北国に雪がなく東京に雪が降った。わが家では庭の池が、正月からうすく凍てついてその上を小鳥たちが歩いて、池の水をすすっている。
もう、ひと昔も前のことだが、ブラジルのリオのカーナバルを見物に出かけた。ちょうど二月の半ばで、東京では何年ぶりかの大雪だったが、三〇時間の空の旅をして南半球の彼の地にたどり着き、リオデジャネイロの空港に降りると、空は抜けるように青く澄んで晴れあがっていた。
ホテルはリオの海岸通りに面したクラシックなホテルで、私の入ったルームは中庭にあるプールを見下ろすことのできる四階にあった。窓からプールを眺めると、肉体美豊かなカリオカッ子の若さに溢れたモレナ(混血児)たちが、黒く豊満な胸もとを惜し気もなく陽光に晒している。その太股はハチきれんばかりで、チョイと突ついただけでパチンと音を立ててはじけるような張りを見せていた。
ホテルの食堂で食べたアボカドも旨かったが、彼女たちの黒い果皮に包まれた果肉はもっと旨いに違いない。私は年甲斐もなくそんな妄想に駆られて、飽くことなくプールではしゃぐ彼女たちを眺めたものだ。
マニアーナの大陸と呼ばれる彼女たちの陽気さは、手軽に金をかけずにすませる食生活にある、といってもそう粗末なものではない。
インディオの食料だったとうもろこしやじゃがいも料理のほか、ポルトガル人が持ちこんだヨーロッパ料理やアフリカから奴隷として連れてこられた黒人の料理。世界一勤勉な日本人移民が持ちこんだ日本料理がある。野菜は日本人のおかげでなんでもあり、ないものはワサビぐらいだという。