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大阪経由17時10分の死者37

时间: 2019-04-25    进入日语论坛
核心提示: 翌四月七日、木曜日。 浦上伸介も、谷田実憲も、早起きをした。 JR有楽町駅の、有楽町マリオン側の改札口で待ち合わせたの
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 翌四月七日、木曜日。
 浦上伸介も、谷田実憲も、早起きをした。
 JR有楽町駅の、有楽町マリオン側の改札口で待ち合わせたのが、午前九時である。
 都心はラッシュアワーに入っている。
 浦上も谷田も、こうした混雑する時間に電車に揺られるのは、月に一度、あるかないかだ。浦上はその例の少ない早起きを、四日の間に二度も経験したことになる。
 三日前の月曜日の午前は、大森裕と寺沢隆の自宅を訪ねたわけだが、この日の目的は大森と寺沢の職場に置かれていた。
 今日の訪問は、三日前よりは、ずっと重い意味を持っている。
 
  広告代理店『泰山』雑誌部第二企画課
  株式会社『徳光製靴』総務部
  波木和彦
  仲佐次郎
 
 浦上の取材帳には、順不同なままに、重点取材先が、書き出されている。
 浦上は、改めて取材帳の走り書きをチェックしながら、コーヒーを飲んだ。谷田と立ち寄ったのは、有楽町駅近くのスタンドである。
 二人は、会社へ急ぐサラリーマンやOLの動きが一段落するのを、コーヒーを飲みながら待つことにした。
 取材には一刻も早く着手したい。しかし、それはこっちの勝手であって、始業時では、会社側の応対にも限度があろう。
 波木和彦は、詩人の篠塚みや女史に会って、似顔絵の一人が大森に似ているというヒントを得た。
「でも、それは飽くまでもヒントだろ。どこで、長髪のアーさんが大森と分かったのかな」
 谷田は、昨夜来の繰り返しを、事新しくつぶやいて、アメリカンコーヒーを飲んだ。
 桜は、まだ満開というわけにはいかず、この日も、東京の空は花曇りだった。
『泰山』と『徳光製靴』は、午前中にそれぞれの担当者に面会したい旨の申し入れを済ませている。一方的な申し入れだが、昨夜のうちに、『毎朝日報』横浜支局から電話をかけた。
 同じようにかけた電話に対し、仲佐次郎はこうこたえた。
『おや、カステラの箱のことで、まだ用事があるのですか。ええ、かまいませんよ。明日は午後から新宿のテレビ局へ直行するので、午後早い時間がいいかな。そう、午後一時過ぎに、マンションの方へお電話ください』
 口調も態度も、電話を通じて察する限り、不審を抱かせるものは何もなかった。
 問題は波木和彦だ。
 浦和の電話帳《ハローページ》で調べて、市外電話をかけると、
『昨日から会社の出張で、大阪支店へ出かけています』
 と、妻と名乗る女性がこたえた。今週一杯の出張だという。
 大阪支店まで和彦を追いかけていくことになるか、どうか。それは『泰山』と『徳光製靴』、両社の聞き込み結果と、仲佐のアリバイ如何にかかってくる。
「それにしても、仲佐は落ち着き払っていたな」
 谷田は、昨夜の電話の感触を繰り返した。
「職業柄、対人折衝には慣れているのだろうが、人当たりが良すぎる」
「完全犯罪に、自信を持っているってことでしょうか」
「万一、万が一だよ、仲佐が実行犯でなかったとしても、指紋の一致は不動だ。仲佐が一連の犯行と無関係であるわけはない。仲佐は、二日つづけての新聞記者《ぶんや》の訪問にどう対処するつもりなんだ?」
 谷田はコーヒーを飲み、たばこに火をつけた。
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