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寝台急行銀河の殺意8-4

时间: 2019-04-26    进入日语论坛
核心提示: 浦上は新横浜駅で下車すると、混雑する構内を歩いて、『アスティ』の中の焼鳥レストラン『焼鳥倶楽部』へ行った。 谷田は一足
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 浦上は新横浜駅で下車すると、混雑する構内を歩いて、『アスティ』の中の焼鳥レストラン『焼鳥倶楽部』へ行った。
 谷田は一足先に来ており、奥のテーブルでビールを飲んでいた。二人は、前にもこの店で、取材結果を検討している。
 店はほぼ満席だった。勤め帰りのサラリーマンの他に、場所柄から言って、旅行者の姿も見える。
「十一月二十五日十九時十五分�以後�の仮説は、一日で全面訂正か。しかし、これは結構なことだ」
 谷田は笑顔で、浦上を迎えた。
「先輩、�以後�ではなく、�以前�の殺人《ころし》だったとすると、問題の納豆やみそ汁は、普通に、朝食用だったことになるかもしれませんね」
 浦上がそう言って腰を下ろすと、
「うん、毒殺は、二十五日の朝で決まりだな」
 谷田はうなずいた。
 殺人《ころし》の部屋に電灯がついていたのは、捜査本部が言うように、異変発見を遅らせるためと、犯行が二十五日の夜であると強調するためのものであっただろう。
「ご苦労さん」
 とりあえず、ビールのコップを合わせての乾杯となった。
 だが、一歩前進とはいえ、まだ、ビールを気持ちよく飲める段階ではなかった。
「おい、消し印から推して、絵はがきの投函者も美穂子で動かないな」
 こうなってみると、投函可能な時間に京都にいたことも、美穂子にとっては墓穴となったわけだ、と、谷田は勢い込んだが、今度はそれが、新しい壁になった。
 十一月二十五日の十二時から十八時という消し印の時間内に、美穂子が京都にいたことは間違いない。谷田がメモしたところの目撃タイム、(1)と(2)がそれである。
 二十五日十九時十五分�以後�が消えたいま、問題となるのは、(1)だ。すなわち、京都駅烏丸口タクシー乗り場、午後二時。
 横手での犯行が二十五日の朝であったとしたら、美穂子は、どのようなルートを辿《たど》って、同じ日の午後二時までに京都へやってきたのか。
 そして、それより先に解決しなければならない大前提が、犯行現場横手への、交通《あし》の割り出しということになる。
 殺人前夜、美穂子が横浜を後にして旅に出たのは事実だ。
 しかし、美穂子が乗車したのは、横手へ行く列車ではない。美穂子は東京駅から寝台急行�銀河�に乗り込んで、横手とはまったく逆方向の、京都へと向かったのである。
 途中のどこかで、�銀河�を降りたとしても、飛行機も飛んでいない深夜、秋田県下の小都市へ行ったり、一転、京都へ向かったりすることができるのだろうか。
「�銀河�の東京駅発は、何時だったかね」
 谷田が問いかけると、
「二十二時五十五分です」
 浦上は即座にこたえた。これは、時刻表を持ち出すまでもなく、諳《そらん》じている。
「発車は、ほとんど午後十一時か」
「この時間では、新幹線はもちろん走っていませんし、夜行列車も、大半が出払う頃です」
「東京駅9番ホームで、美穂子の出発を見送ったのは、新潟の高校時代のクラスメートだろ。証人が、一人だけだとしたら、弱くないか」
「竹下正代という女性の、偽証ですか」
「これだけ、いろいろ工作してくれた美穂子のことだ。旧友を抱き込むなんて、それこそ朝めし前じゃないのか」
「それは、どうですかね」
 浦上は同意しなかった。偽証なんてことになれば、正代は、明らかに、共犯者になるではないか。
 それは、美穂子の、一連の犯行センスから、ずれてしまう。
 絵はがきトリックは無論のこと、『二俣製作所』を舞台とする電話工作にしても、(工員たちにそれと気付かせない意味において)美穂子の単独犯行なのである。
 がっちり構築されてきた一連の計画の中で、東京駅9番線ホームにのみ、例外的に偽証を用意したりするだろうか。
 しかも、この�銀河�乗車は、言ってみれば最重要な出発点なのである。
「正代さんという旧友もまた、自分では何も知らないままに、利用されたのではないでしょうか」
「美穂子が、�銀河�に乗って京都へ向かったのは、動かないというのかい」
「乗ることは乗ったでしょう。考えられるのは、次の停車駅で、降りてしまうことですね」
 浦上は、今度はショルダーバッグから時刻表を取り出した。
 寝台急行�銀河�の最初の停車駅は東京都内の品川《しながわ》。二十三時二分となっている。
 浦上は品川駅の時間を書き出してから、時刻表のあちこちをめくった。
 慎重なチェックに十分余りもかけただろうか。
「美穂子は、横手へ行くことができませんね」
 浦上の表情が、一種、虚脱したものに変わってきた。
「品川から上野まで、待ち時間なしでも十八分かかります。品川が二十三時二分では、東北新幹線はもちろんありませんし、北へ向かう遠距離列車は、すべて、上野駅を出発した後です」
「相当な女だね」
 谷田は口元を引き締めた。
 しばらく、重い沈黙が、谷田と浦上の間を遮《さえぎ》った。
 ビールをぐいっと飲み干して、沈黙を破ったのは、浦上である。
「偽証は考えられないが、正代さんという旧友に会ってみるしかありませんね」
「竹下正代さんは、神田のスナックへ、パートで出ているんだ。しかし、働いているのは週末のみという話だから、今夜は駄目だな」
 谷田はそう言って、美穂子から聞き出してある正代の住所と電話番号を、浦上に示した。
 これから、西日暮里まで行くのでは、午後十時近くになってしまう。
 そんな遅い時間の訪問は失礼でもあるし、相手に余計な警戒を抱かせる結果ともなろう。最後の最後まで、取材の真意を悟られてはいけないのである。
「淡路警部への連絡も、明日の結果を待って、ということにしよう」
「横手の部長刑事《でかちよう》さんたちは、横浜に腰を据えているのですか」
「うん、前線本部の形をとっているらしいが、その後の動きは知らない」
「とりあえず、これは返しておきます」
 浦上は、切手を剥《は》がした絵はがきを、テーブルに載せた。
 
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