後は淡路警部に一任して、早々と新幹線で帰京してもいいのだが、問題の気動車だけは自分の目で見届け、雑誌掲載用の写真を、ばっちりカメラに収めておきたかった。
そして、予定時刻に、二両連結の気動車がホームに入ってきた。
乗客たちが、ぞろぞろと降り始めたとき、浦上は、その人込みの中に、カーキ色のジャケットで、黒革のミニスカートが似合う、ほっそりした美女の姿を見たと思った。
そう、そこに、長い髪で顔を隠す、十四日前の美穂子がいた。
幻影の確認は、勝利の到来を意味する。
浦上は、ようやく余裕を取り戻した表情で、快速�きたかみ�に向けて、シャッターを切った。
朝がきて、明るくなった空に、月が残っている。夜の輝きを奪われた白い月。
白井が毒殺された朝も、白い月が、明るくなった空の一角にあったのかな、と、そう思いながら浦上はホームを歩き、遠くの山脈《やまなみ》に目を向けた。