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丸山蘭水楼の遊女たち1-20

时间: 2019-05-22    进入日语论坛
核心提示:   20 卯八は新蔵地を望む海辺の飯屋にいた。問屋筋の仲仕を主な客とする酒抜きの味つけ飯屋で、赤飯や炊き込み、それに鯨肉
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 卯八は新蔵地を望む海辺の飯屋にいた。問屋筋の仲仕を主な客とする酒抜きの味つけ飯屋で、赤飯や炊き込み、それに鯨肉入りの味噌汁や菜など、安価な値段と味で、界隈《かいわい》だけでなく評判をとる店であった。
 今し方、七ツ半(午後五時)を廻ったばかりだというのに、たてこむ客のうちに大小の刀を帯びた十二、三歳になる侍の子と連れの老人がいて、お膳を前にしての場違いな雰囲気《ふんいき》が、皆の眼を奪っており、それを意識してか主従の箸《はし》を取る様子は一段と折り目正しいものとなった。
 門屋を出た後、念のために小料理屋の中津にも寄ってみたが、昨夜から井吹重平はそこにもあらわれておらず、日暮れを待つより手のないあれこれの思惑に卯八はさいなまれていた。なぜか家に戻る気分になれず、ともすれば頭をもたげそうになる父親の仕事に対する苛《いら》だちを、その都度振り払いながら。彼に撒《ま》かれた尾行者が或いはまだ家の近辺にへばりついているかもしれないのだ。
 上がり口に近い食台の前に坐ると、印ばんてんを脱ぐ間も惜しむかのように、早口で喋《しやべ》りだした二人連れの男に、女中が注文をとる。
「今日の炊き込みは何ね」
「牛蒡《ごぼう》に油揚げ、ほかに浅蜊《あさり》もできますと」
「浅蜊か。そりゃ珍しかたい。そいじゃそいば貰うか。味噌汁は普通のもんばな。鯨はいかんとばい」
 小娘が去ると、男たちは前の話をつづけ、背中合わせにいた卯八はきくともなくきいた。
「いくら内証はいかんというても、縮緬《ちりめん》ひときれで手鎖三十日はひどか。これまできいたこともなか話たい。なしてまたぼけっとしとったとかね。そうと極《き》まるまで、いくらでん手の打ちようのあったとじゃなかか」
「そいには伊王島のばはん(抜荷買・密貿易)のいっちょ絡んどると。ふとか声じゃいえんばってん、そいで今、唐館じゃちょっとした騒動になっとるとげな」
「唐館の騒動ちゃ何のこつね」
 そこで跡切《とぎ》れた男たちの声は、女中が膳を運んでくると、ふたたび息を吹き返した。
「縮緬ば腰巻きにしたというてとがむるとなら、丸山のおなごはみんなとがめにゃいかんごとなるたい。違うな」ひとりはいう。「唐館ばでる時、探り番にでん見つかったというならまだわかるばってん、腰巻きに作ってしもうてからいかんというとは、一体どげんしたことやろか。吉乃ば相方にした男が奉行所に差しでもせんことには誰にもわからんことたい」
「そいけん、そこに伊王島のばはんの絡まっとるというたじゃろうが。ほんなことをいえば、吉乃の腰巻きなんかどうでもよかとたい。問題はその緋《ひ》縮緬がどげな経路で唐館に入ってきたか、それば突き止めるとが目的じゃけんな」
「どうもようわからんことのあると」
「何が」
「縮緬か緋縮緬か知らんばってん、吉乃のつけとった腰巻きはどっちみち唐館の阿茶《あちや》さんからでてきたとじゃろう。唐館にあったとなら、とにかく筋道のちゃんとついとる品物たいね。そいがどんげんして伊王島のばはんと結びつくとか、そこのところがどうもわからんと」
「この頃のばはんはそいだけ手の込んどるとたい。どんげん仕掛けになっとるか、おいもようは知らんが、唐船に乗せてきた品物がすんなり唐館の蔵に入らずに、伊王島か野母崎《のもざき》辺りでひと息もふた息もついてから運んでくると、大分甘か汁のでかたの違うとじゃなかろか。志々伎《ししき》の山蔭《かげ》までばはんしに行くという話もでとる位じゃけんね」
「志々伎ちゅうたら、平戸の志々伎ね」
「そうたい、平戸の志々伎たい。そこまでは番所ん船も目の届かんけん、肝心の品物はさっさと和船に積み変えて、そいから知らん顔して長崎に入ってくるとげな。そのまたこぼれば狙うて、むらがっとる奴のおるけん、奉行所でも手を焼いとるとよ。縮緬の一件もみせしめのとばっちりと、いうとる者はいうとると」
「緋縮緬というとったな」
「そうたい」
