昔、江戸っ子は女房を質においても食べたというかつお、いまが旬である。
うちの奥さん、妙なご趣味があって、商い上手にすすめられるとついつい無駄買いする。そんなかつおの半身が、二日ほどわが家の冷蔵庫に眠っていた。私だって内儀さんの十分の一ぐらいは売れている役者だから、そう包丁ばかり握ってはいられない。
二日も寝転がっていたかつおは、ちょっと刺し身にする気にはならない。半身を更にふたつ節にとり、血合いを落として皿にとり、粗塩をきつめにふって、日本酒を少々かけて一〇分ほど置いた。そのかつおの節に、小生秘伝のにんにくのミジン切りサラダオイル漬を、小さじ三杯ほど塗りつけた。
にんにくのオイル漬は、にんにくの皮をむいてミジンに刻んでそれを広口瓶に入れ、オリーブ油をヒタヒタまで入れて冷蔵庫に保存しておく。
フライパンを熱してサラダ油大さじ一杯半入れ、長ねぎの捨てるような青い葉先を二、三本敷いて、そのうえに皮目を下にして節を置く。はじめは強火で焼き、焦げ目が軽くついたらにんにくをのせた魚肉を返して、フライパンに蓋をして中弱火で蒸し焼きにする。このとき、五センチほどに切った長ねぎの白い部分を何本か入れる。
にんにくがうっすらと狐色になり魚肉の色が茶色になったら出来あがり。青ねぎが余分な油とにんにくの臭みを消し、結構なかつおのオイル焼きタタキ風になった。白い長ねぎはつけ合わせにする。獅子唐辛子、ピーマンを焼いてつけても結構、失敗のないタタキである。