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この島でいちばん高いところ11

时间: 2019-04-28    进入日语论坛
核心提示: 誇りを持ちなさい。 ユンジャの母《オモニ》はいつもそう言った。個人としての誇り、民族としての誇り、そして人間としての誇
(单词翻译:双击或拖选)
 誇りを持ちなさい。
 ユンジャの母《オモニ》はいつもそう言った。個人としての誇り、民族としての誇り、そして人間としての誇りを。
 そう言って育ててくれたことに、ユンジャはとても感謝している。
 世の中には自分に誇りを持っていない人がたくさんいる。自分に誇りを持っていれば、できないような行為が溢れている。オモニがそう言って育ててくれたから、自分は決してああいうことをしないだろうと、ユンジャは思っている。
 一時的には損をするかもしれないけど、それは間違いなく大切なことなのだ。
 誇りさえ持って生きていれば、だれもユンジャを汚すことなんてできない。
 ユンジャが中学のとき、病気で死んだオモニが教えてくれたことは、もうひとつ。
 自分の仲間を大事にすること。それもユンジャは守っているつもりだ。それは韓国人であろうと、日本人であろうと関係ない。ユンジャは、葛葉や桃子や里美や聖のことを愛しているし、とても大事に思っているつもりだ。
 はっきり口に出すと、みんな恥ずかしがるだろうから言わないけれど。
 この旅行にくることで、ユンジャは、自分が通っている民族勉強会の仲間と少し揉《も》めた。同じ日程で、彼らも合宿をしようとしていたのだ。
 ユンジャはどちらかを優先したつもりはない。ただ、海に行く約束のほうが先だったので、そちらに行くことにしただけだ。合宿の話が先に出ていれば、海のほうを断わっただろう。
 それなのに、勉強会の先輩は、ユンジャを責めた。同じ民族の仲間を優先するべきだと言うのだ。
 ユンジャにはわからない。ユンジャにとって大事なのは、約束を守ることだ。相手が違う民族だからと言って、約束を破ることは、結果的に自分の民族を貶《おとし》めることにならないのだろうか。そう言うと、その先輩は鼻で笑った。
「女子高生の遊びごときで、なにが約束だ」
 ユンジャは腹を立てた。遊びであろうとなんであろうと、約束は約束だ。ユンジャは一度行く、と言ったら、よっぽどのことが起きない限り行くだろう。一度やる、と言ったことは歯を食いしばってでもやるだろう。
 それがユンジャの誇りだ。
 だから、もし聖が苦しんでいるのなら、なんとしてでも助けに行く。ユンジャはそう思った。
 だけど、どうすればいいのかわからないのだ。
 待合室に帰ってきても聖はいなかった。林をくまなく探したわけではないから、断言はできない。けれども、どこにも聖はいないようだった。
「海に落ちた……とかじゃないよね」
 さっきからずっと怯えたように身体を縮めている里美は、縁起でもないことを言った。
 桃子は何度も立ち上がって、外を見に行った。ユンジャは腕時計に目をやった。
「七時半、あと一時間くらいしたら今日の定期便がやってくるよ」
「じゃあ、それまで待ってから、警察に連絡してもらうのがいいかな」
 他力本願だけど、たしかにそれがいちばんいいかもしれない。
 葛葉は抱えた膝に額を擦りつけた。
「聖……」
 今にも泣きそうな声。ユンジャは精一杯元気な声で言った。
「大丈夫だよ。なんでもないかもしれないよ。ふらっと元気な顔で帰ってくるんじゃないかな」
 自分でも能天気な言いぐさだと思う。でも、葛葉を元気づけなければならないのだ。葛葉だけでない、桃子も里美もそれほど活発なほうではない。こんなときにリードをとるのはユンジャしかいない。
 もし、今一緒にいるのが、しっかりした大人の人ばかりだとしたら、ユンジャだって泣き出してしまうかもしれない。
 だから、ユンジャは思った。守ってあげたい、と思える人がいることは、感謝すべきことなのかもしれない。
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