「緋縮緬の腰巻きばあからさまにちらつかされたら、誰でもかっとなるとじゃなかか」
「ぬしはすぐ話ばそこに持ってくるとじゃけんな。……」
 卯八は茶瓶《ちやびん》のでがらしを飲みつつ、背後のやりとりをきくともなくききながら、何となくそこに塩辛売りの煙草を結びつけていた。普通の煙草じゃなかとですばい。ひと口吸うたら世の中のことがみんな極楽に見ゆっとですけんね。
 ばはんにまつわる噂《うわさ》と実際、さして珍しくもない話題だが、往来で声をかけてくる煙草売りは初めての経験であった。
 そういえば、井吹重平と付き合うようになって間もなく、似たようなことを話した記憶がある。
 最初の出会いと同様、馬場芝居に毛の生えたような小屋掛けの興行を連れ立って見ての帰り、井吹重平がさりげなくいいだしたのだ。
「なんとのう、熱の入らん芝居じゃったな」
「あんげんぱらぱらの客じゃ、やっとる方もつまらんとじゃなかですか。それに、何ばやっとるとか、筋書きの難しゅうて、台詞ばいうとがやっとのごとしとりましたけんね」
「本物の役者はひとりか二人。あとはみんな素人の一夜仕込みたい。そいけんあげな間のびした芝居になったとよ」井吹重平は考え込むような口ぶりでつけ足した。「そいにしてもひどか芝居じゃったが、まさかばはんの見せ掛け興行じゃなかろうな」
「何ですか、そのばはんの見せ掛けちゅうとは」
「芝居はただ見せ掛けの看板ということたい。大層な儲《もう》け口はほかにあって、なんでそげなくらしのできるとかといわれんごと、幟《のぼり》ば立てとると。わたしたちゃ、これで食うとりますという証《あかし》にな」
「そうすると、その大層な儲け口というとが、ばはんちゅうわけですたいね」
「そんげんこと」
「話にゃききますばってん、ばはんは、そんげん儲かるとですか」
「そりゃ儲かるさ。ぬしは末次平蔵の騒動ば知っとるじゃろうが」
「抜荷買ばしとった長崎代官でっしょ」
「そうたい。自分で船ば持って、唐人相手に大がかりなばはんば何年がかりでやりよった、代官にしちゃ勿体《もつたい》なかごと度胸のある男たい。そのばはんが発覚して子息の平兵衛ともども隠岐《おき》に流刑された時、闕所《けつしよ》目録に記されとった金銀にゃ、幕府の方がたまげたというけんな」
「末次平蔵の騒動は確か芝居になっとるとじゃなかですか」
「〈博多小女郎浪《なみ》枕〉なら、けづり八右衛門のことたい。近松の芝居じゃ、毛剃《けぞり》九右衛門になっとるが、こん男もまた五島ん沖のばはんでしこたま儲けよったと。大坂の海部《かいぶ》屋半兵衛の家に泊まっとったところをつかまって、こいもまた島流しになったとばってん、堺や博多のあっちこっちにおいとったしゃんすの家の床下にゃ、千両箱のごろごろしとったという話ばい」
「話半分にきいても、大分儲かるごたるですね」
「話半分じゃなかと。さっきいうた末次平蔵の闕所目録は千両箱どころじゃなかったとよ。八千七百貫の銀と三千両入りが三十、黄金千枚で十箱、正宗の銘刀その他が二百腰、それに伽羅《きやら》の下駄、珊瑚《さんご》、瑪瑙《めのう》の硯《すずり》など、ありとあらゆる宝物がしめて六十万両にのぼるというとだけんな。……芝居の千両箱どころじゃなかとよ」
「そのうちの一枚でんよかですばってんね」卯八はいった。「そいでも、ああたは闕所目録とか何とかいうて、そんげんことばいちいちよう覚えとんなさるたい」
「その昔、ばはんの一味じゃったと」
「高か声ばだしたらきこえますばい。いくら冗談でも……」
 井吹重平はわざと声をひそめて、「ばはんはばはんでも、もうひとつのばはんたい」といった。
「もうひとつのばはんちゃ何ですな」
「新地の荷物蔵に穴ばあけとったと。ちゅうちゅう鼠になって、朝鮮人参《にんじん》ば一本ずつかじってきよった」
「何処《ど こ》まで本気でいいよらすとかわからんけん」
「すらごと三分、本気三分、あとの四分は金次第、か」井吹重平はいった。「景気直しにこれから一丁、毛ずねばはん組の旗上げば祝うて、丸山小女郎浪枕といくか」
「そりゃよかですばってん、この前からしょっちゅう、おごっつお(ご馳走)になりっ放しですけんね」
「ばはんで稼《かせ》いだ残り金たい。遠慮することはなかと。……今夜はひとつ趣向ば変えて、ターフル(蘭語《らんご》の食事、転じて洋食の意)から出発するか」
「ターフルちゃなんですな」
「迎陽《こうよう》亭の南蛮料理たい。きいたことはあるじゃろうが」
