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大阪経由17時10分の死者45

时间: 2019-04-25    进入日语论坛
核心提示:「仲佐は、あれでアリバイを主張したつもりでしょうか」「いずれ捜査本部に呼ばれるのは時間の問題だ。そのときも、いまのように
(单词翻译:双击或拖选)
「仲佐は、あれでアリバイを主張したつもりでしょうか」
「いずれ捜査本部に呼ばれるのは時間の問題だ。そのときも、いまのようにこたえるつもりなのだろうな」
「心情は理解できるし、亡姉を偲ぶ気持ちはその通りでしょうが、ただ新潟市内をさまよっていたと言い張るだけでは、子供騙しにもなりませんよ」
「こんなアリバイ工作を打ち出してくるなんて、波木和彦も、仲佐次郎も、凶悪犯でないことの証明だろう」
「兄弟が悪党でないことは、最初から分かっています。凶悪なのは、大森と寺沢です。どう考えたって、一人の女性を、誤って絞殺することはないでしょう」
 浦上伸介は、品川駅前の、モーニングサービスの喫茶店で強調したさっきの意見を繰り返した。
 谷田実憲の方は、ここまでの取材結果を、いつ淡路警部の耳に入れるか、と、そのことを考えている。というのも、浦上が言うところの「子供騙し」みたいな偽アリバイなど、立ち所に崩れると思われたからである。
 浦上と谷田は、喫茶店を出て仲佐と別れると、新宿駅まで戻ってきた。
 副都心のターミナル駅は、いつも混雑している。
「特ダネと言っても、何か、後味が悪く残りそうですね」
「仲佐は最初から、カステラ木箱の取材が、われわれの口実であることを知っていたと思う」
「というのは、この偽アリバイを、それとなく提示するために、われわれの面会に応じたってことになりますか」
「素知らぬ顔でしゃべっていたのは、精一杯の芝居だろう。しかし、動機が何であろうと、さっきも言ったように、殺人《ころし》は殺人《ころし》だ」
「一応、ウラを取りましょう」
 浦上は、構内の電話コーナーの前で足をとめた。
 新潟市の一○四番で電話番号を問い合わせ、改めてカードを差し込むと、○二五二、と『新潟ターミナルホテル』のダイヤルボタンを押した。
「大変恐縮ですが、ご宿泊のお客様のことに関しては、一切おこたえできないことになっております」
 ホテルのフロント係は、浦上の問いかけに対して、事務的なこたえを返してきた。
 だが、それは表向きの、建前だった。
「実は、ぼくは仲佐次郎の実兄です」
 浦上がその場の思い付きで、身元を偽り、
「弟は一週間の予定で、日本海側を旅しているのですが、さっぱり音沙汰がないもので」
 と、適当な理由をつけると、
「お待ちください」
 ホテル側の態度は、あっさりとかわった。
 
  チェックイン=四月一日(金)午後五時二十分
  チェックアウト=四月三日(日)午前九時三十分
 
「仲佐が、新潟ターミナルホテルに二泊していることは事実ですね」
 と、浦上が電話の結果を伝えると、
「二泊することになっていた、と訂正すべきだな」
 と、谷田は言った。
 いずれにしても、一日の夕方と三日の朝、仲佐が『新潟ターミナルホテル』のフロントに立っていたことは間違いあるまい。
 焦点は、犯行日(二日)だ。
「軽くビールでも飲んで、昼食《ひる》とするか」
 と、谷田は浦上のショルダーバッグに目を向けた。
 ショルダーバッグには、取材の必需品である一眼レフのカメラと一緒に、ほとんどいつも、大判の時刻表が入っている。
 ショルダーバッグに向けられた谷田の視線が、ダイヤチェックを指示していた。
 二人はエレベーターに乗り、ステーションビル、マイシティ八階のレストランに寄った。
 日替わりランチを注文し、ビールを飲みながらのチェックは、それほど時間をかけずに終わった。すでに、�横浜�—�奈良�ルートは割り出されているし、犯人が二十一時前に王寺を引き上げたこともはっきりしていたためである。
 
