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寝台急行銀河の殺意7-1

时间: 2019-04-26    进入日语论坛
核心提示: 浦上は関内駅を出ると、マリナード地下街を通って、伊勢佐木町へ抜けた。 師走の街は、急に夜になっている。 しかし、ハマの
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 浦上は関内駅を出ると、マリナード地下街を通って、伊勢佐木町へ抜けた。
 師走の街は、急に夜になっている。
 しかし、ハマの中心地、イセザキモールは、昼間と変わらないほどに、人出が多い。
 電話ボックスを初めとして、通りの飾り付けがエキゾチックなのは、港町ヨコハマの伝統が生きているせいだろう。
 浦上は若者の姿が目出つ舗道をぶらぶらと歩き、Laox横浜の先を右に折れた。
『さち』が入っている雑居ビルは、福富町だった。エイトセンタービルの二階である。
 四十過ぎと思われる美人のママのほかに、女の子が二人。カウンター主体で、ボックス席が二つという、こぢんまりとした酒場だ。
 少し時間が早いかとも考えたが、階段を上がって行くと、すでにカウンターで、学校の教師といった感じの中年男性が三人、水割りを飲んでいた。
 常連客が多い店だった。
「いらっしゃい、浦上さんですね」
 カウンターの中のママが、親しげな笑みを浮かべた。ずっと前に一度寄っただけなのに、顔と名前を覚えていてくれたのかな、と、浦上は恐縮したが、そうではなかった。
「いま、谷田さんから電話がありましたわ。三十分ほど遅れますって」
 ママはそう言って、谷田のボトルをカウンターに載せた。
 古い客たちから「さっちゃん」と呼ばれている彼女は、色白で、アットホームな雰囲気のママだった。
「週刊誌のお仕事って、新聞記者とは別なご苦労があるのでしょ」
 ママはお愛想を言って、水割りを出してくれた。
 結局、谷田は小一時間ほど遅れた。カウンターが常連客で埋まる頃になって、谷田はようやく大柄な姿を見せた。
「今夜は、浦上と密談があるんでね」
 谷田はママに断わって、奥のボックス席に腰を下ろした。
 谷田が遅れてきたのは、もちろん、淡路警部に食い下がっていたためである。
「警部を引っ張り出すどころではなかった。これから、横手北署の捜査本部と、フルに警察電話を使っての、捜査会議だってよ」
 谷田は浦上と向かい合うと、オードブルを持ってきた女の子を遠ざけ、自ら水割りを作った。
 浦上も、自分の手で水割りを追加する。
「先輩、問題は美穂子のアリバイですか」
「ああ、電話で言ったとおりだ」
「アリバイは、後で崩せばいいでしょう。指紋が一致したのに、どうして、横手の捜査本部では、美穂子の逮捕をためらっているのですか」
「指紋だけでは、公判を維持するのが難しい。そういう判断だな」
「さっき、二俣製作所の検証のとき、横手の部長刑事《でかちよう》さん、渋い顔をしてぼくを見ていましたが、まさか、ルポライターに出し抜かれたことを、こだわっているのではないでしょうね」
「感情的には、焦燥が尾を引いているかもしれない。だが、ことは殺人事件だぜ。メンツに捕らわれている場合じゃあるまい」
「じゃ、なぜ、刑事《でか》さんたちは、指紋の一致を決め手にしないのですか」
「美穂子って女が一筋縄でいかないのは、オレたちの想像以上らしい」
 谷田は、最初の一杯は軽く飲み干し、ウイスキーのボトルに手を伸ばした。
「彼女、指紋を突き付けられても、顔色一つ変えなかったそうだ」
「ぴくりともせずに、否定したのですか」
「否定できるわけはないだろう。二俣製作所で採取してきた渦状紋を、白井の絵はがきから検出した渦状紋と、二点そろえて、叩き付けてやったのだからな」
 否定する代わりに、美穂子は、
『あたし、工場の方に内緒で、あの保管ケースを開けたことがあります』
 平然と言ってのけたというのである。
「口実は、劇薬に対しての、単なる興味というのだがね。美穂子は保管ケースを開けて、青酸ソーダのびんを、明かりにかざしてみたというんだ」
「かざしただけ? そんな言い逃れを通したのですか」
「残念ながら、あの町工場、毎回の使用量や残量チェックがいい加減でね、はっきりしないんだよ」
