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異域の死者5-5

时间: 2019-04-27    进入日语论坛
核心提示: 浦上が鶴見のコンビニエンスストア『浜大』へ現われたのは、午前十時半を、少し回る頃だった。『浜大』は、横浜を中心にして、
(单词翻译:双击或拖选)
 浦上が鶴見のコンビニエンスストア『浜大』へ現われたのは、午前十時半を、少し回る頃だった。
『浜大』は、横浜を中心にして、この数年、チェーン店をふやしているストアだった。国道15号線に面した鶴見チェーン店は、売り場は広いが、店員の姿は、三人しか見えなかった。
 店の前は、適当にスペースが取ってあった。ジュースなどの自動販売機の横に、客のスクーターが何台も駐車されている。
 若い客が多い店だった。
 浦上に会ってくれた店長も若かった。まだ三十前といった感じの、やせ型の男性だった。店長は、三日前の淑子の行動を、よく覚えていた。
「おととい、刑事さんが見えたときにも、お話しましたが」
 レジの前に立つ若い店長は、買い物客に応対しながら言った。
 この店で、捜査本部は、何をつかんで行ったのだろう?
 コンビニエンスストアは年中無休だが、主婦である淑子は、土、日は休みという契約だった。
 月曜日から金曜日まで、昼間の四時間をパートで働いていた。勤務時間は、十二時半から、午後四時半までである。
 事件当日も、淑子は、定刻前に店へ入った。態度も、仕事ぶりも、いつもと異なるところは見えなかったという。
 変化が生じたのは、呼び出し電話がきてからである。
「電話?」
「ぼくが受けたのですが、ちょうど、宮本さんの休憩時間でした。ですから、午後三時過ぎです。三時十五分頃でしたかね」
 三時からの二十分間が、淑子の休憩時間だった。
 休憩時間、淑子は必ず、国道の向こう側にあるハンバーガー店へ出かけた。二年間のバイト中、一度も欠かしたことのない習慣だった。
「彼女は、ハンバーガーが、そんなに好きでしたか」
「いえ、宮本さんは愛煙家だったのですよ。店では吸いにくいでしょ。で、休憩時間になると、アメリカンコーヒーを飲みながら、一服やっていました」
 と、店長は言った。そういえば死亡時も、淑子のポシェットの中にはショートホープが入っていた、と、浦上は聞いている。
「それでは、三日前の呼び出し電話は、ハンバーガー店へかけ直されたわけですか」
「ええ、電話番号は承知していますがね、先方は言付かった電話なので、宮本さんに伝えてくれればいいということで」
 この店長が伝言を聞いたという。これは幸運だった。電話の内容が分かる。
 浦上の横顔に緊張が走ったのは、ブルゾンのポケットから、取材帳を取り出して、間もなくだった。
「電話は、宮本さんが結婚前に勤めていた会社の人からでした」
「浅野機器ですか」
「はい、そう、そうでした」
「浅野機器のどなたからですか。男ですか、女でしたか」
「男の人でした。村松課長から頼まれたということでした」
「村松?」
 浦上の声が思わず、高くなっていた。電話をかけてきた男は、村松課長の部下のようだったという。
「課長は会議中で、抜けられない。そこで、宮本さんへ伝言依頼のメモを預った、と、話していました」
「その男は、電話口でメモを読み上げたわけですか」
「はい」
 極めて事務的に伝えてきた内容は、
『急用ができたので、今夜五時五十分に、上野公園不忍池の天竜橋近くまで、来ていただきたい』
 というものだった。
 店長は、それをその通りに、ハンバーガー店から戻った淑子に伝えたという。人妻を夜の公園へ呼び出す男性からの伝言。
「あなたは、その電話を、何とも思いませんでしたか」
「別に。宮本さんが、こんな殺され方をしたから言うのではありませんが、一部の新聞に出ていたようなことは、ぼくら、何となく知ってました」
「すると、似たような電話は、以前にもかかってきたことがあるのですか」
「ええ、男の声で、三度ぐらいありましたかね」
