「浦上ちゃん、ご苦労さん。朝は弱いのに随分早くから動いていたんだね」
編集長は機嫌がよかった。キャッチした情報《ねた》が新鮮なら、編集長の声も甲高くなってくる。
「他の週刊誌もやってくるだろう。そこまでつかんだのなら、横手取材は、早いほうがいい」
「そのつもりです。これから上野へ直行します」
と、浦上はこたえた。
取材慣れのしている浦上は、いつでも、出張の用意ができている。
「浦上ちゃん、取材費のほうは大丈夫かい。上野へ行く前に、社へ寄っていくか」
「持ち合わせで、何とかなるでしょう。向こうに着いて、宿が決まったら、編集部へ電話を入れます」
浦上は受話器を戻すと、一眼レフのカメラなどが入ったショルダーバッグを手にして、菊名駅の改札口を通って上野へ向かった。