返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

4-6

时间: 2019-03-22    进入日语论坛
核心提示:    6 アブドッラー国王──予言者モハメットの血統を引くハシミテ家の一員である。だがアブドッラーはただの名門貴人では
(单词翻译:双击或拖选)
     6
 
 アブドッラー国王──予言者モハメットの血統を引くハシミテ家の一員である。だがアブドッラーはただの名門貴人ではなく、すぐれた政治家であり、外交官でもあった。十七歳で、父王の突然の死のあとを継いだアブドッラーは、二十五年にわたって、強大でもなければ裕福でもないその王国を、よく統治してきた。この国には、砂漠とわずかなオアシス都市としかない。人口も多くはないし、石油も出ない。
 アブドッラー王は、アラブ急進派とは精神的連携を保ちつつ、穏健派の王国とは実態的協同を深め、イスラエルに対しては微妙な和平と穏やかな抗争とを繰り返してきた。欧米諸国とは概して良好な関係を保ちながらも、その勢力を徐々に押し返して民族主義者を安心させもした。乏しい財政と軍事費の圧迫にもかかわらず、ベドウィン族を主力とする軍隊の支持を得て、農民のための産業振興と難民のための救済事業をも行ってきた。
 しかし、�中東で最も不安定な王座�といわれたその地位は、パレスチナ難民とそれを支援する急進派諸国の力が浸透するにしたがって、一層不安定になっていた。そこへ今回の中東戦争の勃発である。
 アラブ急進派諸国は、イスラエルとの間に長い国境線を持つこの王国に、強く参戦を呼びかけたし、国内にも�アラブの大義�に従って参戦を要求する声が強かった。アブドッラーはこの要求を抑えた。自分の国に、イスラエルと戦うに十分な軍事力も、経済的余裕もないことをよく知っていたからだ。王は、その代わりに、わずかばかりの軍隊を、交戦中のアラブ諸国の応援に派遣するという、巧妙な方法をとった。だが、故郷を追われたパレスチナ難民にとっては、戦うことが先決であり、勝敗はその次の問題であった。また、すでに戦争に突入したアラブ急進派諸国にとっては、この王国の戦略的位置は見逃せぬものであった。対イスラエル戦争において、兵員の質と組織では劣るが、数の上では圧倒的にまさるアラブ側としては、この王国の長い国境線を利用しない手はなかった。
 十一月の最後の一週間、アブドッラーの王国は不穏な空気に包まれた。首都では参戦を求めるデモ隊が王宮を取り囲み、パレスチナ難民キャンプからはアラブゲリラへの参加者が続出した。それどころか、パレスチナ人組織のゲリラ部隊がこの王国に入り込み、イスラエル領への侵攻をもうかがう姿勢をとっていた。
 アブドッラー王は、十二月一日、現地時間で午前十時(日本時間午後四時)過ぎに暗殺された。犯人は、過激な民族主義者の一員とも、レバノンに猛威を振うキリスト教マロン派の暴力団カタエブの回し者とも、あるいは政治的背景のないただの狂人だともいわれたが、その場で衛兵に射殺されたため真相は不明であった。だが、この場合、重要なのは原因ではなく結果であった。
 王位は直ちに王子アブドッラー二世に継承されたが、新王はまだ十四歳の少年であった。政府と軍隊の首脳は、この弱年の二世に忠誠を誓ったが、動揺はその日のうちに王国の全土に広まっていた。参戦を求めるデモはさらに拡大し、パレスチナ難民ばかりでなく軍の青年将校もこれに加わった。その一方では�王の復讐�を叫ぶベドウィン族が首都進攻の動きを見せた。過激派ゲリラ部隊は王国の北部に公然と侵入し、東北部の町では軍の一部が急進派諸国との共同作戦に加わる、と声明して決起した。
 アブドッラー王の突然の死によって生じた政治的空白と混乱を、近隣諸国も見逃しはしなかった。翌日には早くも、アラブ急進派諸国も、穏健派の国王も、この王国の周辺に軍隊を動かしつつあった。イスラエルもまた、国境に軍隊を集結していた。混乱状態のまま行方の定まらぬ王国を中にして、三つの勢力が向かい合った。
 だが、もっと大きな軍事移動も始まった。
 地中海に駐留するアメリカ第六艦隊はすでにキプロス島の東側に到着し、西太平洋の第七艦隊の主力も、フィリピンのスピック湾と日本の横須賀の基地からアラビア海に急行中であった。イラン東部のアメリカ空軍基地には、ヨーロッパから増援部隊が送られ、インド洋に浮ぶジェゴ・ガルシア島の基地にはB52が多数到着している、と伝えられた。
 ソ連海軍の動きも活発であった。十一月二十三日には、三隻の巡洋艦と多数の駆逐艦から成るソ連艦隊がボスポラス海峡を通過して東地中海に急ぐのが目撃されたし、翌二十四日には沖縄沖でインド洋に向かうソ連極東艦隊が写真付きで報じられた。
 イギリス地中海艦隊は、ジブラルタルとマルタの基地から姿を消し、フランス艦隊もツーロン軍港を抜錨して東へ向かった。また中国の潜水艦が紅海またはアラビア湾に入った、といううわさも流れた。そしてイランとトルコも、全軍を非常体制に置いた。
 いまや、アラビア海と東地中海との間に、巨大な軍事力が集結しつつあった。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

  • 上一篇:4-5
  • 下一篇:4-7