上野着十四時二十四分の�やまびこ40号�で引き返してきた浦上が、上野駅から『毎朝日報』横浜支局へ電話を入れると、
「美穂子は、さっき二俣川署へ連行されたよ。横手へは、今日中に押送される」
谷田の明るい声が返ってきた。
一億四千万円はアタッシュケースに入れられ、ほとんど手つかずの状態で、小田急線町田駅のロッカーから出てきたという。
『コーポ羽沢』三十二号室を家宅捜索《がさいれ》したところ、
「美穂子のポシェットの中から、キーが見つかった」
と、谷田は言った。
追及した結果、それが、町田駅構内にあるロッカーのキーと分かった。町田は、美穂子が、白井とひそかなデートを重ねていた町である。
美穂子は、一日置きに出し入れを繰り返しながら、大金を生活圏から離れた市外のロッカーに保管していたのだった。
「きみ、今夜横浜へ来るのだろうな。『さち』で飲み直そう。スクープの乾杯を、先へ伸ばすわけにはいかないぞ」
谷田の声が、がんがんと響いてくるほどに、高くなった。
東北線の発着駅上野は今日も込んでいる。
浦上は、受話器を握り締めたまま、上野駅コンコースの人波に目を向けた。
殺人《ころし》から、ちょうど二週間目の収束であった。