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怪指纹:小五郎的推理

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:明智小五郎の推理 博士が電話室から帰って来ると、その間中絶していた話題が、刑事部長の質問でまた元に戻った。「で、あなたは
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明智小五郎の推理


 博士が電話室から帰って来ると、その間中絶していた話題が、刑事部長の質問でまた元に戻った。「で、あなたは、その川手氏の口から何か聞き出されたのですか。北園竜子が真犯人でないというようなことを」
「イヤ、川手氏は別に何も知ってはいないのです。ただ今度の犯人の親達が川手氏のお父さんのために無残な最期をとげた、その復讐のために川手氏一家の(みなごろし)を企てたということ、犯人の一人の眼帯の男は本名を山本始といい、男装の女はその実の妹であることなどが分ったばかりで、二人とも変装をしていたので、犯人達の顔さえはっきりは覚えていないという仕末(しまつ)です」
 明智が答えると、刑事部長は畳みかけるようにして、質問の二の矢を放った。
「それじゃ、百貨店の屋上から飛降り自殺をした男の遺言と全く一致しているじゃありませんか。あなたが、北園竜子や、あの自殺をした男が真犯人でないとおっしゃる論拠は?」
「それは論理の問題です。中村君から詳しいことを聞いて見ますと、この事件は初めから終りまで、あらゆる不可能の連続と云ってもいいくらいです。彼等が魔術師と云われた所以(ゆえん)もそこにありました。僕はそれらの不可能について静かに考えて見たのです。真実の不可能事が行われ得る筈はありません。それが行われたように見えたのは、何かその裏に、何人(なんびと)も気附かぬ手品の種が隠されていたと考える外はないのです。その秘密さえ解き得たならば、この事件はこれ(まで)とは全く違った相貌(そうぼう)を呈して来るかも知れませんからね」
「で、君はその秘密を解いたというのですか」
 横合から宗像博士が堪り兼ねたように口を出した。
「解き得たつもりですよ」
 明智は、博士の方に向き直ってニッコリ笑って見せた。博士も(あざけ)るように笑い返したが、二人とも目だけは異様に光っていた。そして、その四つの目の間に、何かしら烈しい稲妻のようなものが閃き合うのが感じられた。
「では、参考のためにその論理とやらを聞きたいものですね。事件の最初から、二人の部下まで犠牲にして、目と耳と足と頭を働かせて来た僕の解釈が正しいか、事件が殆んど終ってしまってから、机上(きじょう)に組み立てた君の空想が正しいか、一つ比べて見ようじゃありませんか。ハハハ……」
 博士は無遠慮な笑い声を立てて、腕組みをしながら椅子の背に反り返って見せた。
「イヤ、そういう感情の問題はともかくとして、我々としても一応明智さんの論理を承わらなければなりません。若し北園が真犯人でないとすると、この事件は最初からやり直しですからね」
 捜査課長も真剣な表情で、明智を促すのであった。
「僕はこの事件の最初からの、常識では判断の出来ないような不思議な出来事を、すっかり、ここに書き出して見たのですがね」
 明智はポケットから手帳を取出して、その頁を繰りながら、落ちつき払って語りはじめた。
「この事件に最も異様な色彩を与えたのは、申すまでもなく、例の怪指紋です。犯人はあの指紋を実に巧みに使用して、川手一家の人々に、どれほどの恐怖を与えたか知れません。あの指紋をじっと見ていると、何かこう悪魔の呪いとでも云ったようなものが、ひしひしと感じられますからね。
 しかし、あの指紋は、非常に奇怪ではありますが、別に不可能が行われたわけではありません。北園竜子が偶然あんな恐ろしい指紋を持って生れたのだとすれば、指紋そのものには何の不思議もありません。ただ異様なのは、その指紋の現われ方です。たとえば、川手雪子さんの葬儀の日に、告別式に列した妙子さんの頬に、どうしてあの指紋が捺されたか。また、お化け大会の中で、骸骨や人形の生首が持っていた通行証明の紙片(かみきれ)に、どうしてあの指紋がついていたか、それから川手氏の話によりますと、あの人が、宗像君に連れられて自邸を逃げ出す直前に、女中の持って来た煎茶茶碗の蓋にまで、例の指紋がついていたそうですが、事件の最中で見張りの厳重な川手家の台所へ、どうして犯人は忍びこむことができたか。これらは殆んど不可能に近い奇怪事と云わねばなりません。
 その他、川手雪子さんの殺害の通告状が、どこからともなく川手家の応接室に現われた不思議、雪子さんの葬儀の日に、川手氏のモーニングのポケットに復讐者の脅迫状が忍び込ませてあったことなど、そういう小さな出来事まで拾い上げれば、殆んど際限もない程ですが、僕はこれらの不思議を、あらゆる角度から眺めて、そのすべてを満足させるような一つの仮説を組み立てて見ました。
