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運命を変えた一球34

时间: 2019-05-09    进入日语论坛
核心提示:中畑清 色気のかね合いを知る まず中畑清一塁手(駒大、巨人)の人柄を物語るエピソードから書く。 中畑が一軍昇格した昭和52
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中畑清 色気のかね合いを知る
 
 まず中畑清一塁手(駒大、巨人)の人柄を物語るエピソードから書く。
 中畑が一軍昇格した昭和52年のある日、長島茂雄監督が中畑に打撃コーチをしていた。その最中、長島監督は中畑の握力が意外に弱いのを知った。
「なんだ中畑。お前、そんないい体(身長1メートル83、体重82キロ)しているわりには、握力がないんだな」
 すると中畑はニコリともしないで、こんな返事をした。
「|安積《あさか》商時代から、やわらかーに、やわらかーに、家業の牛の乳しぼりをやってましたから」
 福島県西白河郡矢吹町にある中畑の実家では、二男光二さんが肉屋、三男栄三さんが乳牛を中心とした畜産業を経営している。中畑は四男五女の8番目である。
 牛の乳しぼりをしていたから握力が弱いという中畑の返事を聞いた長島監督、もっともな話だと納得したそうだ。
 さて、そういう中畑が試合時間3時間14分を通じて、心も体もぶるぶるふるえ通しの試合があった。昭和55年4月10日、神宮球場で行われたヤクルト対巨人2回戦がそれだ。
 この年、巨人は開幕3連敗、これが0勝3敗のあとの4試合目だ。だから全員の気持ちが、いまにも泣き出しそうであった。
 それでも巨人は三回、八番・山倉和博捕手、一番・柴田勲中堅手、四番・王貞治一塁手、五番・ホワイト右翼手が、鈴木康二朗投手に4安打を集中、3点を先行した。巨人の先発は江川卓投手である。
「江川だから3点とれば勝つ」
 巨人にそんなムードが流れ出した。ところが、それを最初にぶちこわしたのが、実は中畑だった。
 ヤクルトは三回無死、七番・大矢明彦捕手が左前安打、八番・渡辺進二塁手の右越え二塁打で無死二、三塁と持ち込んだ。九番鈴木は二飛、一番・パラーゾ遊撃手は中畑の前へゴロを打った。ゴロと同時に三塁走者大矢はスタートを切った。
「大矢さんのスタートが視野に入ったので、一瞬、本塁送球だと判断したんです。タイミングは完全にアウトですからね。それがゴロを捕球したとたん、ケロッと忘れちゃって一塁送球しちゃったんです」(中畑清)
 スコアが3対0と3対1では、北極と南極ぐらいの差がある。巨人はその前日、同球場での対ヤクルト1回戦でも、三回終了時点まで4対1とリードしながら、最終的には5対4と逆転負けしている。
「3対1では、また逆転負けか」
 そう思うと中畑は本当に体がふるえた。だいいち、ゴロを捕球したとたん、本塁送球を忘れるようでは、プロフェッショナルではないと思う。
 巨人は3対1にされたあとの四回、江川の左翼席本塁打で4対1と引き離し、問題の五回を迎えた。二番・高田繁左翼手が四球で歩き、三番中畑に打順が回ってきた。
「さっきの記録に表れないエラーを、ここで取り返したい。取り返すにはホームランだ」
 安積商時代、牛の乳しぼりをした両手でバットをやわらかに、それでいて汗ばむほど握りしめた。カウント1─2後の4球目、西井哲夫投手は内角の速球を投げ込んできた。中畑はそれを左中間最深部に2点本塁打を叩き込んだ。
 これでスコアは6対1。しかも登板中の江川は、四回終了時点まで3安打、3三振のピッチングをしている。中畑はダイヤモンドを走りながら思った。
「江川で6対1なら間違いなく勝った。ヒーローインタビューは決定的なホームランを叩きこんだオレかも知れない」
 しかし勝ったと思ったのは中畑だけではない。この五回が終わったとき、球団職員が球場事務所でこんな電話をかけている。
「まもなく試合が終わりますから、長谷川実雄代表の車を球場正面にまわすよう手配してください」
 だが世間なんて、そんなに甘いものではない。それから20数分後、もう一度、中畑が恐ろしさのあまり、ぶるぶるふるえ出すシーンが出現する。
 もう勝ったと判断、迎えの自動車も到着したので腰を上げかけた長谷川代表も真っ青になって座り直した。自動車どころの騒ぎではなくなった。そのきっかけをつくったのが、またまた中畑であった——。
 六回、ヤクルトの攻撃は一番パラーゾから始まった。パラーゾの当たりそこねのゴロを中畑はファンブルして生かした。そのあと二番・角富士夫三塁手の代打スコットの左翼線二塁打で1点。三番・若松勉左翼手の左翼席本塁打で、あっと気がついたら6対4。江川は六回終了でKOされていた。
 それもこれも中畑のファンブルが、直接のきっかけであった。
 世間には“天国と地獄”という言葉があり、戦前のプロ野球では“一寸先は闇”という、勝負を表現した名セリフがあった。20数分前に2点本塁打を打ち、「ひょっとしたらヒーローインタビューのお立ち台にのぼるのは、このオレじゃないか」そう思った男が、こんどは真っ青になってふるえるのだ。
 試合は時間の経過とともに、なお、もつれにもつれた。巨人が七回1点を入れて7対4にすれば、その裏ヤクルトは3点を加え、7対7の同点にしてしまった。
 巨人の7得点のうち、中畑は本塁打で2点をかせいでいる。しかし7失点のうち、中畑のエラーで最小限2点はとられた勘定になる。江川の精神的動揺まで計算すれば、3点─4点ともいえる。これではヒーローインタビューどころか、巨人の足を引っぱった男である。
 7対7の同点で迎えた九回無死、巨人は一番・柴田勲中堅手が右翼線三塁打で出塁。二番高田は松岡弘投手の速球につまって二飛。ここで中畑に打順が回ってきた。0─1後の2球目、内角の速球につまって“三邪飛”を打ち上げた。それを渋井敬一三塁手がポトンと横に落とした。
 エラー、本塁打、エラーと順番にくりかえしてきた中畑に、まだツキが残っていたのである。青くなったり、赤くなったりしている中畑の背中を、長島茂雄監督が叩いた。
「なあキヨシ、気楽に当てること考えればいい。スクイズはしない。だからジャストミートだけ考えてくれ」
 1─1後の3球目、内角シュートがきた。中畑は左翼席中段へ決勝本塁打をぶちこんだ。
 エラー、本塁打、エラーときた順番は、ここでも狂わず、きちんと本塁打と出た。
「試合中に“きょうはオレがヒーローインタビューかな”なんて考えちゃあだめなんですねえ。渋井の落球があったからいいようなものの、捕球されてたらそれで終わりですからねえ。私は“闘魂”という言葉が好きなんですが、試合中は“没我”だなあ」(中畑清)
 最終的に中畑はヒーローインタビューを受けた。でも人間には色気はつきものだ。ちょっと打てば“オレがヒーローインタビューのお立ち台に”と色気を出すのは当たり前だ。男から色気をとったら、これも終わりである。問題はそのかね合いだろう。
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