梦想当一名未来的福尔摩斯,明明知道小池、木岛两位前任助手惨遭杀人狂杀害,仍志愿当了博士的助手。
 
    说起来好像是被雇佣来解决这一案件的,所以当他明白三重旋涡指纹的人出乎意料地是个美女,又知道这女子奇怪地失踪时,就简直着了迷,常常出乎意料构思出一些错误的假设,被博士付之一笑后挠头而去。
 
 
 
 
    他敬仰宗像博士,把他视为当代首屈一指的名侦探,每当听到咳嗽声,每当看到人影在动,他就只是在考虑:闭在实验室里的博士的头脑里又构思出了什么绝妙的理论呢?
 
    “林君,到这儿来一下!”
 
    突然从玻璃窗的那一侧传来了博士的声音,林助手像是等候着似的“唉”地应了一声,猛地跑进了实验室,只见傅士脸上露着爽朗的微笑,林助手也情不自禁地微笑起来,心想:这么说来,那难是有了什么妙计。
 
    “林君,你害怕妖怪这类东西吗?”
 
    被博士没头没脑地这么一问,林助手不觉慌了神:
 
    “什么意思?决不会是先生相信什么鬼吧……”
 
    “哈哈哈哈哈,即便鬼本身不存在,奇怪的是谁都有怕鬼的恐惧心理。我是问你这种恐惧心强不强。”
 
    “啊,是这样。那我属于不怕的。我最喜欢深更半夜在坟地里走来走去。”
 
    “懊,这就靠得住哮!那现在你就跟我一起出去作一次晚上的冒险。顺利的话,可以立一个了不起的功劳哩!”
 
    “晚上的冒险?去什么地方?”
 
    “现在我们两个人悄悄溜进北园龙子以前住的空房去,并且就在那所空房里熬一宿。”
 
    “那么,您是说那空房子里有什么怪事吗?”
 
    “也许有怪事,也许没有。我们两个人去试试看吧。”
 
    林助手还是不明白博士在想什么,但当然是为了得到关于搜查北园龙子的什么线索。
 
    “难道那空房里会出现鬼魂吗?”
 
    林助手开玩笑似地笑道,博士却出乎意外地神情严肃,莫名其妙地说:
 
    “哦,要是出现鬼魂就好了!但愿如此呀。”
 
    林助手虽就职不久,但对博士奇特的言行早就习以为常了。忽然整天闷在实验室里一言不发,像个哲人似地耽于冥想,忽然又连车子都不乘,飘扬着他那奇异的礼服的下摆,如子弹一般跑到什么地方去,甚至就这样两三天不回也已经不稀奇了。真是一个行为奇特的人,可以说这是一种名侦探的气质吧。
 
    因为摸着他的这种脾气,所以即使突如其来命令自己陷他去“除妖”也没有什么可吃惊的。不,一想到这种离奇计划的背后不知藏着博士的什么深造的智慧,这位未来的福尔摩斯就高兴得激动起来。
 
 
 
 
    随后两个人提着装有葡萄酒和三明治的小皮包乘上了汽车,在青山高树街的那所空房前一百来米的地方下车时,已经是九点半左右了。
 
    如前所述,这一带是寂静的住宅街,所以还没有到夜深人静,就几乎没有行人,稀稀落落的路灯灯光暗淡,与商店街相比,这儿静悄悄的,简直像另一个世界似的。
 
    “我们是擅自溜进那空房子的,所以千万不要被行人等怀疑。”
 
    博士一面小声提醒着,一面蹑手蹑脚地溜进空房后面的露天地。这块狭长的露天地下没有电灯,一片漆黑。两个身穿西服的男子像影子似的摸黑儿悄悄前进的那副样子,如果第三者看到,哪里会想到是侦探,大概会认为是可怕的夜贼之流吧。
 
    一摸到空房的厨房四,在前面带路的博士立即从口袋里掏出钥匙串,一把一把地对着门上的销,立即轻而易举地开了锁,两人轻轻推开板门,走进了漆黑的房间。
 
    真的是夜贼。博士以专门撬锁的窃贼都望尘莫及的巧妙手段打开了空房的门户。
 
    “林君,在这儿脱鞋,可别出声呀!在我说可以吱声以前千万不要说话,行吗?”
 
