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大阪経由17時10分の死者24

时间: 2019-04-25    进入日语论坛
核心提示: 浦上は、新大阪発九時二十分の、臨時新幹線�ひかり322号�で、帰ってきた。 新横浜到着は、十二時ちょうどである。 横浜
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 浦上は、新大阪発九時二十分の、臨時新幹線�ひかり322号�で、帰ってきた。
 新横浜到着は、十二時ちょうどである。
 横浜も抜けるような青空になっていた。
 浦上は真っ先に、列車を出た。ホームの階段を駆け下りて行くと、改札口に、谷田が大柄な姿を見せていた。
「めしでも食いながら、打ち合わせよう」
 ということで、二人はコンコースに隣接する『オゾン通り』の、日本そば屋に寄った。
 昼食時のそば屋は、満席だった。客は、旅行者よりも、新横浜駅周辺で働くサラリーマンや、OLが多かった。
 二人はざるそばのチケットを買ったものの、席が空くまで、レジの近くに立っていた。
「まず、これを見てもらおうか」
 谷田は、やがて隅のテーブルに案内されると、キャビネに焼いたモノクロ写真を二枚、浦上の前に置いた。どちらも葬儀の写真だった。
 浦上にも見覚えがある一枚は、武蔵野市の葬儀社で営まれた大森家の葬式の、受付周辺を写したスナップだった。
 もう一枚も、葬儀の受付周辺を撮影したもので、これは門の左手に大きな桜の木があるから、寺沢の自宅だ。
 二枚とも、受付係のほかに、数人の参列者がとらえられている。
 谷田は双方の写真の、画面右端を指差し、
「ここに、男性が写っているだろう。これは二枚とも同じ人間だ」
 と、声を低くした。
「同じ人間ですって?」
 浦上は自分の声が、引きつってくるのを感じた。
 谷田は、浦上の反応を確かめてからつづけた。
「この男性こそ、大森と寺沢の接点と言っていいだろう」
「この男が、村田啓という二十七歳の、フリーのカメラマンですか」
「村田啓とは、今日これから、二時に会うことになっている」
 と、谷田はつづけた。
 もちろん、二枚の写真は、昨日、『毎朝日報』の若手記者が、撮影してきたものだ。
 密葬の場に張り込んだ刑事は、不審者のチェックはつづけても、新聞記者のように、めったやたらと写真を撮ることはしない。
「すると先輩、これは毎朝だけの特ダネですか」
「葬式には他社も来ていたそうだが、記者クラブ内での動きから察して、どこも、この村田啓には気が付いていないはずだ」
「毎朝が単独で、捜査本部を追い抜いたってことですか」
「二枚の写真から、村田の顔だけを拡大すると、こうなる」
 谷田は別の二枚を取り出し、さらに捜査本部で配付した似顔絵のコピーを、横に並べて置いた。
「あれ?」
 浦上は拡大写真の方を、手に取った。
 どこかに、釈然としない違和感があると思った。
 すぐに分かった。
 それは、髪型の違いだった。
 似顔絵は、繰り返し見てきたように、肩までもある長髪だが、昨日撮影した写真の方は、長いと言っても耳が隠れるていどだ。
「問題はそれだよ。髪は一昨日の午後、カットしている」
「おとつい? 二件の殺人の、翌日ってことですか」
「一昨日は髪をカットし、昨日は、その少し短くしたヘアスタイルで、両家の密葬に参列しているんだ」
 髪を切ったタイミングが気に要らない、と、谷田は低い声でつづけた。
 すでに、村田啓というカメラマンの周辺を、相当に掘り下げている感じだった。
「どうだい、この二枚の写真の男の髪を肩まで伸ばし、サングラスをかけさせれば、似顔絵に重なってくるだろ」
「そうですね」
 浦上の返事は、しかし、一呼吸置いてのものだった。
 似ていると言えば、言える。どこか違うと思えば、違うようにも感じられる。
