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铁塔王国的恐怖-地下室的妖虫

时间: 2021-11-22    进入日语论坛
核心提示:地下室の妖虫 さて、その夜の九時かっきりに、高橋さんは、おばけやしきの地下室の階段をおりていきました。札たばのはいったふ
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地下室の妖虫


 さて、その夜の九時かっきりに、高橋さんは、おばけやしきの地下室の階段をおりていきました。札たばのはいったふろしきづつみの一つをこわきにかかえ、一つを、左手にさげ、右手には懐中電灯を持って、足もとをてらしながら、一段一段、おずおずと階段をおりていきます。
 まだ雨はふっていませんが、いつふりだすかわからないような、まっ暗な夜です。道もない草むらをかきわけて、ここまで来るのもやっとでした。高橋さんは、りっぱな実業家ですから、おばけをこわがるような人ではありませんが、それでも、なんとなく気味がわるいのです。それに、地下室に待ちかまえているあいてが、例のおそろしいカブトムシだと思うと、なんだかゾーッとしてくるのでした。でも、かわいい賢二君を、とりもどすためですから、どんなことでも、がまんするつもりです。
 コンクリートの階段は、ひびわれて、そのあいだから草がはえているので、うっかりすると、足がすべりそうになります。高橋さんは用心しながら、だんだんふかく、おりていきました。
「懐中電灯をけすんだっ。」
 足のしたの穴の中から、気味のわるい声が、ひびいてきました。高橋さんはビクッとして、立ちどまりましたが、それは地下室に待っている怪人の声とわかったので、懐中電灯をけしてポケットに入れ、
「わしは高橋だ。賢二はそこにいるのだろうな。」
 とたずねました。見ると、地下室の中からボーッとあかりがさしています。電灯ではありません。ローソクの火のようです。
「賢二君はここにいる。きみはひとりだろうね。」
「ひとりだ。やくそくにはそむかないよ。」
「よし、おりてきたまえ。」
 高橋さんは階段をおりきって、地下室へはいりました。やっぱりローソクでした。部屋のなかほどに古い木箱がおいてあって、その上に一本のローソクが立っているのです。
 そのローソクのむこうがわに、なんだか黒い大きなものが、モゾモゾとうごめいています。高橋さんはギョッとして、にげだしそうになりました。
 そこには、おばけがいたのです。まっ黒なやつが、大きなまんまるな目で、じっとこちらをにらんでいたのです。それは、あの人間よりも大きなカブトムシでした。
 それはビニールのこしらえもので、中には人間がはいっているのですが、そうと知っていても、こんなさびしい穴ぐらの中で、この巨大な妖虫とさしむかいになるのは、気持のよいものではありません。
「ウフフ……、おれの姿が、おそろしいんだな。なあに、きみをとってくうわけじゃない。安心したまえ。おれは顔を見られたくないんだ。だから、こんな姿で、やって来たんだ。きみをおどかすつもりじゃないよ。」
 カブトムシの、大きなツノの下のみにくい口の中から、その声が聞こえてくるのです。中に人間がはいっていることはいうまでもありません。
 高橋さんも、それをきくと、おちつきをとりかえしました。
「賢二は? 賢二はどこにいるんだ。」
「よく見たまえ。おれのうしろの部屋のすみっこにいる。泣き声をたてられると、うるさいから、さるぐつわがはめてある。きみにひきわたすまでは、このままにしておくよ。」
 ローソクの光があわいので、いままで気づかなかったのですが、いわれてみると、部屋のすみに、小さい姿が、うずくまっていました。賢二君はかわいそうに、うしろ手にしばられて、てぬぐいで、しっかり口のへんをしばられています。さっきから、おとうさんの姿を見ていたのでしょうが、立ちあがることも、声を出すこともできないのです。たった一日のあいだに、なんだか、ひどくやせたように見えます。
「さあ、ここに、やくそくの一千万円をもってきた。これをやるから、はやく、賢二の縄をといてくれ。」
「よし、金はたしかに、うけとった。まさかにせ札ではなかろう。きみは、そんなこざいくをする人とはおもわない。しかしもしにせ札だったら、おれのほうには、ちゃんと、しかえしのてだてがあるんだからな。……それじゃ、賢二君はかえしてやる。おれは、こんな不自由なからだだから、きみがここへ来て、縄をといて、かってに、つれていくがいい。」
 いかにも、カブトムシの足では、縄をとくこともできないわけです。そこで、高橋さんは、気味のわるいカブトムシのそばをよけるようにして、部屋のすみに近づき、賢二君の縄をとき、手をとって、立ちあがらせました。そして、さるぐつわのてぬぐいをほどくと、そのまま、賢二君をひったてるようにして、階段をかけのぼり、外に出ると、いきなり、ポケットの懐中電灯をとりだして、スイッチをおし、原っぱのほうにむかって、ふりてらしました。
 それがあいずでした。やみの中から、草むらをはうようにして、黒いかげが、あちらからも、こちらからも、地下室の入口にむかって、かけよって来ました。いうまでもなく、中村警部の部下の刑事たちです。
 すこしも音をたてないで、黒い人の姿が、ひとり、ふたり、三人、五人、十人、たちまち地下室の入口に集まりました。暗くて、よくわかりませんが、夕方のご用ききにばけた刑事も、その中にいるのでしょう。十人が十人とも、てんでに、いろいろなものにばけています。刑事や警官らしい姿の人は、ひとりもおりません。
 地下室は一方口です。この階段のほかに出口はありません。もう怪人は、ふくろのネズミです。こちらは十人、あいてはひとり、いかなる魔法つかいの怪人でも、とても、かなうものではありません。
 声もたてず、刑事たちは、つぎつぎと階段をおりていきました。ローソクはもとのままに、にぶい光をはなっていました。巨大な妖虫も、もとの場所に、うずくまっていました。
 刑事たちがはいっていっても、あいてはすこしも動きません。シーンとしずまりかえっています。あまりしずかにしているので、なんとなく気味がわるくなってきました。
「ぼくたちは警察のものだ。さすがの怪物も、まんまとわなにはまったな。」
 ひとりの刑事が、大声でどなりつけました。すると、ああ、これはどうしたことでしょう。カブトムシが大きなツノをふりたてて、いきなり、
「ワハハハ……。」
と笑いだしたのです。おかしくてたまらないように、いつまでも笑っているのです。
 刑事たちは、あっけにとられましたが、もうグズグズしている場合ではありません。さきにたっていた三人の刑事が、ひとかたまりになって、いきなりカブトムシのからだに、とびかかっていきました。
 すると、そのとき、じつにきみょうなことがおこったのです。カブトムシのからだが、三人の刑事の手の下で、グニャグニャとへこんでいったのです。
 刑事たちは、たおれそうになるのをやっとふみこたえて、おもわず、「あっ。」と、おどろきのさけび声をたてました。
 カブトムシのからだは、からっぽだったのです。中の人間は、いつのまにか消えうせていたのです。では、いま、あんな大きな声で、笑ったやつは、いったいどこへいったのでしょう。カブトムシのぬけがらが、笑うはずがないではありませんか。


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