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蛇神4-7-5

时间: 2019-03-26    进入日语论坛
核心提示:    5 インド帰りか。 どうりで、と鏑木浩一の、まさにインド人並みの肌の黒さを見ながら思った。 もともと地が黒いのか
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 インド帰りか。
 どうりで、と鏑木浩一の、まさにインド人並みの肌の黒さを見ながら思った。
 もともと地が黒いのかもしれないが、その半端ではない日の焼け具合から、日本で焼いたのではないのではと密《ひそ》かに思っていたからだ。
「……居酒屋のオーナーの話では、自宅のマンションから転落死したということで、自殺か事故かもよく判らないということだったんです。ただ、状況から見て、衝動的な自殺だった可能性が高いと。でも、その話を聞いたとき、あの日の本村の話を思い出して、なんとなく気になって……。それで、遺体は別れた奥さんが引き取ったということを聞いたんで、線香の一本もあげるつもりで、奥さんの実家まで行ったんです。
 そのとき、奥さんから、達川さんのパソコンが初期化されてデータが全部消されていたってことを聞かされたんですよ。警察では、パソコンや周辺機器からは達川さんの指紋しか検出されなかったということで、自殺を決意した達川さんが身辺整理のつもりで、たとえば、ディスクに保存しておいた日記とかメールとかのデータを消したんじゃないかと判断したようですが、どうもそれが釈然としなくて……。
 それに、事件当夜、不審な三人の男が目撃されていたことから、他殺の線もありうると聞いて、もしやと思ったんです。もし、その三人の不審な男たちというのが、日の本村に関係した連中だったとしたら。達川さんが自分たちに不利なことをやろうとしているのを嗅《か》ぎ付けて、自殺に見せかけて、口封じをしたのではないかと……」
「達川さんは、その告発サイトというのを既に立ち上げていたんですか」
「いや、まだそこまではやってなかったようです。五月末に飲み屋で会ったときには、これからコンピュータの勉強を少ししなくちゃって言ってましたから、まだ準備中だったのかもしれません。でも、サイト立ち上げて発信はしてなくても、WEBページに載せる告発文書のようなものは既に作成して、フロッピーかハードディスクに保存していたかもしれません。奥さんの話では、残されていたフロッピーなども全部初期化されてデータが消されていたという話ですから、もし、あれが他殺だとしたら、犯人たちが、すべてのデータを消して証拠隠滅を図ったとも考えられます」
「そのことを警察に話したんですか」
「いや……。そのときは俺自身、達川さんの話が信じられなかったし、そのあとで、奥さんに電話したら、不審な三人組を見たというマンションの住人の目撃証言そのものがあまり信憑性のあるものじゃなかったとかで、他殺という線は見込み薄になったらしいと聞かされたんです。それで、やっぱり、衝動的な自殺にすぎなかったのかと思い直して、このことは誰にも話さなかったんですが……。
 でも、喜屋武さんの話では、その伊達という人も、日の本村に行ったきり行方不明になったということでしたよね?」
「ええ……」
 電話で、探偵社に勤める友人が日の本村にあることを調べに行ったきり、忽然《こつぜん》と姿を消してしまったことは話してあった。
「実は……」
 蛍子はそう言って、電話では話せなかったことまで詳しく話した。
 伊達の失踪《しつそう》の手掛かりをつかむために、つい最近、日の本村を訪れたこと。そこで見聞きしたこと。
「……すると、伊達さんは、その蛇ノ口とかいう底無し沼に形見のライターを拾いに行って、誤って落ちたのではないかと……?」
 鏑木は話を聞き終わると、濃い眉《まゆ》を寄せてそう訊《たず》ねた。
「ええ。そんな気がしてならないんです。でも、その落ちた沼というのが、村にとってはご神域でもあったために、事故のことが村ぐるみ———というか、あの村を牛耳《ぎゆうじ》っている人たちによって隠蔽《いんぺい》されてしまったのではないかと思うんです」
「うーん。なるほど。でも、そう考えると、確かに変ですね。日の本村のことを調べていた男が、一人は自殺、一人は行方不明……。ただの偶然とは思えないなぁ」
 鏑木はそう言って腕組みすると考えるような顔になっていたが、何かを思い出したような表情になって、
「そうだ。そういえば、その蛇ノ口とかいう沼のこと、達川さんも言ってましたよ。七年に一度の大祭の最後を飾る神事で、昔は、その沼に生き贄《にえ》が捧《ささ》げられていたとか……」
「一夜《ひとよ》日女《ひるめ》と呼ばれる幼い巫女《みこ》が犠牲になったようです。表向きはそんな贄の儀式はとっくに取りやめられ、今では、その神事も、藁《わら》人形を使った形式的なものになっているということですが、ひょっとしたら、この贄の儀式はいまだに密《ひそ》かに……少なくとも、昭和五十二年までは続いていたのではないかと思われるんです」
 蛍子はそう言って、倉橋日登美の幼い娘が、この一夜日女に選ばれた直後、「病死」したらしいことを話した。
「まさか、その春菜という幼女がその沼に……?」
 鏑木はさすがに愕然《がくぜん》としたように言った。
「もし、その贄の儀式が今も続いているのだとしたら……。沼底には儀式の証拠である少女たちの遺体や骨が今も残っているはずです」
「…………」
「村の人々にとっては古くから伝わる神事かもしれませんが、これはれっきとした犯罪です」
「もちろんですよ! そんなことが今も行われているとしたら」
 鏑木は憤然と言った。
「底なし沼とはいっても、実際には、底がないわけではないそうですから、もし、何らかの事件か事故がそこで起こったとなったら、当然、沼底を浚《さら》うような事態になるでしょう。日の本村の人たちはそれを恐れたのかもしれません」
「それで、伊達さんの事故死を隠蔽してしまったというわけか。なるほど。話のつじつまは合いますね……」
「ただ、伊達さんの件は、これ以上、手も足もでないんです。疑惑をはらすためには、蛇ノ口の底を浚うのが一番だと思うんですが、よそ者が神域である沼底を浚うなどということをあの村の人たちが許すはずもありません。警察が強制的にやるしかないと思います。でも、その警察を動かすには、あの村が何か犯罪めいたことに加担しているという確かな証拠をつかまなければ……。単なる推理や疑惑だけでは、警察もそうおいそれとは動いてはくれないでしょう」
「ましてや、その村が次期総理ともいわれている大物政治家の郷里となるとね。下手をすれば上から圧力がかかりかねない」
「ええ。それで、他殺の線が完全に否定されたわけではない達川さんの事件の方を再捜査してもらうことで、そこから、何か突破口が開けないかと思って……」
「そうか。そういうことですか。達川さんの事件が他殺、しかも、日の本村がからんだ殺人であることがはっきりすれば、芋ヅル式に、そちらの捜査もされるでしょうからね。俺も達川さんのことはずっと気にはなっていたんです。時々、本当に自殺だったのかなって思ったりして。わかりました。協力しますよ。とりあえず、あの件を担当した所轄署をあたって、もう一度他殺の線で徹底的に捜査し直してもらうよう話してみます」
 鏑木は強い目でそう言った。
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