梅干しは、梅酒のように青梅で作らず、熟して黄ばんだ梅を使う。一晩水に漬けてアク抜きしてから漬けるが、私は梅漬に限って減塩を気にせず、梅一キロに塩二五〇グラムぐらい使う。下手に減塩するとカビの出る恐れがあるからだ。
二〜三日は重しをかけて、日に何べんか漬け込んだ|瓶《かめ》をしずかに振って塩を梅に馴染ませ、軽い重しをかけて土用まで冷暗所に置いてやる。土用干しのときに、澄んだ上澄みの漬け汁を器にとりわける。これが梅白酢である。
梅白酢は瓶に入れ冷蔵庫で保存すると、何年でも使える。私は、食欲のおきないとき、吸物や三杯酢に混ぜる。焼肉、焼魚にふってもいいし、糠味噌の古漬にもふる。
女房が、赤くふっくらとしたやわらかい汁気たっぷりの梅干しを食卓に出した。炊きたてのご飯に乗せてひと口ほおばったら、塩気もほどが好くて旨い。
「どこの梅干しだ」
と女房に聞いたら、
「なに言っているの、貴方が去年漬けた梅干しよ!」
と笑われた。
赤紫蘇の梅干しは、赤紫蘇の葉を塩でよくもみ、黒い汁が出たら固くしぼってアクを出してから、梅白酢でよくもんで紅をだす。その汁気をしぼって梅漬の上にかぶせて、重しをかけて瓶を冷暗所に置く。土用干しのとき、赤紫蘇を固くしぼって梅干しと一緒に干す。
土用干し三日三晩と言うが、私は晴天五日、秋口に入っても天気のよいときには干してやる。土用干しのとき、晴天の夜には夜露にあてる。