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大阪経由17時10分の死者29

时间: 2019-04-25    进入日语论坛
核心提示: 結果は、翌四月六日、水曜日の午後に出た。『毎朝日報』の発見を重視した捜査本部は、全力投球の形で、四月二日の搭乗客を追っ
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 結果は、翌四月六日、水曜日の午後に出た。
『毎朝日報』の発見を重視した捜査本部は、全力投球の形で、四月二日の搭乗客を追った。
 当該のボーイング747ジェットは普通席五百十二、スーパーシート十六を備えていたが、満席ではなかった。
 搭乗者総数は四百四十三人。男性が、ほぼ半分の二百三十一人であり、この中から、子供と四十歳以上を除くと、残ったのは五十四人だった。
 この五十四人は、念のために、二十歳から三十九歳までと、年齢幅を大きく広げての対象である。
 捜査本部は昨日の夕方から、搭乗者の連絡先へ向けて、徹底した電話攻勢を取った。
 こうして洗い出された結果を浦上が知ったのは、出前の遅い昼食を終えて、一服やっているときだった。
 浦上は『週刊広場』の編集部にいた。
「駄目だったよ」
 記者クラブから電話をかけてきた谷田の、第一声がそれだった。
「搭乗客は、東京と大阪が大半でね、地方在住が四人いたそうだが、いずれも間違いなく実在しているって話だ」
 がっくりきた感じが声に出ている。
 その五十四人の中に、村田の意を汲んで、偽証している男はいないのか。浦上がそう考えたのは当然だが、
「確認を取ったのは、ベテランの刑事《でか》さんたちだぜ」
 万に一つの見落としもない、と、谷田は言った。
 搭乗を確かめて、「ああそうですか」と電話を切るわけではない。必ず、東京と大阪の空港の模様とか、機内の状況などを聞き出しているという。つい先週のことなので、乗客たちの記憶も薄らいではいない。
「電話の応答では、すっきりしないのが二人いたそうだ。どちらも東京の男でね。これは今朝、刑事《でか》さんが直接先方へ出向いて、念押しのウラを取るということまでやっているんだ」
「そうですか。余計に糸をこんがらからせただけで、動機なき男村田は、結局シロってことですか」
 浦上も、力が抜けたように受話器を持ち換えた。
 電話は簡単に終わった。
 気配を察した編集長が、
(やり直しか)
 といった目で、机越しに浦上を見た。
「浦上ちゃん、しかし(1)から(5)までのルートをきちっと割り出したことは、決して無駄にはならんよ。犯人《ほし》は間違いなく、その五本のうちのいずれかのルートを、渡って行ったのだから、この検証は必ず生きてくる」
 編集長はそんな言い方で、浦上をなぐさめた。
「村田って男は、いい線いってると思ったのだけどなあ」
 浦上は所在ないように、キャスターをくわえた。
 その一本のたばこを吸い終わらないうちに、また机の上の電話が鳴った。
「はいはい」
 くわえたばこの浦上が、投げやりな感じで受話器を取ると、
「おい、おかしなことになったぞ」
 電話は谷田だった。お互い悄然と話を終えてから、五分とは経っていない。
 五分の間に、何が生じたのか。谷田の口調は一転、力強いものに変わっている。
「あのカステラの箱が、ものを言ったぞ」
「何ですって?」
「きみが意図したところとは異なるが、空き箱に着目したのは、正解だった」
「何を持って回った言い方してるんですか。指紋が、渦状紋が出たのですね」
「淡路警部には悪いが、我社《うち》の東京本社の社会部が動いてくれた」
「どうして、神奈川県警を無視したのですか」
「他社の目が、うるさくてね」
「何か、かぎ付かれたのですか」
「大阪行き搭乗客の確認で、捜査本部が目の色変えているのは、毎朝日報に関係ありと、各社に睨《にら》まれたわけだ」
「淡路警部に、接近できなくなったというのですか」
「横浜支局長の意見もあって、木箱の分析は、神奈川県警ではなく、本社の社会部に頼んだ」
 東京本社では、空き箱を科学捜査研究所へ持ち込んだ。
「勝手だけど、事情は明かさずにね、内密に、指紋検出を依頼した」
「で、本《ほん》犯人《ぼし》と一致する渦状紋が、出たのですね」
「そういうことだ。たったいま、本社社会部のデスクから、電話があった」
 犯人の転写指紋は、各社とも入手している。照合は容易だ。
「村田が、渦状紋だってことですか」
「いや、村田は違う」
 谷田の声ははっきりしていた。山下署の捜査本部では、大阪行き搭乗客の確認に並行して、村田の指紋も確認したという。
 捜査本部とすれば、当たり前な処置だろう。これは、村田に面接した刑事が何枚かの似顔絵を提示し、「この中に見覚えのある人間はいないか」と、村田の掌に触れさせることで、指紋採取を図ったのである。
「たまたま、そっちの結果も、いま聞いたところだ」
 と、谷田は言った。
 さっきの谷田と浦上の通話中に、淡路警部からそっと連絡があり、村田の指紋が該当しないことを伝えてきたという。
「そんな矢先に入ってきた、社会部デスクからの電話だ」
 と、話を戻す谷田は、完全に、生色がよみがえっていた。
「村田は、いたずらに、推理の糸をこんがらからせただけではなかったぞ」
 谷田は早口になっている。
「動機もなければ、飛行機にも乗っていない。その上、指紋までが違うとあっては、村田は完璧にシロだ。しかし、とんでもないプレゼントをしてくれたことになる」
「あのカステラの箱は、東田予備校の職員も、何人か触れているのではありませんか」
「ああ、村田ももらい物だと言ってたわけだろ。やたら、数多くの指紋が検出されたそうだ」
「まさか、東田予備校の中に、問題の渦状紋がいるってわけではないでしょうね」
「違うと思うね、これは真新しい指紋じゃない。上げ底の下側から、半ば消えかかった渦状紋が出てきたんだ」
「すると犯人《ほし》は、カステラを販売した、店員という可能性もあるわけですね」
「村田の方は、早速|我社《うち》の若手に当たらせる。あのカステラが、どこをどう渡ってきたか、村田から逆にたどっていこう。いつでも出かけられるようにして、待っていてくれ」
 谷田はそう言って、一方的に電話を切った。
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