それぞれ三人ずつの、二組の刑事が急行したのは、三鷹市の牟礼と、世田谷区の北沢だった。そう、目的は大森裕の遺族が住むマンションであり、寺沢隆の遺族が暮らす邸宅だった。
刑事は、家宅捜索令状を携行していた。
いま、大森と寺沢は被害者ではなかった。加害者だった。波木明美殺害の被疑者として家宅捜索《がさいれ》を受けたのである。
浦上は、大森と寺沢の接点について、
『解明の方法は、尾行だけでしょうか』
と、谷田に問いかけたが、家宅捜索こそ、尾行に代わるものだった。
そして、ベテラン刑事は、一時間とかけずに、焦点を絞り込んでいたのである。
二組は密接な電話連絡を取り合いながら、捜索を進めた。
その結果、妙な一致点が出てきた。大森の方は本箱、寺沢の方は手提げ金庫の中から発見されたそれは、池袋にあるアスレチッククラブの会員証と、専用ロッカーのキーだった。
『さあ、夫がそうしたクラブへ通っていたなんて、聞いていませんわ』
二人の未亡人は、異口同音にこたえた。
何かが、匂ってくる。
会員証の住所欄には、それぞれ牟礼と北沢の所番地がその通りにワープロで打たれてあるけれど、双方ともに「大森方」「寺沢方」となっており、氏名欄には、未亡人たちの見も知らない名前が記されてあったのだ。
二人の偽名と見て間違いあるまい。
二組の刑事たちは合流して、池袋のアスレチッククラブへ向かった。
クラブは、東上線池袋駅近くにある、雑居ビルの三階だった。