 僕は正面から解決することのできない、非常に難解な事件にぶッつかった場合は、いつもこの論理学上の方法を用いることにしているのです。その仮説が、事件のあらゆる細目にぴったり当てはまって、少しも無理がないことが確められたならば、それは最早や仮説ではなくて真実なのです。今度の事件が丁度それでした。そして、僕の組み立てた仮説は、あらゆる細目を満足させたのです。
 ここで、その僕の推理の過程を一々説明するのは、少し煩雑(はんざつ)すぎると思いますから、今度の事件の様々の不思議の中から、最も重大な、また異様な三つの出来事を拾い出して、僕の仮説がどんなものであるかをお察し願うことにしますが、その第一は例のお化け大会のテントの中から、黒覆面の犯人がどうして逃げ去ることができたかという点です。
 あのテントの外には沢山の見物人が(むらが)っていました。テントの中には警官や興行者側の人達が四方から犯人を取り巻いていました。その真中の鏡の部屋の中で、犯人はただ一挺のピストルを残したまま、消え失せてしまったのです。直ちに鏡の部屋は打毀(うちこわ)され、地中に抜け穴でもあるのではないかと、十二分に調べたと云いますが、そういう手品の種は何一つ発見されなかったのです。
 この魔法めいた不思議を、どう解釈すればよいのでしょう。鏡の部屋に何の仕掛けもなく、十数人の追手の目に間違いがなかったとすれば、犯人は絶対に逃げ出す(すべ)はなかったのではありますまいか。つまり犯人はそこにいたのではないでしょうか。僕はこういう仮説を立てて見たのです。犯人は決して逃げなかった。最後まで追手の真中に踏みとどまっていたのだ。しかも、追手達はそれが犯人だとはどうしても考え得ないような、一種不可思議の手段によって、ちゃんとその場にいたのだという仮説です」
 明智はそこで言葉を切って、謎のような微笑を浮べながら一座を見廻したが、誰も物を云うものはなかった。人々は酔えるが如く押黙って、ただ話手の顔を凝視するばかりであった。
「第二は山梨県の山中の川手氏の隠れ家を、犯人はどうしてあんなに易々と発見することが出来たかという点です。川手氏の話によりますと、宗像君は犯人の尾行を防ぐために、実に驚くべき努力をしておられます。宗像君と川手氏とは、念入りな変装をした上に、市内のビルディングで籠抜けをしたり、態々別の方角へ汽車に乗ったり、目的地へ達しても駅へは降りないで、危険を冒して進行中の汽車から飛降りたり、実にここには云い尽せない程の苦心をしているのです。
 ところが、それ程までにして、川手氏を匿まった場所が、忽ち犯人によって発見されたというのは、犯人が千里眼(せんりがん)の怪物でもない限り殆んど不可能なことではありませんか。これをどう解釈すればよいのでしょう。僕の仮説によれば、この場合もまた、犯人はそこにいたのです。絶対にそれと分らぬ一種不可思議の手段によって、絶えず川手氏を尾行していたのです。
 お分りになりますか」
 明智はまた言葉を切って、一同を見廻したが、一座の沈黙は深まるばかり、誰一人口を利くものもなかった。
「第三は北園竜子がなぜ自殺をしたかという点です。縲紲(るいせつ)の恥かしめを逃れるために自決したと云えば、一応筋道が通っているようですが、実はそこに非常な矛盾があります。一種の心理的不可能と云ってもよいのです。
 彼女は決して縲紲の恥しめを受けることはなかった。なぜと云って、短剣で自殺するためには、先ず床下の柱に縛りつけられていた繩を解かなければならなかったからです。ところが、繩を解いた以上は、最早や自殺する必要はどこにもない。闇にまぎれて逃げ去ってしまえばよかったのです。屋根裏に隠れてまで逃亡を計った女が、繩を解いて自由の身になりながら、突然自殺する気持になるなんて、全く考えられないことではありませんか。
 一方また、彼女は自殺したのではなくて、神社の森の中に隠れていた同類に殺されたのだという考え方もありますが、それは一層不合理です。同類が我が身の安全を計るために相棒を殺したのだとすれば、何もわざわざ繩を解くことはないのです。縛られているのを(さいわい)、闇にまぎれてこっそり刺し殺してしまえばよい訳ですからね。
 自殺の場合は繩が解ければ死ぬ必要はなくなるのだし、他殺の場合は殺すために繩を解く必要はないのですから、残る可能な解釈はただ一つ、何者かが彼女を殺害して、後から自殺と見せかけて置いたという考え方です。これは同類の仕業ではありません。同類なれば既に幾人もの殺人罪を犯しているのですから、今更苦心をして自殺を装わせる必要は少しもないのです。
 僕が今度の事件の裏には、何か非常な秘密が伏在しているのではないかと、ふと気附いたのは、実はこの事実からでした。繩を解きながら、しかも自殺していたというこの事実からでした。僕はひどく難解な謎にぶッつかったのです。