「やはり、伝言でしたか」
「どうでしょう。前のときは、いずれも宮本さんが売り場にいましたので、先方を確かめずに、電話を宮本さんに回しました」
 相手は分からないが、淑子のことを、さん付けで呼び出したのだから、亭主以外の男性であったことは間違いないだろう、と、店長は言った。
 店長は、無論そのことも、刑事に告げている。一昨日、上野西署の刑事が、この店へやってきたのは、夕刊で事件を知った店長の方から、通報した結果だった。
「おとつい、宮本さんはすでに殺されていたのだから、無断欠勤は、当たり前です。しかし、休むときは、必ず電話をくれる人でした。ぼくの方から松見アパートへかけても、だれも出てこない。どうしたのかと思っていた矢先に、あの記事でしょう」
 店長は、伝言電話を受けているだけに、慌てた。
「東京の警察の電話番号は分からないのでね、ともかく一一〇番しました」
 すると、折り返し上野西署の捜査本部から電話があり、刑事が飛んできたという。
「以前にも、三度ぐらい電話があったと言いましたね。そのときの男性と、三日前の男の声は、同一人の感じでしたか」
「刑事さんにも訊かれましたがね、どうも、別人のようでした。前に受けた電話は、どこかに遠慮があるというか、気兼ねしている感じの話し方でした。それに比べて今度の男性は、最初から最後まで、本当に事務的な調子だったのですよ」
 それが、事実村松絡みの電話であるなら、前の三回は直接本人がかけてきたものであり、事件当日の呼び出しは、先方が言ってきた通りの、代人ということになろう。
「あなたから伝言を受けたときの、彼女は、どんな感じでしたか」
「どんな、と言いますと?」
「呼び出し電話を、予測していたようでしたか」
「それは気付きませんでしたが、急に、はしゃいだ感じになったのを覚えています」
「はしゃぐ? 少女みたいにですか」
「いい気なもんだ、不倫かな? って思いました」
 店長は若いせいか、故人に対する遠慮がなかった。
 そのとき、淑子は、
『ねえ、不忍池の天竜橋なんて聞いたことないわ。どう行けばいいのかしらね』
 と、店長に尋ねてきたという。やはり淑子は都内に詳しくないし、デートするのに、不忍池が初めての場所だったことが分かる。
『上野駅の案内所か、交番で訊けばいいでしょ』
 と、店長がこたえると、
『じゃ、そうする』
 淑子は笑顔でうなずき、三十分の早退を申し込んできたという。
 死亡時の淑子は、右腕に大きいブレスレットをし、ヒールの高い靴を履《は》いていたが、ストライプのツーピース同様、それは『浜大』で働いていたときの身なりとは違う。淑子は早退して、着替えに戻ったのだろう。
 浦上は、男の呼び出しに応じて、いそいそと出かけて行く若妻の小柄な後ろ姿を思い描き、
(確かに、おかしな男女関係だ)
 と、自分の中でつぶやいていた。そして、編集長の着眼は、正に、最善手だった、と、思った。
 浦上は谷田と会うために、鶴見駅から大船行きの電車に乗った。
 午前十一時を過ぎたところだった。さっき上野駅で味わった混雑がうそのように、車内はがらがらに空いている。
 浦上は取材用のショルダーバッグをひざに載せて、脚を組んだ。
(捜査本部は、淑子のバイト先にかかってきた呼び出し電話を、どう処理したのか。あるいは、どのように対処しようとしているのか)
 それを知りたい。
 もちろん、記者発表は伏せられているし、淡路警部に食い下がった谷田も、『浅野機器』の社員と名乗ってかけてきた�伝言�を、掌握してはいないのである。
 名前が出た村松も、事前の出張スケジュールに従って、仙台支社へ帰っている。浦上は、昨夜の村松を考えてみた。
 仙台のかき料理屋で、地酒を飲みながら、村松がある種の焦燥に見舞われていたのは当然だが、『浜大』を経由した�伝言�には、全く気付いていない様子だったではないか。
 呼び出し電話が村松の工作なら、何も彼も承知していて、素知らぬふうを装っていたことになる。
(違うな)
