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異域の死者5-7

时间: 2019-04-27    进入日语论坛
核心提示: 浦上は、『浅野機器』の本社ビルにいた。 受付の近くに、簡単な応接セットがあった。病院の待合室にあるような、横に長いソフ
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 浦上は、『浅野機器』の本社ビルにいた。
 受付の近くに、簡単な応接セットがあった。病院の待合室にあるような、横に長いソファに並んで腰を下ろして、浦上の面会に応じてくれたのは、営業部主任の肩書きを持つ三十前後の男だった。
 主任は、手塚常務や村松課長とは対照的に小作りな男だった。
「そのことでしたら、ぼくも刑事さんの質問を受けました。あの日、本社にいた男子社員は、全員が事情を聞かれたようですよ」
 と、主任はこたえた。
 しかし、村松から伝言を頼まれたという該当者はいなかった。男子社員の中の一人がうそをついているのか。
「それはないですね。村松課長の言いなりになって、村松課長をかばう社員なんていません」
 小柄な主任は小心そうな顔をしているくせに、上司の悪口を言った。
「電話をかけた相手が、岸本さんでしょう」
 と、主任は、昨日の手塚常務と同じように、淑子のことを、『浅野機器』に在社していた頃の旧姓で呼んだ。
「いくら何でも、村松課長と岸本さんの、不倫デートの仲立ちをするようなばかな男は、我社《うち》にはいません」
 主任の口調には、怒りのようなものさえ、感じられた。
 どうやら、村松と淑子の関係は、社内全体に知れ渡っており、非難の的となっているようだった。
 半年前に、村松が仙台支社へ転勤となったのも、「生活をやり直すため」なんてものではなかった。いわば、本社で浮き上がった末の、左遷であったらしい。
 そうした状況下での、今回の殺人事件だ。
(浜大へ電話をかけてきた男は、社内にいない。これは、間違いないぞ)
 浦上は、そう思った。浦上は小柄な主任のことばを、信じる気持ちになっていた。
 男子社員の全員が、刑事から事情を尋ねられているのに、村松はそのことを承知していない。
 昨夜、仙台で酒を飲んだときの村松は、どう見たって、警察の動きに関しては何も気付いていない表情だったではないか。
 村松は課長というポストは与えられているものの、いまや、そうしたことを耳打ちしてくれる部下の一人もいない、ということなのだろう。
 そして、その事実は、『浜大』へ電話をかけてきた男が、『浅野機器』の社員ではなかったことの、裏返しの証明となろう。
「もう一つ伺います。あの日、午後三時過ぎにかかってきた電話は、村松課長は会議中なので、と、言っているのですが、午後、営業部の会議が開かれていたことは事実ですか」
「いいえ」
 主任は否定した。
「当社は、よほどのことがない限り、午後の会議はありません。朝の打ち合わせはありますが、午後は大半が営業に出ています。営業部の会議は、会社設立以来、夜間と決まっています」
 しかし、あの日は、夜間の会議がなかった。村松が言っていたように、藤沢工場でトラブルが出来《しゆつたい》したために会議は中止になった、と、主任はこたえた。
 滅多に開かれることのない、午後の会議を�伝言�の口実としたのは、『浅野機器』の方針をよく知らなかったからであろうか。と、すると、電話は宮本の工作ということになる。
 だが、承知していて、逆用した場合もあろう。そう、犯人は完全を意図しているのである。逆用も、十分考慮しなければならない。
「どうも、ご多忙のところをお時間を取らせてすみませんでした」
 浦上は礼を言って、先に腰を上げた。
�伝言�に関する捜査本部の動きと、社内における村松の立場。村松が社員たちの強い風当たりを受けていることを知っただけでも、多としなければなるまい。
 浦上は一礼し、念のために尋ねた。
「あの日、村松課長は定時に退社されたそうですが、昼間はずっと、本社に勤務されていたわけですね」
「はあ、そのはずですが」
「三日前のことですよ。失礼ですが、覚えてらっしゃらないのですか」
「村松課長の机は、こっちには置いてありません」
「そりゃそうでしょう。仙台支社に配属されているのですから」
「支社や営業所から本社へ出張してきた社員は、分室の方へ詰めています」
「分室? この本社ビルのほかに分室があるのですか」
「はい、こちらが手狭なもので、扇町の先のビルの一室を、三年前から借りています」
 夜間の営業部の会議は、もちろん本社ビルで開かれる。しかしあの日、会議中止は早々と決定していたので、村松は午前中の打ち合わせに参加しただけで分室に行き、以後、本社ビルには顔を見せていないという。
 昨夜仙台で、浦上が犯行日の手塚の所在を確かめたとき、
『常務とは部屋が離れているので』
 よく分からない、と、村松はこたえたが、それは分室勤務という意味だったのか。扇町には『浅野機器』の倉庫があり、分室は倉庫の近くだという。
 ついでだ。浦上は分室の所在地を聞いた。
「関内駅前の教育文化センターの先を大通りに沿って行き、四つ目の信号を渡って右折してください。反対側に左折すると横浜スタジアムですから、迷うことはないと思います」
 右折して、三つ目の角にある四階建て雑居ビルの四階一番奥が分室になっている、と、営業主任はこたえた。
 浦上は本社ビルを出た。分室に、新しい期待を抱いたわけではない。『浅野機器』を訪ねたのと同じことだった。浦上は、谷田と落ち合うまでの時間つぶしていどの、軽い気持ちで、扇町へ足を向けた。
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