「青酸ソーダを持ち出した確証が、得られないわけですか」
「美穂子自身が、青酸ソーダのびんに触れたことをはっきり認めている。だから、保管ケースから彼女の指紋が出てくるのは当たり前ということになるし、工場側の残量チェックがあいまいでは、いかに限りなくクロっぽくても、美穂子が盗み出した証明《うら》が取れない」
「だったら、�工作電話�を抱き合わせたらいいでしょう。二俣製作所の工員さんの証言で、逮捕に漕《こ》ぎ着けることができると思いますけどね」
「あれは、オレも指摘したように、状況証拠だ。指紋以上に、言い逃れが可能だろう」
「やけに慎重なんですね」
「もちろん、きみの発見が無視されるはずはない。淡路警部は、あの�工作電話�を、傍証の切り札にしたい考えのようだ」
 とどのつまり、クローズアップされてくるのが、紅葉の京都を舞台とするアリバイ、ということになる。
 あのアリバイがあればこそ、興味本位で青酸ソーダのびんに触れたという、子供|騙《だま》しみたいな弁明も通ってくるし、�工作電話�の追及も、逡巡される結果となる。
「また、厄介なアリバイ崩しだ。淡路警部は、浦上さんによろしくと、真顔で言ってたぞ」
「真顔なら、データは全部提供してくれたのでしょうね」
「オレが、警部以上のデータを持っている」
「そりゃそうだ。先輩は渦の中心にいるアリバイ証人ですからね」
「それだけじゃない。オレは、あの美人の相談相手だ」
�相談相手�は、親切心を全面に押し出して、昨日につづいての、美穂子の取材を終えていた。美穂子が二俣川署から帰宅したことを知ると、谷田は直ちに、『コーポ羽沢』三十二号室へ長い電話を入れているのである。
「オレも妙なことになったよ。話を聞けば聞くほど、オレは美穂子の力になってしまう立場だ」
「だって先輩は、お力になりますよ、とそう言って、嵐山で彼女に名刺を渡したのでしょ」
「冗談言ってる場合じゃないぞ」
 谷田は、こんなの初めてだと吐息して、取材帳をテーブルに広げた。
「きみはこの間、四国で犯人にされかかったが(『松山着18時15分の死者』講談社文庫所収)、滅多に旅行などしないオレが、こんな目に遇うとは泣けてくる」
「でも、飽くまでも偶然でしょ。偶然の出会いでこういう結果になった」
「そりゃ、そうだ。オレとワイフが、あの時間に、京都駅前のタクシー乗り場にいなければ、別のだれかが、美女割り込みの、目撃証人にされていただろう」
「派手な演出ですね」
 浦上は、水割りのグラスを戻した。
 自分を強く印象付けるために、タクシー待ちという大勢の行列の前で演じてみせた、�割り込み乗車"。
 タクシー乗り場には誘導員もいたことだし、複数の乗客という目撃者が用意されれば、後の捜査で、ばっちり、美穂子の存在は証明される。
 その上、�割り込み�の際の当事者ともいうべき、谷田夫婦と、宿泊先のホテルまで一緒とあっては、美穂子が、文句なしに、谷田夫婦を次の�存在証明�に利用してくるのは当然だろう。
「そうだな。京都東急ホテルでは、彼女のほうから先に、オレたち夫婦を見つけたのだからな」
 谷田は二、三度うなずき、ベルボーイと観光タクシーの相談をしていたとき、すぐ背後に、美穂子が立っていたことを言った。
「それですね。彼女が先輩たちと同じルートで洛西の紅葉《もみじ》狩りをしたのは、これは、今度は偶然じゃない」
「意図的に、紅葉の下でオレたち夫婦の前に見え隠れして、人捜しのふりをしたか」
「嵐山で、先輩が声をかけなければ、最終的に、先方からアタックしてきたに違いありません」
「しかし、なぜ京都なんだ?」
「それは分かりませんが、先輩夫婦と出会う偶然がなければ、今頃、別のだれかが美穂子のアリバイ証人として、捜査本部の尋問に応じていたでしょうね」
 美穂子は、どうして、そんなにまでして、アリバイ証人を必要とするのか。
「前に、別の事件《やま》でも経験していますが、それはすなわち、当人にアリバイがないってことですね」
「それこそ状況証拠だが、この一点から推しても、美穂子が真犯人《ほんぼし》ということになってくるか」
「でも先輩、美穂子の作為がいかに見え見えでも、先輩の目撃自体は、何かのトリックに乗せられているわけではないですよね」
 浦上は、テーブルに置かれた谷田の取材帳に目を向けた。
