筍のはしりは毎年、二月の終わりか三月の初旬に徳島から、四国放送の松村氏(故人)に送っていただいた。私はそれを、鳴門名産の若布と一緒に若竹煮[#「若竹煮」に傍点]にして賞味する。このとき、いたずらに菜の花を色どりに添える。初夏の訪れより春の訪れといった方がよいのかもしれない。そして、いよいよ京都長岡京の白子筍の到来である。京都の在の竹林は、私も何度か足を運んだ。丁寧に耕された筍の畑は、竹の落葉が白く、石綿灰が厚く|撒《ま》かれたようで、真冬でも温かさがある。そのためか、ときに、大きな藪蚊にチクリとやられることがある。
地に生えた筍をそのまま蒸し焼きにする「鉄砲やき」を私はまだ味わったことがない。このぜいたくな料理は、その廻りの何十平方メートルかの筍の出る地下茎を駄目にしてしまうというから、まさに大名料理の名にふさわしい。