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大阪経由17時10分の死者09

时间: 2019-04-25    进入日语论坛
核心提示: だが、初めて訪れた土地での、夜の帷《とばり》とはいえ、迷う場所ではなかった。寺沢隆が足を向けたのは、朝護孫子寺にほかな
(单词翻译:双击或拖选)
 だが、初めて訪れた土地での、夜の帷《とばり》とはいえ、迷う場所ではなかった。寺沢隆が足を向けたのは、朝護孫子寺にほかならなかったからである。
『ホテル信貴』の庭園から出てきた寺沢を、目撃した人間が二人いる。
 目撃者の一人は、開運橋のたもとにある割烹料理屋の仲居だった。
 寺沢は足早に割烹料理屋の前を通り、峡谷にかかる長い橋を渡り、人影のない朝護孫子寺へ向かって、夜桜の向こう側へと消えていったのである。
 夜桜の下の長い参道で、鈍い明かりを点し、どこまでも、どこまでも、びっしりと並んでいる石灯籠。
 まだ、午後七時前だというのに、完全に外来者の行き来が途絶えてしまっている境内。
 その無数につづく、ひっそりとした石灯籠の陰に、影が立っていた。
「あれ?」
 と、影を意識したのは、毎夜、境内を抜けて帰宅する、土産物店の従業員だった。彼が、もう一人の目撃者だ。
 張り子の虎を売る土産物店の従業員は、南の信貴大橋を渡って、反対側から境内に入ってきたのだった。縁日でもない限り、午後六時半が、土産物店の閉店時刻となっている。
 彼は毎夜この時間に、ここを通って、家へ帰る。
『何か、不気味な感じでしたよ。後で考えれば、あれが、殺気というんでしょうかねえ』
 と、これまた、事件が発覚してから、王寺署の刑事に伝えたことである。
『境内で、若い男が女を待っているのは、たまにあるんですが、そうしたムードじゃありませんでしたね』
 身を潜めていた男は土地の人間ではなかった、と、土産物店の従業員は断定している。信貴山では見かけない男だったという。
 影の男は、石の灯籠に同化してしまったかのように、じっとたたずんでいたという。黒っぽいコートを着ており、男にしては長い髪型だった。
 脂気のない髪が、肩の辺りまで垂れているのを、灯籠の薄明かりで、土産物店の従業員は目にしている。
 影の男は開運橋の方にのみ注意しており、反対側からきた�目撃者�には、気付いていなかった。
 影の男は、どこで手折ってきたのか、ソメイヨシノの小枝を口にくわえていた。三分咲きの、花をつけた小枝である。
 そよとも風のない夜だった。影の男を発見した土産物店の従業員は、足が、前へ動かなくなった。彼は多宝塔の手前で息を詰め、数メートル先の参道に目を凝らした。
 影の男が、口にくわえた小枝を、ぷっと吹き飛ばしたのは、開運橋の方向から跫音《あしおと》が近付いてきたときである。
 その跫音が、(後でいくつかのデータを総合すると)寺沢のものだった。
 目撃者の従業員は、思わず知らず両掌を握り締めていた。握り締めた両掌がじっとり汗ばんでいたのは、無意識のうちに緊張していたせいだろう。
 風がないのに、風の音を聞いたように感じたとき、砂利を踏み締めてくる靴音がとまった。
 跫音をぐっと近付けておいて、影が、ひょいと参道へ飛び出してきたのである。
「きみかね」
 という声は、寺沢のものだった。乾いた声だった。
「一家で、奈良・京都の花見旅行とは、羨しい生活だな」
 影は意識的にそうしているのであろう、抑揚を欠いた、低い話し方だった。
 土産物店の従業員から見て、黒っぽいコートのえりを立てた影は、後ろ向きなので、顔かたちまでは分からない。
 ただ、肩の辺りに届く長髪が、印象に残っただけだ。
『芸術家タイプっていうのかな。われわれとは人種が違うようでしたね』
 土産物店の従業員は、刑事の問いに対して、ヘアスタイルの感じを、そうこたえている。
 その彼が耳にした、寺沢と影のやりとりを再現すると、次のような具合になる。
「早く用件を言いたまえ」
「要点は、電話でお伝えした通りです」
「それが分からないから、尋ねている」
「まず、この文庫本を返さなければならない」
「文庫本?」
「寺社の境内でも何だから、下の池へ下りて花見でもしますか」
 影は一歩寺沢に近付くと、
「桜が好きなんだろ。東京から古都まで、わざわざ花見にきたのだろ」
 と、早口で言い、寺沢の肩を押すようにして、歩き出したという。
 土産物店の従業員は、なおもしばらく、多宝塔の裏側で息を殺していたが、二人の跫音が茶店の先を通り、仁王門の外へ消えていくと、初めて、自分を取り戻した。彼はほっとして、改めて帰路についた。
 影の顔を確かめていないとはいえ、この�目撃�は、貴重なものとなった。
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