 先程申上げた仮説は、無論これにも当てはまります。前後の事情は悉くその仮説の犯人を指しているのです。しかし、何かしら一つ足りないものがありました。僕の推理の環に一寸した切れ目が残っていたのです。
 それを川手氏が埋めてくれました。川手氏を生埋めにする直前、犯人はまだもう一人復讐しなければならぬ人物が残っていると告白したといいます。それは、川手氏自身は少しも知らなかったのですが、妾腹(しょうふく)に出来た妹さんがどこかにいて、犯人はその妾腹の子まで根絶やしにするのだと豪語していたというのです。
 皆さん、これを聞いて、僕がどんなにハッとしたかお分りですか。まるで、闇の中に突然太陽の光が射した感じでした。僕の推理の環は完全につながったのです。何もかも白昼のように明かになったのです。
 川手氏のお父さんが獄中で病死したのは、川手氏の十歳の時だと云いますから、そのまだ見ぬ妹さんというのは、いくら若くても、川手氏と十以上は違わない訳です。川手氏は今四十七歳だそうですから、妹さんは四十歳近くの年配です。これは北園竜子の年齢とピッタリ一致するではありませんか」
 宗像博士はさい前から何かいらだたしそうに(しき)りに身動きしていたが、明智の言葉がちょっと途切れると、もう堪らなくなったように、いきなり取って着けたような笑い声を立てた。
「ワハハハ……、明智君、夢物語はいい加減にして貰いたいね。黙って聞いていれば、君の空想はどこまで突走るか、分りやしない。だが、いくら何でも、君はまさか、北園竜子がその川手氏の妹だなんて云い出すのではあるまいね」
「ところが僕はそれを云おうとしていたのですよ。北園は犯人ではなくて被害者だったということをね」
 明智の調子はいよいよ皮肉になって行くのだ。
「ハハハ……、これはおかしい。君は、犯人でもないものが変装して屋根裏に隠れたり、女の身で、屋根から飛び降りて逃げ出したりするというのかね。それに、何よりの証拠は、北園竜子のあの指紋だ。君は、あの怪指紋のことを、すっかり忘れてしまっているじゃないか」
「イヤ、決して忘れてやしない。北園竜子は怪指紋の持主だったからこそ、本当の犯人でないと考えるのです。宗像君、僕達は常識的な出来事を論じているのではない。常識を超越した恐るべき犯罪者を相手にしているのですよ。僕の想像力なんか、今度の犯人のずば抜けた空想に比べたら、取るにも足らぬものです。アア、何というすばらしい手品だ。僕は犯人のこの空想力を考えると、余りの見事さにうっとりしてしまう程ですよ。
 犯人は事件の初めから終りまで、これでもかこれでもかと、実に執拗にあの怪指紋を見せつけましたね。俺はこういう特徴のある指紋を持っているのだぞ、この指紋の持主こそ真犯人だぞと、(あら)ゆる機会を捉えて広告している。そして、それが同時に川手氏をこの上もなく脅えさせる手段ともなったのですから、犯人の狡智(こうち)には全く驚く外ありません。
 しかし、これは無論逆を考えなくてはならないのです。犯人が広告している事実には、いつもその裏があるのです。あの怪指紋は決して犯人のものではない。イヤ、それどころか、あの指紋は逆に被害者の指についていたのです。
 皆さん、犯人の智慧の恐ろしさは、この一事(いちじ)によっても、はっきりと分るではありませんか。三重渦巻の怪指紋は、その紋様が象徴している通り、実に三重の大きな役割を勤めたのです。第一はそのお化けめいた隆線模様によって、被害者を極度に脅えさせ、復讐をいやが上にも効果的ならしめた事、第二は世人にこの怪指紋の持主こそ犯人だという錯覚を与えて、犯人自身の安全に()した事、そして第三は、その怪指紋を当の復讐の相手である川手氏の妹さんの指から盗んで来たこと、つまりそうして最後には殺人罪の嫌疑を悉く被害者自身に転嫁(てんか)しようと、深くも企らんだ訳です。
 犯人はどうかして、当の仇敵である川手氏の妹さんの指に、偶然あの奇妙な指紋のある事を発見したのです。そして、そこからこの復讐事業の筋書が仕組まれたのです。犯人はある手段によって(この手段がまた非常に面白いのですが)川手氏の妹さんに接近しました。恐らくそうして妹さんの指紋を盗み、精巧な写真製版技術によって、怪指紋のゴム印を造ったのだと思います。そのゴム印は絶えず犯人のポケットに忍ばされていました。
 皆さん、あれは巧みに出来たゴム印に過ぎなかったのです。それが魔術師の手品の種だったのです。ゴム印なればこそ、あらゆる不可能を超越して、どんな場合にでも、例えば被害者の妙子さんの美しい頬にさえ、混雑にまぎれて、ソッと押しつけることも出来たのです。
 しかし、犯人のこの奇妙な手品が、その指紋の持主である川手氏の妹さんには、全く想像も出来ない程のひどい打撃となって帰って行きました。彼女は最初の間は気もつかないでいたかも知れませんが、新聞に殺人鬼の怪指紋として、その拡大写真が掲載されたときには、ハッとばかり、自分自身の指先を見つめないではいられなかったことでしょう。アア、その時の彼女の驚きと恐れがどれ程であったか、想像するさえ身の毛もよだつ程ではありませんか。