 あれは本当に気付いていなかった顔ではないか、と、浦上は考える。第一、あれが村松の工作なら、『浅野機器』とか自分の名前を出すようなことはしないだろう。
 浦上を乗せた大船行きの電車は、東神奈川、横浜と過ぎた。
 桜木町駅へ来ると、車窓の左手下に、横浜博覧会のための、みなとみらい21の広い敷地が見えてくる。
(そうか。浜大へ電話をかけてきた、男が問題か)
 浦上は、みなとみらい21の一隅に繋留されている帆船、日本丸に目を向けた。
 男が、�伝言�を頼まれただけの善意の第三者であるなら、殺人事件が公になった時点で、逸速く、警察へ通報しているはずだ。『浜大』の店長と同じようにである。
 男が名乗り出ていれば、村松はシロかクロか、決着が付けられていよう。
 仮に、男が自ら通報してこなくても、『浜大』を聞き込んだ捜査本部は、『浅野機器』を当たっている。
 捜査の網に引っかからないのは、
(男は『浅野機器』にはいないってことか)
 と、浦上がつぶやいたとき、電車は桜木町を発車していた。
 しかし、男が『浅野機器』の社員ではなかったからといって、それで、村松がシロとなるわけではない。全然無関係な人間を使っての、村松自身の工作、という余地も残されているからである。
 だが、愛人である村松なら、そうした手の込んだまねをしなくとも、容易に、淑子を呼び出すことができるだろう。
 すると、手塚(真理)、あるいは宮本ということになろうか。手塚、あるいは宮本が、『浜大』での淑子の休憩時間と、休憩時間にハンバーガー店へ行く習慣を、承知していたと考えても、不自然ではない。
 承知していて、休憩時間の留守を狙ってかけた電話なら、第三者という共犯は不要だ。
 淑子と直接ことばを交わすわけではないのだから、手塚なり、宮本なりが、じかに、店長に�伝言�を頼んでもいいわけである。完全犯罪を狙うなら、共犯者は少ないほどいいに決まっている。
(浜大へ電話をかけてきた男を割り出せない以上、あいつら三人のシロクロもはっきりしないってことか)
 それで捜査本部は、�伝言�を表面に出さず、潜行捜査をつづけているのかもしれない。結局、屹立《きつりつ》する壁は、依然として、どこにも裂け目を生じていないことになる。
 浦上は次の関内駅で、電車を降りた。
 県警本部記者クラブへ電話を入れると、キャップの谷田は席にいなかった。
 浦上とも顔見知りの若い記者が、浦上の電話を待っていた。
「キャップから言付かったのですが、手塚久之だけ、アリバイの裏付けが取れたそうです」
 と、若手記者は小声で言った。
 谷田はいま、その件で、ひそかに淡路警部に面会しているという。
「裏付けは、毎朝日報さんで取ったのですか」
「いえ、そうではありません。これは警察情報《さつねた》です。淡路警部配下の刑事《でか》さんが聞き込んできたって話です」
「手塚が無実なら、真理もシロというわけですね」
「はい。浦上さんから電話があったら、手塚と真理の名前を消すように、と、そうキャップから言付かりました」
「で、キャップは、いつクラブへ戻ってくるのですか」
「昼食《ひる》までには帰ると言ってました。十二時頃、電話を欲しいそうです」
「分かりました」
 浦上は電話を切った。
『ホテル・サンライズ』のレストランで、真理とフランス料理を食べていた長身の男は替え玉ではなかったのか。
 すると、残るのは、夫(宮本信夫)と、愛人(村松俊昭)。
�鳥取みやげ�の二十世紀梨と、コンビニエンスストア『浜大』へかかってきた電話の�伝言�が、果たして、決め手を与えてくれるのかどうか。
 関内駅の大時計は、十一時二十五分を指している。
 谷田が記者クラブへ戻ってくる正午まで、無為に過ごしても、仕様がない。
(無駄で元々だ。やってみるか)
 浦上は、つぶやきながら、駅前の信号を渡った。足を向けた先は、もちろん『浅野機器』の本社ビルである。
 
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