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寝台急行銀河の殺意5-4

时间: 2019-04-26    进入日语论坛
核心提示:「あたし、京都で�銀河�を降りてから、一応、白井さんの大津の実家へ電話を入れてみました」 と、美穂子は言った。 前夜『ル
(单词翻译:双击或拖选)
「あたし、京都で�銀河�を降りてから、一応、白井さんの大津の実家へ電話を入れてみました」
 と、美穂子は言った。
 前夜『ルアンダ』で、白井の緊迫した電話を受けたときは気が動転して思い到らなかったが、ひょっとして、実家に何かの連絡が入っているかもしれないと思いまして、と、美穂子はつづけた。
「名前を言わなかった女性の電話は、やはりあなたでしたか」
「自分を名乗りようもありませんわ。表立った婚約者ではなかったのですから、先方では、あたしの名前など知らないでしょう」
「翌日、二十六日の夕方にも、あなたは大津の実家へ電話をかけていますね」
「まる二日間、紅葉の下を捜し歩いたのに、まったく手がかりがつかめなかったからですわ」
 この二本の電話も、美穂子のほうから説明されてみると、筋道が通っていると言えよう。
 どうしても白井の行方が分からないのなら、実家に尋ねてみるのは当然であり、問い合わせないほうが、むしろ不自然だ。
(どこをどう突っついても、ぼろを出さない女か)
 谷田はたばこを消した。
 一呼吸置いてから、尋ねた。
「実際には、白井は京都とは方角違いもいいところ、横手に潜伏していたわけですね。白井が目にしていたのは、京都ではなく、東北の紅葉ではありませんか」
「いえ、あたしに電話を寄越した二十四日の夜、白井さんが京都にいたのは間違いないと思います」
「根拠は何ですか」
「少なくとも翌日、二十五日の午後、白井さんは京都市内にいましたから」
「ほう、目撃者を見つけ出したのですか。目撃者の、身元は確かですか」
 谷田は、半ば無意識のうちに、
(目撃者を仕立てて、�京都からの電話�にリアリティーを持たせるつもりか)
 という表情になっていた。
 だが、美穂子が提示したのは、目撃者ではなかった。
「実は、あたしが京都から戻ってくると、これが届いていました」
 美穂子はポシェットから、一枚の絵はがきを取り出し、
「どうぞ、ご覧になってください」
 テーブル越しに、谷田に手渡した。
 大原女《おはらめ》の絵はがきだった。絵はがきなので、文面は短い。
 
  こんなことをつづけていて、いいのだろうか。先が見えなくなってきた。京都の紅葉も、今年は、やけに遠いものに感じられる。(京都にて、白井保雄)
 
�京都からの電話�がうそではないと裏付けるような、絶望的な文章だ。
 ここまで取材を進めてきた谷田の立場からみれば、「こんなことをつづけていて、いいのだろうか」とは、『ホクエツ』の売上げ金流用を指すのだろう。
 そして、それが、美穂子あてであることを考えると、この文章は、公金横領の陰に美穂子が存在することの、立派な証明と言えるのではないか。
 また、「先が見えなくなってきた」とは、現金を預金通帳に戻さなければならない十一月十九日を過ぎても、一億四千万円が回収できなかったことを意味しよう。
 好きなように美穂子に操られた白井は、小心なだけに抵抗も敵《かな》わず死の淵に追い詰められ、「京都の紅葉も、今年は、やけに遠いものに感じられる」ということになったか。
 谷田は、自分の推理を確認するために、もう一度、短い文章を読んだ。
 美穂子は、しかし、谷田の推理など関係ないかのように、
「ここを見てください」
 絵はがきの消し印を指差した。
 二十円切手が二枚と一円切手が一枚貼られてあり、消し印には、「京都中央」「89・11・25」「12〜18」「KYOTO」などの文字が見える。
 すなわち、この絵はがきは、今年の十一月二十五日、十二時から十八時の間に、京都中央郵便局管内で投函されたものであることを示している。
 これが、美穂子が指摘するところの、白井が十一月二十五日に、京都にいたことの証明だった。
「そうですか。こんなものが届いたのですか」
 谷田は絵はがきをテーブルに置いた。
 絵はがきの左下には、記念スタンプが押してあった。三千院《さんぜんいん》近くの、『高天《たかま》』という茶屋のスタンプだ。
 すると白井は、洛西ではなく、洛北《らくほく》の紅葉の下にいたのか。
「あたしは、高尾から嵯峨野、嵐山のコースばかり考えていました」
 美穂子は言った。
「あのときはそうでしょうが、この絵はがきを受け取ってから、大原へ行きましたか」
 谷田が尋ねると、もちろん、と、美穂子はこたえ、そのために『ルアンダ』を休み、マンションを留守にしたりしていたのだが、
「手がかりは、まったくありませんでしたわ」
 顔を振った。
 そうこうするうちに、十二月三日の朝刊で、白井が横手で毒殺されていたことと、一億四千万円の横領を知ったという美穂子の説明だった。
「テレビや新聞で報道されてから、今日でまだ二日目でしょう。刑事さんには、いろいろ言われましたが、簡単に、心の整理などつくわけがありませんわ」
 美穂子は小声になった。
(この女は、すべて、百も承知のくせに、この顔で押し通すつもりなのか)
 谷田は、自分の中でつぶやいてから、質問を重ねた。
「この絵はがきは、白井の筆跡に、間違いありませんか」
「間違いないと思いますが、あたし以外に確認が必要なら、ホクエツの同僚に見ていただいたらどうかしら」
「しばらく、預らせてくれますか」
「よろしく、お願いします」
 美穂子は白い指先で、テーブルの上の絵はがきを、谷田のほうへ押し出してきた。
「あたし、刑事さんというと、取っ付きにくくて、思うように話ができないのです」
「だれでも、そうですよ」
「これからも、何かありましたら、相談に乗ってください。お願いします」
 美穂子は一礼して席を立った。
 二人は、喫茶店を出たところで、右と左に別れた。
「彼女、結局は、殺人日のアリバイを告げに来たのか」
 谷田が思わず声に出してつぶやいたのは、馬車道の交差点を渡るときだった。
 谷田はそのまま混雑する舗道を歩いて、『ホクエツ』本社に行った。
 
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