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この島でいちばん高いところ10

时间: 2019-04-28    进入日语论坛
核心提示: 桃子ははっと顔を上げた。 ひどく、嫌な夢を見たような気がした。Tシャツの首まわりは、水をかぶったように汗で濡れていた。
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 桃子ははっと顔を上げた。
 ひどく、嫌な夢を見たような気がした。Tシャツの首まわりは、水をかぶったように汗で濡れていた。
 外は明るい。時計は持っていなかったから、横にいるユンジャの腕をつかんで、時間を見た。
 六時を過ぎている。まるで身体の中が空《から》っぽになったほど空腹で、晒《さら》された洗濯物みたいにくたくただった。
 伸びをしながら気づいた。聖がいない。トイレにでも行ったのだろうか。
 尿意を感じたので、桃子もトイレに行くことにした。ベンチの下に投げ出された、自分のサンダルに足を突っ込んで立ち上がった。
 トイレにも聖はいなかった。トイレから出た後、桃子はあたりを見回した。
 人影はない。聖はどこに行ったのだろうか。
 もしかして、朝から泳ぎに行ったのかもしれない、そう思ってから、考え直す。聖だって空腹のはずだ。泳ぎたいような気分にはなれないだろう。
 なんだか、嫌な予感がした。桃子は待合室に戻った。
「ねえ、起きて」
 三人に声をかける。里美は目を擦《こす》りながら上半身だけ起き上がった。ユンジャと葛葉も、目を開けた。まだ、頭ははっきりしていないみたいだ。
「聖がいないんだよ。どこ行ったか知らない?」
「知らないよ。トイレじゃないの……」
 里美が寝ぼけたような声で言う。もともと色白の頬が、寝起きのせいで青い。
「トイレにもいないんだもの」
 そう言うと、ユンジャは眉《まゆ》をひそめた。
「それはおかしいわね」
「でしょ?」
 ユンジャは、領くと立ち上がった。
「探しに行こうよ」
「ええーっ、面倒くさい。待っていたら帰ってくるよ」
 まだ眠いのか、むずかる里美に、桃子は言った。
「じゃあ、里美は待っていたら? わたしとユンジャで行ってくるよ」
「わたしも行く」
 葛葉が立ち上がった。
「え、え、みんな行くの? じゃあわたしも行くよ。ひとりにしないでよ」
 里美もあわてて、起き上がった。四人で、外に出る。
 朝の空気は透明で冷たい。こんなときでなければ、とても気分がいいだろう。ユンジャの長い髪が、潮風に巻かれるように舞い上がった。
「わっ!」
 ユンジャが髪を押さえる。桃子はどきりとした。ユンジャが一瞬、なにものかに連れ去られるような気がしたのだ。
「風が強いね」
 海の方を見ながら、葛葉がつぶやいた。海は、朝の光を増幅するようにきらめいている。向こう岸は霧の向こうに煙って見える。たかが三十分くらいの距離が、どうしてこんなに遠いのだろう。
 四人は歩き出した。どこか怖いような気がして、桃子は身を縮めて、まわりを窺《うかが》いながら歩いた。
 まず、最初は砂浜に行った。砂浜は昨日のままだった。桃子が砂に描いた稚拙《ちせつ》な猫の絵もそのままあった。
 海にも聖の影はない。里美が大声で呼んだ。
「ひじりーっ!」
 返事はない。声に驚いたのか、鴎《かもめ》が林から群になって飛び立った。
「ねえ、おかしいよ」
 葛葉の声が震《ふる》えていた。ユンジャは自分より背の高い葛葉の髪を撫《な》でた。
「大丈夫だよ。きっと散歩しているだけだよ」
 そう言われて、葛葉は目を伏せた。桃子は思った。だけど、ユンジャも自分のことばを信じていない。
 砂浜に沿って歩いていると、林の中に入る獣道を見つけた。
「ここ、行ってみる?」
 ユンジャは不安そうにみんなの顔を見た。返事をする子はいない。桃子は意を決して言った。
「行ってみようよ。ほかのところを探して、いなかったら、また戻ってこなきゃならないでしょう」
 里美が桃子のTシャツの裾を引っ張った。
「ねえ、もう帰ろうよ。聖も帰っていて、心配しているかもしれないよ」
 たしかにそういうこともあるかもしれない。少し迷った桃子の背中を、ユンジャのことばが押した。
「帰るにしろ、ここから林を突っ切って行ったら早いと思うよ。ともかく行こうよ」
「でも、道がまっすぐ続いているかどうかわかんないじゃない」
 里美は妙に怯えているみたいだ。いや、里美だけじゃない。桃子だって、なんとなく怖いのだ。なにが怖いのかははっきりと言えないのだけど。
「まっすぐ続いていなくても、そんな見当違いの方向には出ないと思うよ」
 ユンジャがそう言うと、里美は黙った。四人はその獣道に踏み出した。
 ざわざわ、とそこここで枝が鳴る。露《つゆ》に湿った草を踏みながら、四人は歩いた。樹《き》が密生しているせいで、視界ははっきりしない。
(くるんじゃなかった)
 桃子はそう思いながら、先へ急いだ。引き返したい気分もあったけど、たぶん前に進むほうが早いだろう。
「聖……」
 いきなり葛葉がそう言った。
「え、どこどこ?」
 里美が無邪気な声をあげた。葛葉は首を振る。
「違う、違うの」
 そう言って、いきなりしゃがみ込む。落ちていたタオルを拾って差し出した。
「これ、聖のタオルだ」
 たしかに見覚えがある。淡いブルーにリボンの刺繍《ししゅう》。聖はそれで汗を拭いていた。
 そのタオルはだれかに踏みにじられたように、汚れていた。
 里美が小さく悲鳴を上げた。
「ど、どうしたの!」
「そこに落ちているの、聖のピンだよ」
 桃子は、里美が指さしたヘアピンを拾い上げた。赤いラメの小さなピン。同じものは、日本中にたくさんあると思う。でも、これと同じピンが、昨日から聖の髪に光っていたことを桃子ははっきり覚えている。
 ユンジャが呆然とつぶやいた。
「なにがあったの……?」
 答えられる者はだれもいなかった。
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