 彼女はもう絶対に殺人の嫌疑を(まぬか)れることは出来ないと信じ込んでしまったのに違いありません。そこで、呪わしい指を切断して隅田川に捨てるようなことにもなり、転宅と見せかけて屋根裏に潜み、捜査の手がゆるんでから、どこかへ逃亡しようと企らむにも至ったのです。まるで犯罪者のような奇矯な行動ではありましたが、相談相手とてもない、独り身の女としては、恐ろしさに気も顛倒(てんとう)して、そんな気違いめいた考えになったのも、少しも無理とは思われません。
 しかし、彼女はそうして、結局真犯人の思う(つぼ)にはまったのです。それ程彼女を苦しめたというだけでも、犯人の目的は半ば達せられたのですが、彼は更にこの哀れな女をあくまで追いつめて、無残にも刺し殺してしまいました。そして、自殺のように見せかけて、何喰わぬ顔をしていたのです。
 イヤ、それだけではありません。犯人の悪企みには殆んど奥底がないのです。皆さんは北園竜子の召使の老婆の証言によって、竜子がどこの誰とも知れぬ四十歳余りの男と、ひそかに逢曳(あいびき)を続けていたことを御存知でしょう。僕の仮説は、その相手の男というのが、外ならぬ真犯人自身であったことを教えてくれます。彼はそうして、仇敵の娘を(もてあそ)び、復讐事業の材料として指紋を盗み、その上に、竜子のアリバイを悉く抹殺することに成功したのです。つまり、今度の事件で数々の殺人罪が犯された当日は、竜子は必ずこの男の為に呼び出され、家を留守にしていたという事実があるのです。
 若しアリバイさえ成立すれば、いくら気の弱い竜子でも、まさか指を切るような事はしなかったでしょうが、それが全く見込みがないと分ったものですから、ああいう気違いめいた行動に出たのでしょう。真犯人はあらゆる点にいささかの抜かりもなかったのです」
 人々は、今は石のように身動きもせず、ジットリと汗ばむ手を握りしめて、()()(さい)穿(うが)って鮮かな、名探偵の推理に聴き入っていた。だが、ただ一人宗像博士だけは、彼の打立てた推理が、見る見る片っ端からくずされて行くのを見て、焦躁(しょうそう)の色(おお)うべくもなく、顔色さえ青ざめて、追いつめられた(けだもの)のように、隙もあらば反撃せんと、血走る目をみはっていた。
「中村君が調べた戸籍簿によりますと、竜子は北園弓子というものの私生児ですが、すると、川手氏のお父さんの妾であった女はこの弓子でなければなりません。僕は川手氏に、北園弓子という名前に記憶はないかと訊ねて見ました。すると、川手氏は、その名をちゃんと記憶していたのです。幼い時分二三度家へ来た事のある知合(しりあい)の美しい女に、確かそういう名前のものがあったという答えでした。最早や何の疑う所もありません。竜子こそ川手氏のお父さんの妾腹の娘だったのです。犯人ではなくて、被害者の一人だったのです」
 この時テーブルの一方に、ガタガタという音がしたので、一同その方を眺めると、真青になった宗像博士が、果し合いでもするような顔で突立っていた。立上る時、興奮の余り、つい椅子を倒したのである。
「明智君、実に名論です。しかし、それはあくまで名論であって、事実ではない。論理と空想の外には、現実の証拠というものが一つもないじゃないか。証拠を得ようにも、残念ながら竜子が死んでしまっているので、今更どうすることも出来やしない。
 これで君の竜子が犯人でなかったという空想はよく分ったが、それじゃもう一人の犯人、あの眼帯の男の方は一体何者だね。これも犯人ではなくて被害者だったとでもいうのですか」
 明智は少しも騒がず、にこやかに答えた。
「一種の被害者です。しかし、川手氏の一族だという意味ではありません。彼はこの事件とは何の関係もない、恐らくは一人のルンペンなのでしょう。
 犯人は眼帯の男によく似た大男を探して、甘言を以て眼帯の男の服装を与え、多分は御馳走もしたことでしょう。或は金銭を与えもしたでしょう。そして、閉店間際の百貨店の、人影もない屋上に誘い出し、例の偽の遺書をポケットに突込んで、隙を見て地上へ突き落したのです。これは僕の想像ですが、恐らく間違ってはいないと思います」
 明智は強い語調で云って、じっと博士の目の中を見つめたが、博士はややまぶしそうに、その視線を避けながら、しぼり出すように、空ろな笑い声を立てた。
「ハハハ……、またしても想像ですか。僕は君の空想を訊ねているのじゃない。確証のある事実が聞きたいのだ」
「その答は簡単ですよ。僕は真犯人の眼帯の男が、まだ生きてピンピンしていることを、よく知っているからです」
「ナニ、生きている? それじゃ君は、その犯人がどこにいるかも知っているのだね」
「無論知っていますよ」
「では、なぜ捉えないのだ。犯人のありかを知りながら、こんな所で無駄なお喋舌(しゃべ)りをしていることはないじゃないか」
「なぜ捉えないというのですか」
「そうだよ」
「それは、もう捉えてしまったからです」

