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松山着18時15分の死者4-2

时间: 2019-04-27    进入日语论坛
核心提示:「将棋駒のほうも、それで決まったな。きみと対局者が一局終えて席を立つのを待って、尾行者は、きみが指していた王将駒をそっと
(单词翻译:双击或拖选)
「将棋駒のほうも、それで決まったな。きみと対局者が一局終えて席を立つのを待って、尾行者は、きみが指していた王将駒をそっと失敬したのに違いない」
「ということは、尾行者は、ぼくの対局の、少なくとも終盤を観戦していたことになりますね」
 浦上は谷田に向かって、そう問いかけたが、盤側にどんな顔の男がいたか、浮かんでくるはずもなかった。対局中は読みにのみ熱中する。よほどのことがない限り、周囲を意識したりしないものだ。
 そして、恐らくその男は、新宿のクラブの常連客ではないだろう。あるいは、将棋など、ろくに知らない男かもしれぬ。
 常連客で、顔見知りの男が盤側に来れば、浦上の記憶に残る危険がある。
「そうだな。きみの指紋を手に入れることだけが目的の、その日が最初にして、最後の客だったのだろうな」
 と、谷田もうなずく。
「だが、何できみがターゲットにされたのかな。これは、きみを犯人に陥れようとする、先方の�動機�が分かれば、ストレートに陰の人間が割れるって図式だろ」
「いえ、そうではないかもしれませんよ」
 浦上の脳裏の片隅には、昨日、松山南署の署長室で感じたことが、そのまま残っている。
 それは無関係な第三者を殺人犯に仕立てることだけが目的であり、仕立てられた浦上と、罠を仕掛けた真犯人《ほんぼし》との間に、主たる関係はないという見方だ。
 すなわち、犯人Xと浦上との間に、�怨恨�とか�復讐�といった動機が存在しないのではないか、ということだ。
「Xは、自分の安泰確保だけが目的か。関連がないとすると、Xを割り出すのは極めて困難だな。しかし、どうしてもきみに思い当たることがなければ、そうなるか」
「でも�物証�は解決しました。次に着手すべきは、昨日、先輩が電話で言っていたように、今回のぼくの取材スケジュールを正確に把握していたのはだれか、ということになります」
「そう、きみをぴたっと殺人現場に立たせるタイミングが、一連の計画の大前提だ」
「それが、考えてみるに、一人しかいないのですよ」
「一人?」
 谷田はテーブルの上に身を乗り出してきた。
「しかし先輩、だからと言ってXが絞られたことにはなりません」
 浦上は、わずかに残っていたコーヒーを飲み干した。
 浦上が言う「一人」とは、副編集長の青木だった。
「副編集長?」
「ぼくが四国を取材することは、編集部の人間なら、だれもが知っています。でも、ぼくが八月三十日朝の新幹線で東京を出発し、広島の宇品港からはフェリーで、午後六時に松山港へ到着するといった詳細を承知しているのは、青木副編集長だけです」
 それは、『週刊広場』の決まりだった。出張記者は、新聞社のデスクに当たる副編集長に、利用列車とか、宿泊先ホテルとか、決定している予約は、細かく届けるよう義務付けられている。
「なるほど。だが、なぜ、Xが絞られたことにならないんだ?」
「青木さんは、殺人をするような人間ではありません」
「何を言ってるんだ。それはきみの主観に過ぎないじゃないか。きみらしくもない、ばかなことを言うものじゃない」
「青木さんは物静かで、誠実な人です」
「誠実だから、人を殺さないということにはならない。この事件《やま》は、初手から定跡を逸脱した駒組みなんだぞ。王手を掛けるのだって、手筋どおりにはいかないさ」
「でも、あの人は、ぼくと体形が似ていませんよ。細波編集長と同じような長身です。レンタカーから逃亡したブルゾンの男とは違います。第一、副編集長は、ずっと神田の編集部にいたはずですよ」
「だったら、共犯を使えばいいじゃないか」
 谷田はそんなことは常識だとばかりに、つぶやきかけて、
「いや、主犯は別にいて、きみのスケジュールを掌握する、その副編のほうが共犯かもしれないぞ」
 と、言い直した。
「ぼくの旅程を、主犯に流したのが、副編集長だと考えるのですか。あの青木さんがまさか」
 と、浦上が再度否定すると、
「事件の設定そのものが、まさかなんだぞ。副編から、ひそかに探ってみろ」
 谷田は語気を強めた。
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