 浦上はそう考えたわけだが、次の一瞬、この点は、元となる似顔絵自体が絶対ではないのだから、細部にこだわる必要もないだろう、と、思い直していた。
 いまの場合は、一人の男が双方の葬式に参列していたという�接点�に着眼し、村田啓なるカメラマンを浮き彫りにした、『毎朝日報』の迅速なる行動を評価すべきだろう。
 そして、何よりも留意すべきは、その接点となる村田の風貌が、影の男に似ているということだ。
 村田と影の男が同一人と断定はできなくとも、しかし、別人であると言い切ることもできないのである。
 と、いうのは、村田は、容貌の面でも、犯人の資格を備えているということだ。
 浦上と谷田の、ざるそばが運ばれてきた。
「葬式の写真から、この男を発見したのは、我社《うち》の支局長なんだよ」
 谷田は、ざるそばに箸をつけながら、説明をつづけた。浦上も、『毎朝日報』横浜支局長とは何度か会っている。
「早速、若手を、再度東京へ走らせた。大森家も、寺沢家も、家族は村田を知らなかった」
「村田は仕事で、双方の会社に出入りしてたってことですね」
「そういうことだ。が、残念ながら、三、四時間の取材では、�動機�までは浮かんでこない。しかし、�動機�は見えなくとも、これまで、何ら重なり合う部分がなかった大森と寺沢を、村田が結んでいることだけは事実だ」
 たとえ、風貌、年齢などが、事件周辺で目撃されている黒っぽいコートの男からかけ離れていたとしても、双方の葬儀に出席した唯一の人物なら、ぴったりマークされて当然だ。
「それなんだよ」
 谷田は、浦上のそうした指摘に、満足気だった。村田は、両方の密葬に参列していたのみでなく、外観までが、犯人像に共通しているのである。
「こうなったら、�動機�の追及は後回しだ」
「いつもの捜査とは逆ですね」
「�動機�よりも先に、犯人が特定されるってわけだ。現行犯逮捕みたいなものさ」
 四月二日の土曜日、村田が、昼間横浜におり、夜奈良にいたことが証明されれば、ほとんど決まりと言っていいだろう。
「いや、犯行現場にいたことの証明は要らない」
 谷田は、ざるそばを食べながら、強い口調になっていた。
「アリバイだよ。不在が証明されなければ、オレはその場で、淡路警部に電話をかけるね。捜査本部は、切り札を持っている」
「文庫本の百六十二ページから検出された指紋ですか」
「新聞発表は伏せてあるが、�奈良�の文庫本からも�横浜�と同じ渦状紋はばっちり採取されているわけだ」
「だったら、指紋の線から攻めるのが、最短コースではないですか」
「支局の打ち合わせでも、そうした意見が出た。しかし、正面切って迫るわけにはいかないよ。人権問題がある。万一、村田が本《ほん》犯人《ぼし》でなかったとしたら、大問題だ。取材の行き過ぎは、厳に慎んでいる」
「でも、何も正面切る必要はないでしょう」
 浦上はざるそばを食べ終えた。
 村田を尾行すればいい。村田が立ち寄った喫茶店の、コップなどから指紋を採取する。
 それは常識的な手段ではないか。
「もちろん考えている」
 と、谷田はこたえた。谷田もざるそばを食べ終えた。
「場合によっては、若手を尾行《つけ》させるつもりではいる。だが、確認が相手の行動次第というのでは、時間がままならない」
「それよりか、アリバイというわけですか」
「アリバイがはっきりしなければ、刑事《でか》さんが、真っ向から指紋の提出を求めることができる」
 谷田は、「万一」と口にしたものの、村田|本《ほん》犯人《ぼし》説に確信を持っているようだった。
「出ようか」
 谷田は先に立ち上がった。スクープはもらったという、新聞記者《ぶんや》の目になっていた。
 浦上は新横浜駅の構内から、『週刊広場』編集部へ、帰社予定変更の報告電話を入れた。
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