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寝台急行銀河の殺意6-2

时间: 2019-04-26    进入日语论坛
核心提示:「そうか。例の電話をかけてきたのは、別れた亭主の千葉でもなければ、殺された白井のギャンブル仲間、本島でもなかったってわけ
(单词翻译:双击或拖选)
「そうか。例の電話をかけてきたのは、別れた亭主の千葉でもなければ、殺された白井のギャンブル仲間、本島でもなかったってわけか」
 谷田の、受話器を伝わってくる声が弾んでいる。
 谷田は今日も早出だった。
「真犯人《ほんぼし》は美穂子で動かない。こうなってみると、それは決定的だろう。しかし、電話だけでは弱いな」
「状況証拠に過ぎないというのですか」
「美穂子のマンションを家宅捜査《がさいれ》して、一億四千万円が出てくれば文句なしだが、あれだけ気の回る女が、すぐに発見される場所へ、札束を隠しておくわけもあるまい」
 谷田がスクープを前にして、慎重になるのは当然だろうが、
「共犯なし。美穂子の単独犯行説には、オレも両手《もろて》を上げて賛成だ」
 その点は浦上に同意した。
「考えてみれば、刺殺や絞殺じゃない。犯行は毒殺だからね。女でも、十分に実行できる」
「待ってくださいよ」
 浦上がはっとして受話器を持ち直したのは、谷田の、その一言を耳にしてからである。
 浦上は、そこが駅ビル『グリーン・グリーン』につづく人込みであるのも無視して、口走っていた。
「先輩、物証が出るかもしれませんよ。いえ、必ず見つかると思います!」
「どうした?」
「美穂子が、町工場へしげしげと出入りしていた目的は、工作電話の他に、もう一つあったはずです。いや、本当の眼目は、こっちだったのかもしれません!」
 縁台の三人に問いかけたときは、工場の休憩時間中に美穂子の日常を聞き出そうと、その一点にのみ、浦上の神経は集中していた。その結果として、電話工作という大きい収穫が抽出されたわけであるが、その一方で、一つの見落としがあった。
 いや、これは見損じとは違うかもしれない。こちらの姿勢が、それを捕らえるだけの順序を踏んでいなかった、というのが正確だろう。
 町工場は、業務内容を隠していたわけではないのだから。
「読み筋に入っていなかっただけのことですが、ヨセの構図が浮かべば、当然見えてくる攻め手順です」
 得意の将棋用語で出た。
「いらいらさせるな。攻めの手筋は何だ!」
 谷田の声が大きくなった。
「先輩、二俣製作所は、メッキ工場です」
「何だと?」
「メッキ工場に、青酸ソーダは不可欠です」
「白井に飲ませた青酸ソーダを、美穂子は二俣製作所で入手したというのか」
「他に考えられますか」
 浦上の声に自信が籠もった。
 浦上は、これまでにも何度か取材しているので、承知している。小さい町工場などでは、劇薬の管理が意外に杜撰《ずさん》なのである。
 慣れが招く、無警戒ともいえようか。浦上が取材した範囲では、特に作業中、保管ケースの施錠されていない工場がほとんどだった。
 浦上は、もう一度、受話器を持ち換えた。
「青酸ソーダを調達した先が、二俣製作所であるなら、保管ケースのどこかに、美穂子の指紋が残っているはずです」
「それが、きみの言う物証か」
「工場で働く三人の目を盗んで、持ち出すわけでしょう。何気なくおしゃべりに立ち寄ったとき、手袋などしていれば怪しまれます」
「致死量は○・○五グラムだったな」
「保管ケースに接近さえすれば、盗み出すのは造作もありません」
「きみ、これからどうする?」
「鑑識の到着を、二俣川でお待ちしましょう」
 浦上の口調が、ようやく平常に戻った。
「分かった。淡路警部に会ってくる」
 電話は、谷田のほうから切った。
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