    博士站在漆黑的房间里,把嘴凑到林助手的耳边用勉强听得到的轻语命令道。
 
    林助手脱了鞋走进了地板房间,当他摸黑跟着博士走去时,博士突然在好像是中央房间的屋子里站住了,他按了按林助手的肩示意坐下,自己也在那黑暗中盘腿而坐。
 
    因为已经吩咐自己不准出声,所以也不能问现在要干什么,林助手只是坐在博士旁边,憋着气环顾着漆黑的四周。
 
    这是一条离通电车的马路很远,汽车也很少通过的小巷,所以静得叫人心里发闷,加上这般漆黑,心里就更不安了,就好像是在山中的孤立的屋子里。
 
    过了一会儿,随着眼睛习惯了黑暗,周围的样子能依稀可辨了。楼下是三间租的小屋,行李已经搬出,哪间屋子都敞开着,所以使人觉得整个楼下如同一间大暗室。先模模糊糊浮现出白色的隔扇,然后拉门、黄色的墙壁以及壁龛等渐渐显出形状,不久拉门的横档都清晰可数了。
 
 
 
 
    这样十分钟二十分钟地沉默着,虽然叫不要讲话,但林助手总觉得嘴痒痒的,再也忍耐不住了。他把嘴凑到博士的耳边,用蚊子嗡嗡一般的声音轻轻说道:
 
    “先生,我们到底是在等什么呀?在这种空房里,即使这样呆着好像也不会发生什么事呀!”
 
    于是博士轻轻地咂了咂舌头,把嘴凑近林的耳边,用憋住的声音嚼咕说:
 
    “是在等鬼出来呀,别说话!要是发出一点点声音,就不出来啦!”
 
    说罢讪斥一般地使劲据了一下林助手的肩,林助手再也不能轻声发问了。
 
    奇怪!先生会不会发疯了呢?这屋子里没有发生凶杀案,当然不会出现妖怪或是鬼魂。
 
    但连先生这样的人都这么认真,所以说不定会真地出现鬼魂吧。那鬼魂究竟是什么东西呢?且慢,纵然说是鬼魂,当然也不会出现过去的鬼怪故事中那种家伙。先生不可能相信那种玩艺儿。这么说,……啊,对了!也许……
 
    林助手好像朦朦胧胧明白了博士所等候着的那家伙的真相,而且这想象使他不寒而栗。如果真有那种事,那家伙一定是个比鬼魂还要可怕好几倍的东西,难怪博士把它比作妖怪或是鬼魂呢!
 
    他不知为什么觉得背上发冷起来。定睛细看,好像从隐隐发白的隔扇背后有样黑乎乎的东西忽而张望着这边,忽而又缩进头去。
 
    有样东西轻轻地触了一下胳膊,吃惊地回头一看,原来是博士正抓着三明治递给他。好像博士自己也大口大口地吃着三明治。
 
 
 
 
    默默地接过那三明治,放是放进了嘴里,但他心里总牵挂博士所说的鬼魂,一想到那家伙可能会马上从对面的黑暗中闪出来,他哪还有食欲呢!
 
    回头想想,这样坐着只不过一个多小时,但这一小时实在漫长啊!林助手觉得那仿佛足足有十个小时似的。
 
    在继续忍着一动不动地坐着的他的视网膜里,各种奇形怪状的东西像走马灯似地来来往往,在耳朵里,他自己的心跳声以各种各样的意思不停地低声说着恶魔的话。
 
    幻想的妖魔鬼怪令人眼花缭乱地到处奔跑着。闭起眼睛,眼睑里一片迷乱;睁开眼睛,奇怪的影子在黑暗的房间里蠕动。
 
    随着这“无言戒律”的拖长,他浑身湿漉漉地冒出了虚汗,连呼吸都急促起来了。
 
    猛一注意,头顶上面仿佛人有在走动。是谁在二楼的黑暗中走路吗?他吃惊地侧耳静听了一下,但那声音只咯吱咯吱地隐隐约约响了两三下就停了。
 
    会不会是精神作用呢?刚才的声音会不会是耳鸣的声音呢?正当他在这样怀疑时,客厅套间的楼梯开始吱咯吱咯地响起来了。
 
    好像什么人蹑手蹑脚地下楼梯来了。
 
    于是从黑暗中突然伸来了谁的手,使劲地按住了林助手的肩膀。是宗像博士的手。博士在默默地指示他不要动弹。即使不接受这种指使,林助手已经像是被紧紧捆绑着似地缩成一团,毫无勇气去对抗发出脚步声的人了。
 
    决不会是妖怪或是鬼魂吧。鬼魂是不会发出脚步声的。那么究竟是什么人呢?林助手模模糊糊地知道这一点。正因为知道,所以格外可怕。
 
    楼梯的吱嘎吱嘎声一停,套间的黑暗中模模糊糊地浮现出了一个人影。果然是人!
 
