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湖畔の殺人8-4

时间: 2019-04-26    进入日语论坛
核心提示:   4 藤田が、一定の社会生活を踏み外したのは、麻理との出会いが、きっかけとなっている。 それだけは、間違いない。 埼
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 藤田が、一定の社会生活を踏み外したのは、麻理との出会いが、きっかけとなっている。
 それだけは、間違いない。
 埼玉県下の中流の家庭の三男として育ち、東京の私立大学を卒業した藤田は、千代田区に本社を置く商事会社の、平凡なサラリーマンとなった。
 一流ではないが、東証二部に上場されており、世間では知られた会社だった。
 待遇も悪くなかった。
 もし、何事もなければ、藤田はサラリーマンとして、平穏に、定年までつとめ上げることになっていただろう。
 しかし、昼間のおとなしい表情とは裏腹に、夜の藤田は、その歪んだ欲望をおさえることができなかったのだ。
 藤田にとって、それは、先天的なものであったと言えるかもしれぬ。
 藤田は、三十五歳になる今日まで、二度の見合結婚をしている。
 二度とも、一ヵ月と経たないうちに、破局を迎えた。
 異常なまでに、女体を責めつけなければ、燃え上がらなかったためである。
 まともな新妻が、ムチとロープの仕置きに堪えられるわけはない。
(勝手にしやがれ!)
 藤田は、二度目の妻にも逃げられたとき、自暴自棄に陥った。
(どうにでもなりやがれ!)
 こつこつと会社勤めをしていても始まらない、という気持ちになっていた。
 脱サラリーマンということが、一般の人々とは別の意味で、藤田の希望となった。
(金だ!)
 金さえあれば、どのようにでも好きなことができる。
 濁った脳裏でそう考えた。
 新宿歌舞伎町のクラブへ遊びに行って、麻理と知り合ったのが、そうした、もやもやとしていた矢先である。
 今年、二月の初めだった。
 いらだっている藤田は、乱れた酔い方をし、思わず、歪んだ本能がちらついた。
 それを敏感に受けとめたのが、同じ好みを持つ麻理にほかならなかった。
『あたしってねえ、子供の頃から、男の人に責められるのが好きだったの。あたしのマンションにこない? いろんな責め道具があるわよ』
 麻理のほうから、誘いをかけてきた。
 藤田は、その潤んだような麻理の瞳の輝きに、自分の反映を見たと思った。
 こうして二人は、だれにも想像のできない形のセックスによって、結ばれたのだった。
 その夜を境にして、藤田の人生は、暗い坂道を転がり始めた。
 二人のようなセックスに、贅沢《ぜいたく》は欠かせない。
 そのための大金を得たいと考える点でも、藤田と麻理は、初めから一致していたようである。
 藤田が商事会社をやめ、名目だけの株式会社、動くコンビニエンスストア『フジ』を始めたのも、麻理の入れ知恵だった。
(楽をして大金を握るのは、合法的な詐欺に限る)
 麻理は、最初からそうした考え方を持っていたようである。
 長いホステス稼業の間に、客から聞きかじったことが、根底にあったのかもしれない。
 動くコンビニエンスストア『フジ』の設立は、その第一着手だった。
 会社を設立するには、商法に定められた正規の手続きを踏まなければならない。
 しかし、藤田と麻理は、そんなことは無視した。
 申請に必要な総会議事録などは、勝手に作成して、法務局出張所へ、登記のための提出を済ませたのだった。
 それが三月の下旬であり、四月から、二人の�営業�は開始された。
 当然、これは、公正証書原本不実記載、同行使の罪に問われるわけであるが、そんなことにかまっている藤田と麻理ではなかった。
 二人は、早速、出資者を求めての宣伝にとりかかった。
 主として、地方新聞を利用したのであるけれども、
『生鮮食料品を産地から消費者に直結』
 をキャッチフレーズとして、出資を勧誘したのだった。
『新聞の広告代だって、ばかにはならないぜ。こんなことが、うまくいくのかな』
『世の中には、カモが少なくないのよ。慌てないことね』
 麻理は、妙に自信たっぷりだった。
『あんた、インチキ通信販売で大儲けした話、聞いたことないの?』
 と、しゃべったりもした。
 そして、果たせるかな、広告を繰り返すうちに、机一つを借りただけの神田の事務所に、問い合わせの手紙が舞い込むようになったのである。
『これからが、腕の見せどころよ』
 麻理は得意満面だった。
 麻理と藤田は、それがたとえ九州であろうと、四国であろうと、手紙の主を求めて飛んで行った。
 そして、出資を希望するのが、その土地の人だけであるかのように、切り出すのだ。
『実は、当地に流通センターを設立することになりましてねえ』
 売り上げの二十五パーセントを、配当するというふれ込みだった。
 市の商工会議所の、全面的なバックアップを受けている、と、ことば巧みに並べ立てるのである。
『本格的に活動するのは来年の四月からですが、登記の手続き上、出資のほうは年内に締め切らせていただきます』
 こんなうそは、ちょっと調べれば、すぐに見抜けるはずだ。
 しかし、藤田と麻理の計画は、着々と成功していった。
 商法に疎《うと》い未亡人を、重点的に選んでいたためだろう。
 小金を持つ人間が、二十五パーセントの配当に目を奪われたとしても、無理とは言えまい。
 しかも、出資希望者はいくらでもおり、予定額に達したら申し込みは打ち切る、と、駆け引き十分に急《せ》かすのである。
 これが、人間のおかしな一面だが、新聞などでいくら詐欺事件が報道されても、自分だけは別だという本能的な盲信がある。
 こうして、十一月までの七ヵ月間に、四十三人の未亡人や主婦たちから、驚くなかれ、八千七百万円余りを、藤田と麻理は巻き上げたのだった。
 二人は、隠れ家用に代官山のマンションを借り、ホワイトのカローラを買った。
 四月になれば、嫌でも、藤田と麻理の犯罪は明るみに出る。
『それまでに、キャッシュをもっともっと掻《か》き集めなければ』
 と、二人は話し合い、労せずして得た大金を数えながら、マンションの閉ざされた一室で、セックスプレーを楽しんできた。
 
『四月以前にことが発覚して、大騒ぎになったりしないだろうな』
『何言ってるのよ。そのために、出資者たちの横の連絡を絶ってきたのじゃなくて?』
 その点でも、麻理は抜かりがなかった。
 出資希望者が殺到しているので、具体的な発足を見るまで、
『あなたの参加は内密にして欲しい』
 と、もっともらしく、一人一人に念を押しているのである。
 従って、本来なら形式的にしろ開かれなければならないはずの設立説明会も、省略したままになっている。
 何とも、ひどい話だ。
 出資者のだれか一人が、不審を抱かない限り、藤田と麻理は、十分な時間的余裕を持って、逃亡計画を立てられる、というわけだ。
 しかし、その一人が現われたのである。
 それが、徳島市に住む、田中紀江にほかならなかった。
 紀江は、この幽霊会社に、三百万円を�投資�させられていた。
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