    博士从电话室回来,一度中断的话题经刑警部长提问又接着说了起来。
 
    “那么,您从川手的嘴里探听出什么了?有没有探听出北园龙子不是真正的犯人这类事?”
 
    “没有。川手并不知道什么,只知道这样一些事:这次的犯人的父母是被川手父亲残暴地杀害的,他们为了报仇而企图杀光川手一家;犯人之一的戴眼罩的男人本名山本始,男装的女人是他的亲妹妹。因为两个都化着装,所以连犯人们的胜他都记不清楚。”
 
    小五郎刚回答完,刑警部长立即连珠炮似地发问了两个问题:
 
    “那不是与跳楼自杀的男人的遗言完全一致吗?您说北国龙子和那个自杀的男人不是真正犯人的论据是……”
 
    “那是逻辑的问题。向中村君打听了一下详细情况,可以说这案件自始至终发生的都是不可能的事,他们被称为魔术师的原因也在这里。我冷静地考虑了一下这些不可能的事,真正不可能的是办不到的。之所以看上去办到了,只能认为其背后隐藏着一种谁都没有察觉的戏法的秘密。只要能揭开这秘密。这案件也许就呈现出与过去完全不同的情形了。’”
 
    “那么,你是说揭开这秘密了?”
 
    宗像博士终于忍耐不住似地从旁插嘴道。
 
    “我自认为是揭开了。”
 
    小五郎转过身来朝博士微笑道,博士也讥笑地朝他回笑了一下,但两人都只是眼睛异常地炯炯发光,使人不由得感到那四只眼睛之间互相闪烁着一种激烈的雷电般的光。
 
    “那么,为借鉴起见我想听听你的逻辑。咱们来比一下吧,究竟是打案件一开始就牺牲了两名助手,迄今他经风霜的我的解释正确呢,还是案子几乎结束以后才在纸上谈兵的你的空想正确,哈哈哈哈。”
 
    博士发出毫不客气的笑声,抱着胳膊仰脸靠到椅背上。
 
    “啊,这种感情的问题姑且不说,作为我们来说也得先听一下小五郎君的逻辑,因为如果北园龙子真的不是犯人,这案子就得重新搞起了。”
 
