明け方近く、聖二は、珍しく夢を見ていた。昏《くら》い夜の河原のようなところで、一心不乱に小石積みをしている夢だった。自分はまだ五歳くらいの子供で、回りには誰もいない。たった一人ぼっちで小さな石を拾っては積み上げている。
やがて、小石を積み上げ終わると、河原の向こうから誰かがやってきた。鬼だった。顔は暗くて見えないが、首から下は恐ろしい鬼のような姿をしている。
それが目の前までやってくると、いきなり、持っていた金棒で、苦労して積み上げた小石の山を奇麗に叩き壊してしまった。
聖二はなすすべもなく、目の前の鬼を口を開けて見上げていた。鬼は聖二を見下ろして笑っていた。間近でその顔がようやく見えた。恐ろしい姿とは似ても似つかぬ美しい優しい顔をしていた。
その顔は……聖二自身の顔だった。
鬼が行ってしまうと、また、何事もなかったように、はじめから小石を拾い積み始めた。そして、これを最後まで積み終えたとき、またどこからか、自分そっくりの顔をした鬼がやってきて、壊してしまうのだろう。
それを承知しながら石を積み始める……。
手指の皮は破れ、血がにじんでいる。
その指にはぁと息を吐きかけ、自分はずっと長いこと独りでここにいて、幼い子供の姿のまま、こんなことを数え切れないほど繰り返してきた。
そんなことを思いながら……。