  新潟発 六時二十二分 新幹線�あさひ300号�
  上野着 八時三十一分
  (上野駅構内乗り換え時間十七分+正味五十五分+運転間隔最長十分=一時間二十二分)
  石川町着 九時五十三分頃
  (徒歩十五分)
  港の見える丘公園着 十時八分頃
  犯行 十一時三十分頃
  (以下、(1)大阪経由)
  王寺着 十八時二十二分
 
  犯行 十九時頃
  王寺発 二十時五十六分 JR関西本線快速
  天王寺着 二十一時十四分
  天王寺発 二十一時二十二分頃
  (所要二十九分)
  新大阪着 二十一時五十一分頃
  新大阪発 二十二時六分 寝台特急�つるぎ�
  新潟着 六時四十六分
 
「なるほど、この寝台特急はぴったりだ。終わったな」
 谷田は、浦上が書き出した数字を見詰めて、うまそうに、ビールを飲み干した。
�横浜�—�奈良�ルートは、(1)大阪経由以外でもいいわけである。(3)京都経由でも、(4)南紀白浜空港経由でも、(5)大阪空港経由でも、十八時二十二分までに、王寺駅に到着することができる。
 しかし、空路利用は搭乗申込書が残る。時間に余裕があるのだから、(1)か(3)を使用したと見るのが妥当だろう。
「土曜日は、終日、亡き姉を偲んで、新潟市内を彷徨《ほうこう》していた、か」
「よく言ってくれたものです」
「市内を歩き回っていたのは、終日どころか、二日の朝六時頃から、翌日の朝七時頃までとなるか」
「ホテルのキーはフロントに返さず、当然持って出たのでしょうね」
「きみは今日、これからどうする? オレは支局長とも相談して、どこかへ淡路警部を呼び出すつもりだ。一緒に、横浜へ行くか」
「問題は、もう一つ残っていますね」
「殺された大森と寺沢の接点だろ」
「それをはっきり洗い出さなければ、完全なるスクープとは言えません」
「仲佐次郎と、波木和彦が本《ほん》犯人《ぼし》であるなら、二人に自供《げろ》ってもらうしかないだろう。さっきも言ったように、大森と寺沢はもう生きていない。オレたちには尾行という手段を採ることができない」
「解明の方法は、尾行だけでしょうか」
 浦上はビールのコップを戻し、キャスターに火をつけた。
 何かないか。尾行に代わるべき何か。
 兄弟は似顔絵の類似という、きわめて、あいまいな点から出発したが、こっちは違う。
「アーさん」「イーさん」が、大森と寺沢であることの絶対的な物証、指紋と血液型の一致というデータを確保しているのである。
 すなわち、答は出ているのだ。解答が提示されている以上、方程式がなければならない。方程式、イコール大森と寺沢の接点ということになろう。
 浦上は、脈絡もないままに言った。
「物証から、逆にたどっていけないでしょうか」
「しかし、そのことに、それほどこだわる必要もあるまい」
「じゃ、先輩は、大森と寺沢がどこでどうつながっているか、その点はぼかしたまま、仲佐次郎と波木和彦逮捕のスクープ原稿をまとめるつもりですか」
「もちろん、第一報に勝負をかける。淡路警部に電話を入れる時点で、我社《うち》のクラブの連中は、手分けして執筆開始ということになる」
 日替わり定食がきた。メーンは魚のフライだった。
 浦上はフォークを手にして、
「ぼくは、週刊広場の編集部で結果を待つことにします」
 と、態度を決めた。
 仲佐逮捕の一瞬はカメラに収めたい。ルポライターとすれば当然のことだ。
 しかし、今回の事件では、本当にクローズアップされなければならないものが、他にあるような気がする。
 浦上は、手錠をかけられる仲佐を見る気がしなかった。連行される仲佐に向けてシャッターを切ることに、自分にも整理のつかない抵抗を覚えていた。
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