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大阪経由17時10分の死者21

时间: 2019-04-25    进入日语论坛
核心提示:「一昨日の男は、タクシーに乗るとき、サングラスをかけていましたか」「眼鏡はかけていなかったね。だって、もう暗くなっていた
(单词翻译:双击或拖选)
「一昨日の男は、タクシーに乗るとき、サングラスをかけていましたか」
「眼鏡はかけていなかったね。だって、もう暗くなっていただろう。そんな時間に、サングラスなどかけていたら、かえって目立つんじゃないか」
「肩までもある長髪で、黒っぽいコートを着ていたわけですね」
「さっきも言ったけど、あっしは、犯人の顔をほとんど覚えていないんだ。あの男はサングラスこそかけていなかったが、意識的に、目線が合わないよう、避けていたんだと思うよ」
「顔もよく見ていないのに、男の全体の感じが派手だったとは、どういうことですか」
「ことば付きだよね。それから、ちょっとした仕ぐさ。うん、たばこの吸い方とか、シートで脚を組むようなときの感じが、何となく、テレビに出てくるタレントみたいだったな」
「年齢は、二十代の見当でしたか」
「若い男であったことは間違いない」
「派手な言動だったとして、具体的に、テレビタレントのだれに似ていましたか」
「特定のだれというんじゃない。感じが、何となく芸能人ふうだったというわけさ。第一、顔を確かめてないのだから、だれに似てるなんて言いようがないね」
「男が運転手さんのタクシーに乗るとき、どこからきたか覚えていますか」
「どこからって、電車を降りて、まっすぐタクシー乗り場へやってきたのさ」
 王寺駅前で営業している運転手は、電車の到着時刻を詳しく承知していた。それは関西本線奈良行きの快速で、十八時二十二分到着の電車だった。
「奈良行きということは、男は大阪方面からやってきたってわけですか」
「そういうことだろうね」
 やせ型の運転手は、並ぶと浦上と同じぐらいな背丈だった。
 タクシーを駐車場に置いた二人は、それぞれに小さい傘をさして、人気の少ない夜道を歩いた。
 開運橋のたもとに、割烹料理屋があった。一昨夜、朝護孫子寺へ向かっていく寺沢を目撃したのが、ここの仲居である。
『ホテル信貴』は、割烹料理屋の左寄りになる。峡谷に面して広い庭園があり、庭園の先に、ホテルの明かりが見える。
 昼間は花見客も多いのだろうが、夜になると、ぐっと人影の絶える場所だった。
 浦上と運転手は、朱塗りの橋を渡った。
 犯人の王寺駅到着が十八時二十二分。
「大阪経由か」
 浦上は、さっき書き出した足取りを確かめるようにして、つぶやいていた。
 まさに、そのものずばりではないか。�大阪経由�は、横浜での持ち時間がもっとも多いルートだ。そして、その到着時刻は、浦上の机上の計算に誤りがなかったことを示している。
 問題は、この殺人計画が、どのようにして立てられたのか、ということだ。
 なぜ、大森裕は港の見える丘公園で刺殺され、寺沢隆は朝護孫子寺で狙われたのか。
 犯人が、二人の被害者を呼び出したという点では、共通しているかもしれない。
 大森が「シドモア桜の会」予告記事の切り抜き持参で、横浜へ出かけたのは、墓前祭に列席の意思があったと見るべきだろう。問題は、その、出席の仕方だ。
 予告記事が挟んであった文庫本は、身元不明の「桜」が郵送してきたものであり、文庫本を手にしたとき大森は顔色を変えた、と、大森の妻は証言しているのである。
 大森は、「桜」から届いた文庫本によって呼び出されたという見方ができる。
 しかし、四月二日に開催される「シドモア桜の会」が前提の呼び出しなら、殺人日時の設定は、百パーセント、犯人が意図したものとは言えない。寺沢の場合と、同じようにである。
 寺沢が、家族連れで古都の桜見物にきたのは、寺沢の側の希望によるものだ。
 犯人は、最終的には、二人の被害者をそれぞれに呼び出して、目的を達している。だが、被害者の�行動�に合わせての凶行であるなら、殺人日時は限定されてくる。
 犯人は、限られた状況を、見事に活用したことになろうか。
 たとえば、アリバイ工作などを前提としての、�遠隔殺人�ではないということになる。言って見れば被害者側の�都合�で、こういう結果になったのだ。
(いや、そうじゃないな)
 と、浦上の内面では別のつぶやきも生じていた。
 恐らく犯人は、大森と寺沢が居住する、東京の人間だろう。二人の周囲にいる人間であるなら、東京で、二人を狙うチャンスが皆無というわけではあるまい。
 視点を変えての、新しい考えが、それだった。
 大森も寺沢も、帰宅の遅いことが多かったようだから、夜陰に乗じての犯行も可能だろう。�横浜�はともかくとして、殺人のために�奈良�まで遠出する必要はあるまい。
 被害者側の�都合�に便乗したとはいえ、同じ日に遠く離れた場所で実行したのは、犯人の強固な意志、ということになろう。
