日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

湖畔の殺人3-3

时间: 2019-04-26    进入日语论坛
核心提示:   3 春先から初夏にかけて、痴漢が多いことは常識となっている。 夜の公園などで、アベックの密会をのぞいたり脅したりす
(单词翻译:双击或拖选)
    3
 
 春先から初夏にかけて、痴漢が多いことは常識となっている。
 夜の公園などで、アベックの密会をのぞいたり脅したりする男が、パトロールの網に引っ掛かるのも、桜が花ひらく春先から増えてくる。
 長かった冬が去り、自然が活動を始めると、人間の欲望も表面に出てくる。
 これは昔から言われていることだが、しかし、山下と長沢の場合は、季節の移ろいには関係がなかった。
「たまらねえな。あのスケ、いい体をしてるぜ」
「おまえ好みのグラマーだな」
「兄貴だって、細いのより太い女のほうが好きなはずだ」
「それにしても、あいつら、いつまでいちゃいちゃしてやがるんだ」
「見物させてもらっただけで別れるには、惜しいスケだぜ」
「ガンづけしてみるか」
 山下は口をあけてチューインガムをかみながら、にたりと笑った。
 山下と長沢は、四つ違いということもあったけれど、山下が「兄貴」と呼ばれているのは、年齢差だけが理由ではなかった。
 二人とも、どこかの組に所属した経験はなかった。
 ただ、横浜駅西口周辺とか、野毛とか伊勢佐木町の盛り場などを、おもしろおかしく遊び歩く仲間《だち》に過ぎなかった。
 しかし、山下のほうが、けた外れに金回りがよかった。
 夜の町を遊び回る山下と長沢が、これまで、金銭を巻き上げるといったような恐喝事件を一度だって起こしていないのも、山下のふところ具合がよかったためである。
 山下は、戸塚区内では代々つづいた、大地主の三男だった。
 先祖伝来の土地は決して手放さないと頑張っていた老父が、周囲の勧めに負けて姿勢を変えた。
 老父は、山林や農地を、次々と大手不動産会社に売却し、財産を三人の子供たちに分け与えた。
 山下は、いわば典型的な、「土地成金の息子」だったわけである。
 高卒後勤めていた、舞岡町のガソリンスタンドもさっさと辞めた。
 山下は、赤いスポーツカーを乗り回すようになった。
 足繁く、歓楽街のポーカーゲーム店などへも出入りするようになった。
 両親が大金の魔力に気付いたときは、もう手遅れだった。
「オレの金を、オレがどう使おうと勝手だろ。オレはもう子供じゃない。家を出て独立する」
 山下は、職もないのに、そう言い残して戸塚の家を出た。
 国道1号線に近い天王町に、2DKのマンションを買った。
 家族から離れ、天王町のマンションに移ってからは、一層、遊びに明け暮れる毎日となった。
 普通の所帯持ちばかりが住むマンションの中で、山下だけが異質だった。
 ポーカーゲーム店で長沢と知り合い、長沢を弟分のようにして連れ歩くことで満足する、奇妙な虚栄心も表面に出てきた。
 遊興費は、もちろんそのすべてを、山下が札びらを切った。
 キャッシュがたっぷりあるから、女にも不自由しない。
 女の体を抱きたくなれば、ソープランドとかクラブのホステスなどのいわばプロを、現金で口説けばいいわけである。
 こうした無軌道な男たちに特有の、婦女暴行といったような行為を、実際に引き起こしていないのもまた、金銭に余裕があったがゆえと言えるだろう。
 しかし、この夜は違った。
 昇治と千佳の執拗なペッティングを見せつけられているうちに、かつてない刺激が、山下と長沢を衝《つ》き上げてきたのである。
 金で買った女からは得られない興奮が、そこに展開されている。
 いつもだと、こうしたのぞきの後の山下と長沢は、福富町のソープランドへでも直行するのだが、いつもとは異なる欲望が渦を巻き始めている。
 昇治と千佳にとって、山下と長沢にのぞかれたのが偶然なら、千佳が、山下と長沢の「好み」の体形であったことも、不幸な偶然だった。
「兄貴よお、オレ一度でいいから、トウシロのスケをやってみたかったんだ」
「野郎のほうを片付けて、女をオレのマンションへ連れ込むか」
「悪くないね。あれだけの体なら、痛め甲斐もあるってものさ」
「ふん、おまえも一端《いつぱし》の口をたたくじゃねえか」
 山下も長沢も、実際には暴力団とは全く無縁であるのに、知らないスナックなどへ飲みに行って、組員を気取ってみせるような一面があった。
 もっとも、実際にやくざ者らしき男たちが現われると、手のひらを返すように表情を変えてしまうのが常であったけれど。
 いずれにしても、そんなことで歪《ゆが》んだ見栄を満たしているというのも、日常生活を見失っている乱れの反映と言えるだろう。
 十代の若者ならともかく、山下のほうは二十代も後半なのである。
 それも、労せずして思わぬ大金が転げ込んできた結果なのだ。
 ねじれた青春だった。
 
 そうした二人の男に見詰められているとも知らずに、堅実な明日を夢見る千佳と昇治は、いつまでも、お互いを確かめ合った。
「そろそろ帰ろうか」
 昇治がそう言って、千佳のジーンズから手を抜いたのは、午後九時を回る頃だったろうか。
 昇治自身の一隅には、もうひとつ満たされないものが残っているけれど、それを夜の公園で発散させるわけにはいかない。
 次の日曜日の、三浦半島行きに期待しようと自らに言い聞かせた。
 昇治はそっと千佳に唇を重ね、それから立ち上がった。
「日ノ出町の駅まで、遠回りして帰ることにしようか」
「うん」
 千佳は逆らわなかった。
 それもいけなかった。
 いつもなら、坂道を下り、市立図書館の横を右に折れ、自動車の往来が多い大通りを帰るのだが、この夜の昇治と千佳は違った。
 逆に公園内の坂道を上がり、野毛山動物園の裏手を通り、市営プールへとつづく道を選んだのだ。
 近くに人家はあるけれど、昼間でも人通りの少ない一角に出た。
 山下と長沢、尾行を開始した二人のオオカミどもにとっては、正におあつらえ向きの場所へ、昇治と千佳は足を向けてしまったわけである。
 革ジャンパーの二人が、ひそかに後をつけてくるとも知らずに、いや、そんなことは全く考えられるわけもなく、千佳と昇治は公園の中の広い舗道を上がった。
 上がり切ったところで、公園を抜けた。
 左に道をとって、人気のない急な坂を下り始めた。
 何かに酔ったようにして、そぞろ歩く昇治と千佳の顔を、なま暖かい風がまともに吹き上げてくる。
「おい待ちなよ。待てってば!」
 背後の錯綜した靴音が、足早に接近してきたのはそのときである。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%