しかし、日本でリオなみの肉食生活を続けたら|忽《たちま》ち破産してしまう。だから私は、東京では専ら牛肉の小間切れか並肉を買う。|不《ま》|味《ず》くはないが、旨いともいえない。そこでちょっとした工夫をする。
まず牛肉をマリネにする漬け汁を作る。材料は玉葱中一個と、できれば紅玉のようなりんご一個をおろし金で摺りおろす。にんにくの好きな人は一かけか二かけを摺りおろすと風味が増す。
摺りおろした玉葱とりんごは深目の皿かバットに入れ、そこに日本酒かワイン(白、赤いずれでもよい)を四分の一カップ(五〇cc)入れて、化学調味料を振る。さらにサラダオイル大さじ三杯、胡麻油一杯を入れてよく混ぜ合わせる。あれば月桂樹の葉一枚、パセリの軸二〜三本、セロリの葉先二〜三本を入れる。
以上の漬け汁のなかに肉を表面が出ないように漬けてラップで包み、半日から一日ほど冷蔵庫に寝かせておく。冷蔵庫に入れておけば、二〜三日そのまま置いてもよい。
食べる三十分ほど前に、食べる分だけ冷蔵庫から肉を取り出して、醤油三、砂糖一の割りで混ぜ、漬け汁をその倍量合わせたなかに、再び一五〜二〇分ほど漬ける。このとき長葱の四センチほどに切ったもの五〜六本と、大人向けには一味唐辛子を振るとよい。調味料の味付は好みで塩梅する。
肉に味が滲みたら、朝鮮焼きコンロかジンギスカン鍋で焼く。なければ、中華鍋かフライパンで汁気をよく切って、油を多い目に落として強火で手早く焼く。さきの長葱やピーマン、えのき茸、生椎茸なども一緒に焼くとよい。砂糖分があるので焦げつきやすいから、鍋はこまめに掃除しながら焼く。
冬のスタミナ料理として若者には最高のおもてなしである。