窓から赤い光線が差し込んできて、葛葉は顔を上げた。
昨日、この夕日に見とれてから、もう丸一日がたつのだ。その一日で、いろんなことが変わってしまった。
五人いた仲間はもう三人しかいない。半分より少し多いくらい。
そんなふうに考えてから、葛葉はぎゅっと目を閉じた。なにかが麻痺《まひ》しているみたいだ。
身体が熱い。ずっと冷房もない小さい部屋にいるせいか、汗が止まらなかった。
喉がしきりに渇《かわ》く。
もし、この島に水道も通っていなくて、水すら飲めなかったら、と思うと、背筋がぞっとした。
葛葉は手にしたハンカチで、また汗を拭《ぬぐ》った。ハンカチはもう水で濡らしたようになっている。
「葛葉、どうしたの?」
いきなり桃子が顔を覗き込んできた。
「なんでもない。ただ暑くて……」
「なんか顔色悪いよ」
手が伸びてきて、額に触れる。その冷たさに、身体がびくん、と震えた。
「やだ。この子熱あるよ」
桃子がユンジャに言った。竹帯を片手に窓の外を見ていたユンジャが、こちらにやってくる。
「どうしよう……」
桃子が不安そうに言った。ユンジャも困ったような顔をして、葛葉の手を握った。
「本当だ。熱い」
「大丈夫。ちょっと疲れただけだから」
葛葉はそう言って笑った。そう、たぶんいろんなことがあって疲れただけだ。すぐに楽になる。
「少し寝たほうがいいよ。横になってさ」
葛葉は頷いて、ベンチに横たわった。改めて、自分の身体がどろどろになりそうなほど疲労していることに気づく。
こんな時間がいつまで続くのだろう。
桃子とユンジャが喋っている声が聞こえる。
「解熱剤持っているけど、飲ませたほうがいいと思う?」
「桃子って本当に用意周到だね。でも、どうだろう。風邪《かぜ》の初期だったら、無理に熱を下げないほうがいいと思うけど」
「もうちょっと様子を見てみようか」
そんな会話を聞きながら、葛葉は少しずつ眠りの淵に吸い込まれていく。
帰りたい。うつろな頭で葛葉は思う。柔らかい布団の上で横になりたい。そんなにたくさんはいらないから、温かい食べ物を少しだけ食べて、そうしてゆっくりと眠りたい。
どうしようもなく悲しくなった。
葛葉が望んでいることは、そんなにも難しいことなのだろうか。