(すなわち、完全犯罪か)
 浦上のつぶやきは、声になっていた。
 しかし、二つの死点を結ぶ足取りは、簡単に割れてしまったのだ。
 浦上の計算を裏付けて、犯人は十八時二十二分に、�大阪経由�で、王寺駅に到着している。
 こんなに容易に発見できるのでは、たとえば偽装アリバイなどが用意されていたとしても、
(トリックは鉄道ダイヤではないな)
 と、浦上のつぶやきは、そんなふうにつづいた。
 浦上とタクシーの運転手は、境内に足を踏み入れ、赤門を通った。
 鈍い明かりを放つ無数の石灯籠は、幽玄、という形容がぴったりだった。
 夜桜の参道を占めているのは、静寂だけである。
 浦上は石灯籠の下に立って、腕時計を見た。午後六時四十分になるところだった。土産物店の従業員が、石灯籠の陰に立つ影を、発見した時間帯だ。
 反対方向から、従業員の足音が、そろそろ聞こえてくるのか。
 浦上はそれを期待しながら、小雨が降っていることを除けば、ほとんど一昨夜と同じ状況なのだろうな、と思った。
 それにしても、解せない。
 こんな寂しい場所への呼び出しに応じ、なおかつ、全く無人の大門池まで、寺沢が犯人に先導されていったのはなぜか。
 一流製靴会社の総務部長は、犯人に対して、首を横に振ることのできない、相当な弱味を握られていたのだろうか。
 しかし犯人は、寺沢の弱点を衝いて、金品を要求してきたわけではない。
 山下署の捜査本部は、大森殺しについて、いわば消去法から、動機を「怨恨」と結論付けたが、寺沢の場合も、王寺署の捜査本部が「怨恨」の線で動いているのは、正しい判断ということになろう。
 その場合の問題が、寺沢の行動だ。
 寺沢は、当然、犯人の怒りを承知していたはずだろう。怒りが殺意に直結していることを、予感しなかったのか。
 予感があれば、(いくら呼び出しを拒否できない状況に追い込まれていたとしても)こうした寂しい場所で犯人と待ち合わせ、真っ暗な峡谷へ下りて行くようなことはしなかっただろう。
 そのとき、犯人の影は、寺沢に向かって、こう言っている。
『桜が好きなんだろ。東京から古都まで、わざわざ花見にきたのだろ』
 土産物店の従業員が耳にした、その話しかけの中には、何が隠されているのか。
 いずれにしても、その一言で通じるものが、犯人と寺沢との間にはあったはずだ。�横浜�で殺された大森の方は、「桜」から送られてきた文庫本を見て顔色を変え、�奈良�で刺殺された寺沢は、
『桜が好きなんだろ』
 と、犯人から肩を押されて、桜の木の下の殺人現場へと牽引されていったのだ。
「男は行きと帰りに一回ずつタクシーを降りて、電話をかけたと言いましたね」
 浦上はタクシー運転手の方へ、話を戻した。
 行き掛けの電話は、『ホテル信貴』に入れたものだろう。時間から推しても、食事中の寺沢を呼び出した電話に違いない。
 帰りのそれは、殺人《ころし》の成功を、一刻も早く、だれかに報告したものでもあろうか。
「ああ、行きも帰りも、さっき言った坂下の電話ボックスへ駆けて行ったがね。帰りの方が時間がかかったな」
 と、運転手は言った。
「帰りの電話は、何時頃でしたか」
「駐車場で三十分以上待たされたから、そう、七時半頃だったと思うよ」
「男が話していたことで、記憶に残っているようなものはありませんか」
「あの男がしゃべったのは、用件だけだよ。駐車場で待っていてくれ。電話をするから車をとめてくれって、具合でね。あっしの方から話しかけても、ろくに返事もしなかった」
「当然、男は緊張していたでしょうね」
「いまにして思えばそうだろうけど、あのときは、いやに覚めた男だと思ったね」
「黒っぽいコートのえりなんか立てて、クールで、都会派って感じですか」
「でもよ、こっちも寝覚めはよくないやね。何だか知らないうちに、人殺しの手伝いしたみたいでね」
 運転手の口調が、次第に、重いものに変わってきた。
 その運転手に向かって、崖道を下って、大門池までの案内を、乞うわけにもいかなかった。
 境内と違って崖は真っ暗だし、しっとりと、四月の雨が降りつづいているのである。
 運転手はチップの一万円札を受け取っている手前、露骨に嫌な顔こそしないが、所在なげにたばこをくわえ、口先で玩《もてあそ》ぶようにしている。境内は禁煙なのである。
 浦上はもう一度腕時計を見た。七時になっていた。
 今夜は、土産物店の従業員は雨で早仕舞いして、すでに帰ったあとだろうか。それとも、昨夜からは、参道を避けて、帰宅しているのか。
 浦上はショルダーバッグからカメラを取り出すと、ストロボをたいて、びっしりと石灯籠がつづく、長い参道を撮りまくった。
 フラッシュに浮かび上がる夜桜が、白い塊のように見える。一昨夜よりも、さらに開花が進んでいる。
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