ブラジル庶民の代表的な煮込料理にフェジョーダがある。牛の内臓と日本のうずら豆に似た豆を一緒に煮込んだもので、一世の日本人でも食べるのに抵抗があると言われたが、私は敢えて挑戦してみた。
脂が強くてもう少しで万歳するところだったが、郷に入れば郷に従えの主義だからとうとうやっつけた。もっとも、ピンガという砂糖キビの|滓《かす》から作った六〇度の強さを持つ焼酎の助けを借りなければ食えなかったろう。現地人のカーナバルに現われる物狂おしいばかりのエネルギーの根源だというので挑んだのだ。たしかにその効き目はあった。若いモレナの娘っ子と対等に闘えたのだから……。
ブラジル名物牛肉のあぶり焼きシュラスコは楽しい。あんこうの吊し切りならぬ牛肉の吊し切りである。二五〇グラムのステーキにスープからパン、デザートまで付いて一〇〇〇円、おまけに肉のお代り(一五〇グラム)は何回もできる。私は二枚までお代りしたが、そこでダウン。
コパカバーナにある日本料理屋ではシャブシャブとすき焼きをした。肉が霜降り肉になっていないので、ついうっかりと「松坂肉のようにこいつが霜降りだったら旨いだろうな」と言ったら、仲居さん(日本女性)に笑われた。
「こちらでは、肉が御飯代りのようなもんだから、霜降り肉なんか肉のマシュマロを食べるようなもので、とても毎日は食べられません」
なるほど、そういうことでありますな。