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大阪経由17時10分の死者30

时间: 2019-04-25    进入日语论坛
核心提示: 谷田はまだ昼食をとっていなかった。 谷田は若手記者を呼ぶと、「村田がカステラを、いつ、だれからもらったのか、その確認を
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 谷田はまだ昼食をとっていなかった。
 谷田は若手記者を呼ぶと、
「村田がカステラを、いつ、だれからもらったのか、その確認を急いでくれ」
 と、自由が丘行きを指示し、昼食のために、その若手と一緒に記者クラブを出ようとした。電話がかかってきたのはそのときだ。
 横浜支局の受付からだった。支局の方に、客が来ているという。
「客? 急ぎなのかね」
「詩人の、篠塚みや先生です」
「篠塚さんが何だろう」
 谷田は、地元ペンクラブの副会長などをしている女流詩人と面識があった。最近も取材で会っている。
 もっとも、社会部記者の取材だから、文化関係のことではなかった。刑務所の篤志面接委員としてのみやに、陰の苦労話を聞く内容だった。
 これは、すでに先週活字になっている。神奈川版に掲載された時点で、みやにもお礼の電話をかけている。
 谷田が一瞬そうしたことを考えていると、
「もしもし、近くまで来たから、ちょっとのぞいてみたのよ」
 当人の笑声が、受話器を伝わってきた。気さくな女流詩人は、受付の電話を取り、直接谷田に話しかけてきたのだ。
 みやは、本家筋の結婚式に招かれて、山梨県の小淵沢《こぶちざわ》へ出かけたのを機会に、独り、飯山線沿いに信州の温泉めぐりをして、さっき帰宅したところだ、と、それが癖の早口で言った。六十過ぎとは思えない、若い声だった。
「娘の話では、わたしの留守中、山下署の刑事から、電話があったっていうのよね。旅行から帰って、新聞見て港の見える丘公園の事件を知ったのだけどさ、刑事が何か問い合わせてきたのは、大森さんのことじゃないの?」
「ちょ、ちょっと。篠塚さん、殺された大森裕を知っているのですか」
「会ったのは二度かナ。それほど親しくはないけどさ、刑事がわたしに電話してくるなんてどういうことなのか、谷田さんに聞けば何か分かると思ってね。それで、伊勢佐木町で書店やってる友人に信州土産を届けに来たついでに、支局に寄ったってわけ」
「山下署には、連絡したのですか」
「わたし、昔から、警察って、あまり好きじゃないんだナ」
「それはよかった」
 思わず本音が、谷田の口を衝《つ》いて出た。
「詳しいことは、ぼくから説明します。昼めしを一緒にどうですか」
「わたし、お昼食《ひる》は済ませたけど」
 どこへ行けばいいのか、と、みやは訊いた。谷田は、記者クラブと支局の中間に当たる、相生町のレストランを指定して、電話を切った。
(妙なことになってきたぞ)
 谷田は、独りうなずくようにして、記者クラブを出た。
 会社などの仕事関係と、家族関係者を除いて、初めて、被害者を知る人間が現れたのだ。谷田は街路樹の下の舗道を、急ぎ足で歩いた。
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