    屏住气看着看着,那人并不知道两人坐在那里,突然唤地穿过中间房间消失在内厅的廊檐方向,并且嘎吱一声响起了开门的声音。
 
    其它地方是不会有发出那种声音的。门是廊橹角落里的厕所。哎呀,那么说那奇怪的人影是为了上厕所而从二楼下来的吗?
 
    “先生,那是什么人?”
 
    在博士耳边轻轻地问道,博士也轻轻地回了一句:
 
    “你还不明白吗?”
 
    “好像明白似的,不过刚才那家伙看上去好像穿着黑西装,像是男人呀!”
 
    “那就行了。那是那家伙的另一副面孔。”
 
    “要逮住吗?”
 
    “不,再观察一下吧。别惊动对方,已经等于是囊中之鼠了嘛。”
 
    两人又一言不发了,于是又响起了门的嘎吱声,黑影回来了。
 
    虽说漆黑一团,但对方也应该是习惯这黑暗的。两人屏着气缩在中间房间的角落里,心想可不能叫对方发现了。
 
    黑影悄悄地走进中间房间,好像突然察觉了什么动静似地在那里站住了。像是在透过黑暗凝视着这一边。是闻到了气味还是轻微的呼吸声传到了对方的耳朵里?
 
    黑暗中令人窒息的可怕的对视。刚听得从黑影的口中“啊”地发出微弱的叫声,怪物旋即逃进了套间,发出很响的声音顺楼梯跑上去了。
 
    “被发现了。但不要紧,没有逃路了。好,你来!”
 
    博士说着从手提包里取出两支手电筒,一支交给了林助手,啪地点亮后在前面走了。
 
    爬上楼梯一看,二楼仅有两间房子,而且都空空如也,连家具都没有,所以一眼就能环视四周。
 
    “哎呀,奇怪!不是一个人也没有吗?”
 
    博士照着手电筒的光在两间房子里扫了一圈,可这光里却没有出现任何人的身影。
 
    检查了一下,两侧的木板套窗都关闭着,中间严严实实地插着插销,两个壁橱也打开来看了一下,但里面空无一物。
 
    “此外也没有躲藏的地方了,逃到哪里去了呢?”
 
    林助手诧异似地自言自语道,但说着说着不觉脊梁骨发冷起来,究竟是鬼呢还是那家伙使用了比鬼还可怕的魔术呢?
 
    “嘘,安静!那家伙在听着呢!”
 
    一听博士的私语声,林助手又吓了一跳,仿佛是在告诉他:“你瞧,在那里!”
 
    “躲在什么地方?”
 
    战战兢兢地一问,博士立即用手电筒光指了指顶棚。
 
    “啊?就在这上面?”
 
    林助手轻声反问道。
 
    “是的,不是没有其它地方可逃了吗?”
 
    博士低声说道。他张望了一下一侧的橱子,又用手电筒检查了一下顶棚,随后抓住提心吊胆地走近来的林助手的胳膊,咬着耳朵有点挑逗似地问道:
 
    “是这儿。这顶棚是可以挪动的。你有勇气吗?”
 