 かつて浦上が、寝台特急�さくら�でアリバイ証人に仕立てられたときは(『寝台特急㈶時間・分の死角』講談社文庫所収)、前提に一応の工作があった。犯人が弄《ろう》したのは、ちょっとした盲点を衝《つ》くトリックだった。
 だが、今回の谷田の場合は違う。(美穂子の接近の仕方が意図的であったとはいえ)谷田の証言自体には、何の仕掛けも施されてはいない。
 終始、妻の郁恵も一緒だった。言うまでもなく、郁恵もまた立派な証人だ。
「偽アリバイは結構だが、共犯なしで、どうすれば、横手の殺人《ころし》が可能なんだ?」
 谷田はぶつぶつつぶやきながら、記憶を整理する。ポイントとなるのは、四点だった。
 
 (1) 十一月二十五日(土)午後二時頃 京都駅烏丸口タクシー乗り場
 (2) 同日午後四時頃 『京都東急ホテル』地下一階ロビー
 (3) 十一月二十六日(日)午前十時頃 清滝川渓谷高尾橋付近
 (4) 同日午後三時半頃 嵐山保津川下り船着き場付近
 
 谷田は(1)で美穂子と出会い、(4)で美穂子と別れたわけである。
「仕掛けがあるとすれば、(2)と(3)の間かな」
 浦上は、書き出されたメモを見て、考えた。
 (1)と(2)の間、(3)と(4)の間での京都脱出は不可能だろうが、(2)と(3)の間では、ざっと十八時間が自由になる。
『京都東急ホテル』での宿泊偽装工作に成功すれば、この十八時間を、利用できるのではないか。浦上の考えたのが、それだった。
 もっとも、(3)の目撃現場は高尾の山中だから、京都市内から清滝川渓谷までの所要時間を差し引かなければならない。
 余裕を見て、(2)と(3)の間で自由にできるのは、十七時間ということになろうか。
「殺人時間の、特定が先決ですね」
 浦上は、二杯の新しい水割りを作ってから言った。
 司法解剖の結果は、十一月二十五日午前〜十一月二十六日午前となっているが、白井の筆跡に間違いない絵はがきが出てきたことで、死亡推定時刻は、ぐっと短縮されてきた。
「これだね」
 谷田は、淡路警部から取り戻してきた問題の絵はがきを、取材帳に並べて置き、消し印を指差した。二十円切手二枚と一円切手にかかる消し印が、白井がいつまで存在していたかを証明している。
 三千院近くの茶屋、『高天《たかま》』の記念スタンプを押した絵はがきが、京都中央郵便局管内で投函されたのは、十一月二十五日の十二時から十八時までの間だ。
「千葉」と名乗って、十一月二十一日に横手の『藤森アパート』に入居した白井が、なぜ二十五日に京都にいたのか。
 美穂子が、前夜の最終寝台急行�銀河�で京都へ向かったことと同様、現状では、なぞもいいところだ。
 美穂子のほうは、白井から電話をもらったことで横浜を出発した、と、言い繕《つくろ》っているわけだが、白井の�絶望電話�というのが、単なる口実であるのか。それとも、一億四千万円を巡る背景《うら》があるのかどうか、いまはまったく分からない。
 ともあれ、提示された�時間�を整理するのが、先だった。
 白井の、ぎりぎりまでの生存時間が認定されて、初めて、容疑者のアリバイ崩し、となる。
「おい、時刻表を出さんかい」
 谷田はピース・ライトに火をつけた。
 白井の足取りを書き出す上で、留意すべきは、あらゆる状況から判断して、死体の発見された『藤森アパート』が、凶行現場に間違いないという、鑑識結果だ。
 横手以外の土地で殺害しての死体移動、なんて事態になれば、�時間�配分も乱れてくる。
 だが、白井は死体ではなく、生きている状態で、京都から秋田へと移動しているのである。これは、司法検視の段階で、横手北署の捜査本部が明確にしている事実だ。
 では、白井は、横手へ何時に到着したのか。
 絵はがきの消し印からいけば、京都出発は、もっとも早くても、十二時少し過ぎということになろう。
 浦上はショルダーバッグから、秋田の分県地図、取材帳、時刻表の順に取り出した。
 取材用カメラなどとともに、必ずバッグに入れてあるのが、詰め将棋のポケットブックと時刻表だ。時刻表もまた、浦上の愛読書と言っていい。ただし、いまの場合の時刻表は、無論犯行時、先月のものである。
 浦上は慣れた仕ぐさで、時刻表のページを繰っていく。
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