    侦查科长也露着严峻的表情催促小五郎道。
 
    “我把从这案子开始以来凭常识难以判断的奇怪事件全记到这上面了。”小五郎从衣兜里掏出笔记本,一面翻页一面非常沉着地开始说道,“给这案子蒙上最异样的光彩的,不用说是那怪指纹。犯人非常巧妙地使用了那指纹,不知给了川手一家多少恐惧,因为定睛细看那指纹,深深地感到恶魔在诅咒自己似的。可是,那指纹虽然非常奇怪,但并不是办到了不可能的事。如果北园龙子偶然生来就有那种可怕的指纹,那么指纹本身也没有什么不可思议的。只是异常的是那指纹的出现方法。比如说,在川手雪子葬礼的那一天,出席告别仪式的妙子的脸上为什么按上了那指纹?还有在妖魔鬼怪大会中尸骨和偶人的头拿着证明通过的纸片上为什么也沾着那指纹?另外听川手说,在他即将被亲像君领着逃出自己家的时候,甚至在女佣人端来的茶碗盖子上都沾着那指纹,犯人为什么能溜进看守很严的川手家的厨房呢?必须说这些都几乎是不可能的怪事。此外,通告说要杀害川手雪子的信不知是哪儿来的突然奇怪地出现在川手家的客厅里;在雪子葬礼的那一天,川手的礼服口袋里装着复仇者的恐吓信,等等。如果连这种小事情都挑出来的话,就几乎没个完了。我从各种角度观察这些怪事,立了一个使这一切都满足的假设。我在遇到从正面不能解决的非常难破的案子时总是运用这个逻辑学上的方法。如果那假设与案子的所有细节都吻合,丝毫没有牵强的话,那么。那就不再是假设而是事实了。这回的案子正是如此,而且我立的假设满足了所有细节。在这里-一说明我的推理过程我想太繁杂了,所以想从这回案子的形形色色的怪事中拣出最重要最奇异的三件事情,请诸君去想象。第一个例子是:蒙黑面的犯人为什么能从妖魔鬼怪大会的帐篷中逃出去?那帐篷的外面聚集许多观众,在帐篷里警察和举办者方面的人从四面八方包围着犯人。就在这正中的镜子房里,犯人只留下一支手枪不翼而飞了。听说镜子房立即被拆了,而且彻底地检查了一遍,怕地下有暗道什么的,但那种戏法的秘密却什么也没有发现。怎么解释这一带点魔术的怪事才好呢?如果镜子房里没有任何机关,十几名追捕者的眼睛没有看错的话,那么犯人不是绝对无法逃出去的吗?就是说犯人会不会就在那儿呢?我立了一下这种假设:犯人决没有逃跑,一直留在追捕者之中直到最后,而且是通过一种追捕者无论如何都不会考虑那是犯人的手段呆在现场的。”
 
    小五郎说到这儿停了下来,露着神秘的微笑环视了一下在座的人,但谁也不说话,大家陶醉似地默不作声,只是凝视着说话人的脸。
 
 
 
 
    “第二是犯人为什么能那样轻而易举地发现山梨县山中的川手的隐居之处这一点。据川手说,宗像君为防止犯人盯梢,作了非常惊人的努力。宗像君和川手进行了精心的化装,忽而从大厦后门偷偷溜出,忽而故意乘火车去别的方向,即使到达目的地也不下到站上,而冒着危险从行进中的火车上跳下来,所费的苦心在这里实在是一言难尽啊!可是,如此费心把呼藏起来的场所却立即被犯人发现了。只要犯人不是千里眼的怪物,这不是几乎不可能的吗?这怎么解释呢?根据我的假设,这种场合犯人也在那里,通过一种绝对不会被认出来的奇怪手段始终跟踪着川手……你们懂了吗?”
 
