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小説日本芸譚7-3

时间: 2019-05-22    进入日语论坛
核心提示:   3 客は、板元相模《さがみ》屋《や》喜兵衛と名乗った。額の出た鼻の大きい男である。無論、写楽は初対面であったが、そ
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   3
 
 客は、板元相模《さがみ》屋《や》喜兵衛と名乗った。額の出た鼻の大きい男である。無論、写楽は初対面であったが、その名前は聞かないことはなかった。新しい小さな店で、開板の数もそう多くはなかった。それも俗受けを狙った美人絵の一文絵だけである。要するに三流くらいの板元であった。
「これは先生ですか。お留守中に上りまして失礼いたしました」
 相模屋は写楽を見ると畳一枚すざって頭を摺りつけた。畳の目は破れて、ささらが立っている。
 写楽はそれを見て初めから不快であった。不快は碁会所から持ち帰ったものばかりではない。この男が何となく気に入らぬのである。生来が客の好きでない彼は、不機嫌を露骨に出した表情で坐った。
 ところで客は一向に写楽のむつかしい顔におどろかなかった。
「今日は滅法冷えますでございますな。これからはいやなものが降ってくる日が多うございます」
 彼は丁寧な敬語を使い、滑らかな調子で世間話をはじめた。明後日は浅草寺法華三昧法会《せんそうじほつけさんまいほうえ》でお参りの人出が多いであろう。しかし当節はお上の御倹約令がいよいよ厳しいから人出の割にお賽銭《さいせん》はそう落ちないと思う。浅草といえば、吉原では去年の節季、花魁衆が出入りの若い者に祝儀として出した衣服はひどく粗末だったそうな、などと次から次へとめどもなく喋り出した。
 写楽はそれを我慢して聞いていた。一体、この男は何のために来たのであろう。用件に一向に触れようとはしなかった。しかし、それはうすうす分っていた。板元が絵師のところに来る、他の用事は想像出来なかった。写楽はこの男の饒舌《じようぜつ》に、巻鬢の毒舌と同じように辛抱せねばならぬことに少々憤りが湧《わ》いてきた。
 すると相模屋はてかてかした顔をつるりと撫《な》で、
「時に先生はお忙しゅうございますか?」
 と突然きいた。忙しいか忙しくないか、商売柄この男が一番よく知っているであろう。写楽は更に不愉快になって、
「いや、われわれの方は一向に暇だよ」
 といった。相模屋はそれをきくとひょいと頭を下げ、
「ご冗談で。お忙しい先生方ほどそう仰言《おつしや》います。ちかごろ哥麿先生などは日の出の勢いで、お忙しさも凄《すご》いものでございますな」
 と別な話題を持ち出した。
「何しろ哥麿先生のお宅じゃ板元の店の者が泊り込みの催促だそうでございますよ。それでも版下を描いても描いても上板が足りぬそうでございますから大したものでございますな」
 その例として彼はこんなことを話し出した。去年の春、哥麿は花見に外出したいと云い出した。店の者はそれでは困るから家に居て仕事をしてくれと頼むが、哥麿は承知しない。そこで、どこからか桜の一枝を折って哥麿の画室に飾り、それで我慢させたというのである。
「いや、そうなっても辛いものでございますな」
 相模屋は首を傾けて嘆じ入った。
 話は写楽の一番不愉快なところにきた。彼は哥麿ときくと虫ずが走るのである。彼から見ると、哥麿の絵は俗受けを狙った達者な美人絵に過ぎないのだ。気品は薬にしたくも無い。技巧は確かだが、卑猥《ひわい》な艶色だけで人気を売ろうとしている。その上、才に任せて黄表紙や洒落《しやれ》本《ぼん》、小咄本《こばなしぼん》などにも挿絵《さしえ》を描き散らしている。いや、金にさえなれば、男女秘戯図も描こうという男なのだ。
 これだけでも厭《いや》な奴なのに、噂にきくと、大そう傲慢《ごうまん》な男だそうである。自分の絵に、「人まねきらい、しきうつしなし、自力画師哥麿が筆に云々《うんぬん》」と附刻したそうである。人気に思い上ってのぼせているとしか思えない。まあ、それもいい、我慢の出来ないのは、写楽の役者絵を、なに、悪癖を似せた似づら絵でさ、と吹聴《ふいちよう》しているということであった。——
 ふと、写楽の顔に刻んだ不機嫌な皺をみつけたのであろう、相模屋は又つるりと手で顔を撫でた。
「なあに、人気というものは上調子《うわつちようし》なものでございます。哥麿だって、いつまでも繁昌がつづくものじゃございません」
 彼は写楽の顔色をうかがうように云った。
 哥麿先生はここに至って忽《たちま》ち呼び捨てとなった。恐らく哥麿の話が写楽を不快にしたことに気づいたに違いなかった。彼は写楽の機嫌をとり結ぶようにそう云った。
 相模屋は写楽の不愉快の原因を忖度《そんたく》してか、おのずと言葉の調子には慰めるような響きがあった。つまり、一向に売れない画工の前で流行児の話をした失敗に気づき、すぐに一方の悪口を云って当人の気を直そうとしているのである。その阿諛《あゆ》は別として、いや、阿諛だから正直に写楽の心に傷を立てた。何故かというと、写楽が哥麿を憎む心は単にその芸術だけではなかった。芸術だけなら軽蔑だけで足りる。憎悪の下には、哥麿が諸人に囃《はや》されている当代の流行画工であることと、豪奢《ごうしや》な私生活に対する嫉妬《しつと》が跼《くぐま》っていたからである。考えてみると絵草紙屋の親爺に感じる卑屈も、巻鬢の毒舌に乱された心も、根はそこから生えていることに気づくのである。或いは哥麿の芸術に対しての軽蔑も、そのために不当なものを余計に投げ入れたかもしれない。——写楽のその根性を、最も露骨に衝いたのは、心得顔に云った相模屋の阿諛であった。
 写楽は険しい顔をして、長い羅宇《らお》の煙管を取りあげると、脂《やに》を取るように銅の雁首を火鉢に激しく敲《たた》いた。
「ときに相模屋さん、ご用件は何ですかね?」
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