    林助手不好意思回答自己没有勇气。对方既不是妖怪又不是鬼魂,是活着的人,而且是孤零零地到处潜逃的家伙,如果害怕他而畏缩不前,那将是侦探助手的耻辱。
 
    “我来爬到这上面去弄个清楚吧,先生待在这儿,如果对方不好对付,我会喊的,到时候再来帮助。”
 
    “那你就上去,不逮住也没有关系,只要弄明白那家伙在不在!其余的事交给警察就行了。”
 
    两人喊喊喳喳地说了一阵以后,林助手脱掉上衣,一面留心着尽量不发出声音,一面爬到壁橱中段,轻轻地把天花板往旁边挪了一下,爬上了满是灰尘的顶棚。
 
    他曾出于猎奇心跟在电工后面上过自己家的顶棚,所以大致知道顶棚是种什么结构,也懂得以顶棚的什么地方为下脚处。
 
    他故意关了手电筒,在蜘蛛网和灰尘中慢慢地向前爬去。
 
    虽然硬着头皮爬上来了,心想不能被博士瞧不起,但一想到自己这样毫无间隔地在一片漆黑之中与不可捉摸的怪物对峙着,就格外可怕了。
 
    顶棚并不大,所以这样胆战心惊地爬着爬着就已经到达中央了。
 
    屏息静听,不知从哪儿“呼呼呼啸”地传来了微微的呼吸声。
 
    “哎呀,要是这样,对方也是害怕了,听那急促的呼吸!”
 
    一察觉这点,林助手突然产生了勇气。
 
    “好,那就干脆用手电筒照一下!”
 
    他突然点亮手电筒,照了一下有动静的地方。
 
    于是,只见那光束中蹲着一个不寻常的人。
 
    立着破旧的黑西服的领子,礼帽的帽檐拉得下下的,那礼帽下一副大眼镜炯炯发光。看上去是个相当瘦小的家伙。看到这样子,林助手更增添了勇气。
 
    由于一下子照到了耀眼的光,那怪物情不自禁地抬头看了一下这边,那是一副像被追到绝境的小兔子一样恐惧不安,一看就觉得可怜的表情。
 
    一张女人一般的温柔的长脸由于恐怖变得苍白而歪扭,眼睛里甚至闪着泪花。一副可怜的样子,都快要作揖央求说:“请放过我,求求您,求求您。”
 
    “怎么,原来是这种弱不禁风的家伙呀!好,那就逮住她立个功吧!”
 
    林助手越来越胆大了,他一声不吭,慢慢地朝那方向爬去。可是,对方好像如同猫前面的老鼠已经无法动弹了,只是仿佛要哭出来似地凝视着这一边。
 
    不一会儿,两人的脸离得只有一尺左右了,几乎听到对方的心跳。尽管如此,对方依然纹丝不动。
 
    林助手不知为什么感到犹豫起来,他可怜起对方来了,心想那憔悴不堪的、苦苦哀求似的神情也许一辈子都忘不了吧。
 
    可是,这不是犹豫的时候!无须可怜逃到顶棚里躲起来的这种家伙!他毅然地伸出胳膊,抓住了对方的手腕。正如他所想象的,那手脖子又细又柔软。
 
    于是对方的眼睛里闪了一下光,似乎在喊:“这样求你还不饶恕我呀!”而且突然改变态度,使劲甩掉了被抓着的手脖子,不知道这么弱不禁风的家伙哪儿来这么一股劲。
 
    转瞬间,对方如同小兔子似的敏捷地跳到那一头的黑暗中去了。
 
    哼,哪能让她逃掉呢!林助手已经来不及打手电筒,他立即朝那方向扑了过去。天花板像是马上要破裂似地吱嘎吱嘎地响了几下。
 
    可是,不知怎么搞得扑过去的地方却没有对方的身体。他仿佛感到从头顶上的屋顶方向耷拉着两条腿。
 
    虽然他愣了一下,但没有时间去细细考虑了。他没命地抱住了那两条腿一样的东西。
 
    于是他觉得那腿一下子朝屋顶方向缩了进去,但紧接着又以可怕之势猛地伸到了下面。
 
    刹那间天花板吱嘎作响,林助手步地倒在那里。
 
    不知是怎么一回事。虽然手电筒亮着掉在那里,但直接的光线照不到发生这一异常情况的场所,所以看不准是什么地方。
 
    但林助手立即明白了事情经过。在微弱的反射光中看到了顶棚里侧的薄薄的木板。在那木板的一部分上开着一个两尺见方的洞,洞上毫无遮眼的东西,在遥远的那一边星星闪烁着光芒。
 
    啊,真没想到,这种地方竟然准备着通向屋顶的洞口。
 
    传来了吧略吧喀踩瓦的声音。原来是怪物踢倒了林助手后逃到了屋顶上。
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