    小五郎又停顿下来环视了一下在座的人,但大家更加沉默不语,没有一个人开口说话。
 
    “第三是北园龙子为什么自杀这一点,若是说她是为摆脱逮捕的耻辱而自杀的,好像还入情入理,但事实上这是极其矛盾的,可是从心理上来说是不可能的。她决不会被捕。为什么这样说呢?因为她为了用短剑自杀必须先解开绑在地板下的柱子上的绳子。可是,既然解开了绳子,她就再也没有必要自杀了,趁着黑暗逃走就行了。连躲在顶棚上都企图逃亡的女人解开绳子获得自由后却反倒突然想自杀,这不是完全难以想象的吗?!另一方面也有这样一种意见,认为她不是自杀而是被躲藏在神社树林里的同伙杀害的,但这更不合情理。假定是同伙为图自身安全杀了伙伴,那何必要特意解开绳子呢?利用被绑着的好机会,趁机偷偷地刺死她就行了嘛。若是自杀,能解开绳子就没有必要死;若是他杀,没有必要为杀人而解开绳子,所以剩下的可能的解释只有一个,那就是:什么人杀害了她,随后伪装成是自杀的。这不是同伙所干的。若是同伙,已经犯了杀死了几个人的杀人罪了,所以事到如今丝毫没有必要煞费苦心地让她装成自杀了。说实在的,我突然注意到这回案子的背后可能隐藏着什么不得了的秘密是由于这一事实——解开了绳子却自杀了这一事实。我遇到了一个相当难解的谜。刚才我说的假设当然也适合这一点,前后的情况都指那假设的犯人。但好像有一不足之处,我的推理的环节上留着一处小小的裂缝,呼替我填补了。呼说犯人在活埋他之前坦白说还剩下另一个人必须报复。这川手自己一无所知,听说他什么地方有一个父亲的小老婆生的妹妹,犯人夸口说要把这妾生的孩子也根除掉。诸位,你们知道听到这话我有多吃惊吗?感到黑暗中突然照到了阳光一样。我的推理的环节完全连接上了,一切都真相大白。川手的父亲在狱中病死据说是在川手七岁的时候,所以那个没见过面的妹妹不管怎么年轻也少说要跟川手差七岁。据说川于今年四十七岁,所以他的妹妹年近四十,这不与北园龙子的年龄完全一致吗?!”
 
    宗像博士从刚才起一直烦躁似的不停地动着身子,小五郎的话刚一停顿,他就再也忍耐不住地突然发出不自然的笑声:“哇哈哈哈哈哈,小五郎君,请你别说梦话啦!如果默默地听着你说,不知道你会怎样想入非非呢!可是,无论怎样你决不会说出北国龙子是那个川手的妹妹吧。”
 
    “但我是想那么说的:北园龙子不是犯人而是受害者。”
 
    小五郎的口气渐渐辛辣起来。
 
    “哈哈哈哈哈,这就奇怪了。你是说并非犯人的人却又是化装躲在顶棚里,又是从房顶上跳下来逃跑学?况且最好的证据是北园龙子那指纹。你不是完全忘记那怪指纹了吗?”
 
    “不,决没有忘记。我认为北园龙子正因为有怪指纹所以不是真正的犯人。宗像君,我们不是在议论合乎常识的事情,是在跟一个超越常知的可怕的犯罪者打交道呀!我的想象力跟这回犯人的超人的空想相比就算不了什么啦。啊,多么精彩的戏法啊!我一考虑犯人的这种空想力,精彩得都叫我入了神了。犯人从案子开始到最后不厌其烦地给人看那怪指纹,抓住一切机会宣传:‘犯人有这种特征的指纹!有这指纹的人才是真正的犯人!’而且,这同时也成了最令川手惧怕的手段。犯人狡猾的智慧实在令人惊叹啊!但这当然必须往相反方向去考虑。在犯人宣传的事实里总是有其背面。那怪指纹决不是犯人的,不,岂止如此,那指纹仅仅是在被害者的指头上。诸位,犯人的智慧之可怕从这一件事看不也很清楚了吗?三重旋涡的怪指纹正如那纹路所象征的,的确起了三重作用:第一,通过那妖怪一般的隆线纹路使被害者极度恐惧,使复仇更有效果;第二,给世人一种错觉,以为有这怪指纹的人才是犯人,有助于真正犯人自身的安全;第三,从报复的对象呼的妹妹本人的手指上偷来那怪指纹,就是说,最后企图将杀人罪的嫌疑全都转嫁给被害者本人。犯人偶然发现在仇敌川手的妹妹手指上有那个奇怪的指纹,并由此安排好这一复仇计划的步骤。犯人通过某种手段(这手段是非常有意思的)接近了川手的妹妹,我想大概是这样窃得他妹妹的指纹,根据精巧的照片制版技术制造了怪指纹的胶版,那伪造的指纹就一直暗藏在犯人的口袋里。诸位,那不过是巧妙的制成的胶版而已。那就是魔术师的戏法的底儿。正因为如此,犯人能超越一切不可能,在任何场合,比如说在被害者妙子漂亮的脸蛋上都趁着混乱偷偷地按上了指纹。可是犯人这奇妙的戏法对这指纹的持有者川手的妹妹来说完全是个难以想象的重大打击。她起初也许没有察觉,但在报纸上作为杀人犯的怪指纹登载了放大的照片时,怎么不吃惊地凝视自己的手指头呢?!啊,想一想当时她多么惊恐,都叫人不寒而栗啊!她一定坚信自己绝对摆脱不了嫌疑了,于是她就切断了可恨的指头扔到了隅田川里,并且伪装搬家躲在顶棚里,企图待搜查工作松一点以后逃到什么地方去。虽然是犯罪者一样的离奇古怪的行动,但作为连个商量的人都没有的独身女子来说,也难怪她吓得神魂颠倒,想出这样狂妄的主意来。但到头来却陷入了真正犯人的圈套。如此折磨她,仅这一点犯人的目的也达到了一半,但他进一步追逼这个可怜的女人,残暴地刺死了她,并伪装成是自杀的样子,自己装作没那一回儿事似的。不,不仅如此,犯人的阴谋诡计几乎是无穷无尽的,大家根据北园龙子的女佣的证词,都知道龙子一直在偷偷地跟着一个四十多岁的男人幽会吧,我的假设告诉我:那个男的不是别人正是真犯人自己。他就这样玩弄仇敌的女儿,窃得了作为复仇材料的指纹,并且成功地全部抹掉了龙子不在犯罪现场的证明。这就是说,’有这样的事实:在这回的案件中几次发生凶杀案的当天,龙子总是被这个男人叫出去,不在家里。只要不在现场的证明成立,懦弱的龙子也决不会干出剁掉手指头这等事来吧?但大概她知道那是根本没有希望的,所以采取了那种狂妄的行动。真犯人在所有方面都丝毫没有疏漏。”
 
 
 
 
    大家现在橡木头一样一动也不动地坐在那里,紧握着汗津津的手,倾听着分析得细致入微的名侦探的推理,但唯独宗像博士一人看到他自己树立的推理眼看着一个接一个地崩溃,无法掩饰焦躁的神色,连脸色都苍白了。他像一头被追逼得走投无路的野兽似地瞪着布满血丝的眼睛,想一有机会就进行反击。
 
    “根据中村君调查的户口本,龙子是个叫北园弓子的人的私生子,这么说来,是川手父亲小老婆的这个女人应该就是这个弓子。我问了一下川手还记得不记得北园弓子这名字,谁知川手清楚地记着这名字,他回答我说:小时候来过两三回的那个漂亮女人确实叫那个名字。已经没有什么可怀疑的了,龙子就是川手父亲的小老婆生的孩子。她不是犯人,而是被害者之一。”
 
    这时在餐桌的一方发出了咯啦咯啦的声音,大家朝那边一看,只见脸色铁青的宗像博士露着像是要决斗似的神色叉腿站在那里。站起来时由于过分兴奋不知不觉地把椅子都弄倒了。
 
    “小五郎君,真是高论呀!但这到底只是高论,不是事实。除了逻辑和空想以外,不是丝毫没有现实的证据吗?!遗憾的是龙子死了。事到如今你想得到证据也无可奈何了。所以你那龙子不是犯人这一空想我是理解的,那么另一个犯人、那个戴眼罩的男人究竟是谁呢?难道说他也不是犯人而是被害者吗?”
 
    小五郎不慌不忙,笑容满面地答道:
 
    “是一种被害者,但不是说他与川手是同宗的人。他与这案子毫无关系,恐怕是一个流浪者吧。犯人找来了一个与戴眼罩的男子很像的大个子,用花言巧语让他穿上戴眼罩的人的衣服,大概也请他美餐了一顿吧,或者是给了他金钱吧,然后把他引诱到快打烊的百货商店那没有人影的屋顶上,把那假遗书塞进他的口袋,看准机会把他推到了地上。这是我的想象,我想大概不会错。”
 
    小五郎用强烈的口吻说道。他目不转睛地看了一下博士的眼睛,博士有点品服似地避开他的视线,仿佛硬挤出来似地发出了迷倡的笑声。
 
    “哈哈哈哈哈,又是想象呀!我不是在问你的空想,我想听有确凿证据的事实。”
 
    “这回答很简单呀,因为我清楚地知道戴眼罩的真正的犯人还活得挺健壮的哩!”
 
    “怎么,还活着?那么你知道那犯人在什么地方牌?”
 
    “当然知道。”
 
    “那为什么不逮住他?何必知道犯人的下落还这样闲扯呢!”
 
    “你是说为什么不逮住他,是吗?”
 
    “是的。”
 
    “那是因为已经逮住了。”
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