「迎陽亭の名前は知っとりますばってん、食べたことはありまっせんと。……そいでも矢張りそんげんところはおとろしかごたる」
「行ってみれば何ちゅうことはなか。おれも二、三度しか試したことはなかが、まあちょっと目先の変わっとる卓袱《しつぽく》と思えばよかと。……とても全部は食べられんとだけん、好いとる料理ば二品か三品注文すればよか」
「目の保養に、いっぺん食べてはみたかとですばってん、ハアカ(蘭語のナイフ)やホコ(蘭語のフォーク)はとてもよう使いきりまっせんばい」
「しゃれたことば知っとるたい。そいだけ知っとれば上等上等。……」
「吉田屋で食べたちゅう者から、この前習うたばかりですたい。馬鹿が矛で突きよると覚えとけばよかと、きいとりましたと」
「ばあかが矛で突く。うまいこといいよるな」
 卯八は茶瓶のでがらしをもう一杯湯呑みに注ぎ、額の汗をしきりに拭く侍の子を見た。しかと判断することは難しいが、話の種に評判の店を訪ねたというより、安価な飯屋を探してきたという恥ずかしさが、主従の面態《めんてい》には隠しようもなくあらわれている。
 迎陽亭のターフルは想像以上に卯八の舌を困惑させた。上方商人らしい客の一組が和食を食べているだけで、閑散とした食卓についた二人に、女中の差し出す菜帖《さいちよう》(こんだて)から井吹重平の選んだ数品は、どれもこれも油臭い匂いがした。
 バステイソップにブラートボツリ、それにスパナーンと名付けられた料理、ハアカとホコを用いて食べ、レイベル(食匙)で汁を掬《すく》うのであった。
 バステイソップとは、鶏とかき玉子を塩仕立てにしたすまし汁のようなもので、特にどうということはないのだが、野牛の焼肉には辟易《へきえき》した。血の匂いがこびりついているようで、どうにも口に持っていきかねたのである。それでも思い切ってホコの先で突き刺すと、薬臭い油がじゅっと立ちのぼるのだ。
 スパナーンという料理も同様、いわば野菜の油いためなのだが、ボートルの味が強すぎて、何口か吐きださずに飲み込むのが精一杯であった。
「いきなりじゃ矢張り無理じゃったかな」赤い葡萄酒を飲みながら、井吹重平はいった。「慣れてくると、ボートルの匂いがなんともいえんらしかが、ほんなこつをいえば、おれもあんまり好きじゃなかとたい。ただ、牛の肉だけはほかのところじゃ食べられんけんな」
「こんげん、血のしたたるごたっとば、よう食べなはるとですね」
「オランダやイギリス人の食べる一番の好物ときいとったけんね。そんげんもんかと思うて、おれは最初からかぶりついたとよ。そしたら猪《しし》の肉よりよっぽどうまか。……余分のことば考えるけん、妙な気持ちになるとばってん、何も考えずに味おうてみたらよか。もうひときれ、目ばつぶって食べてみらんね」
「ご免してくれまっせ。ほかのことは何でもききますばってん、さっきのひと口でんもう目ば白黒させたとですけんね。……」
「酒でも飲むと、少しは違うとばってんな。ぬしはこれもやらんし……」井吹重平はハアカとホコを稽古でもしたように上手に操りながら野牛の股《もも》を削っては口に入れた。「そいじゃ口直しに鯛《たい》でも焼いて貰うか」
「いやいや、もうよかとです。今のソップで腹ん中の塩辛うなっとりますけん……あとで胡麻《ごま》豆腐でも食べときまっしょ」
「あとでといわずに、いま食べといたらよか」
 しかし迎陽亭に胡麻豆腐はなかった。井吹重平に呼ばれた中年の女中は、生憎《あいにく》それはできぬ、と丁寧な口調で答えたあと、大半を残した卯八の皿を屈折した視線で一瞥《べつ》した。
 侍の子と従う老人が腰を上げたのをしおに、卯八は勘定をすませた。折から一団となって飛び込んできた仲仕の連中に危うくぶつかりそうになるのを避けて外にでると、またしても小雨がぱらつく。
「今日はまたどがんしたあんべえ(塩梅《あんばい》)じゃろうか。よんべのうちに、誰かよっぽど丸山でじょろしば泣かせたとばい」
 卯八と前後してでた男が空を見上げながら眉をひそめる。そのくせそう舌打ちする気色でもないのだ。他の者がいないので、卯八はさした傘を男の方に向けていう。
「途中まで入って行きなさらんね」
「おおきに」男は甲高い声でそういうと手を振りかざした。「どっちみち濡れとりますけん、お仕舞いまでたたられときまっしょ」
 背中の法被をくるりと顔にかぶった職人が急ぎ足で石灯の蔭に消え、内儀のさすしゃれた蛇の目が気を引く。
「この分じゃあと二、三日はちょっと乾きそうもなかばい」
「棟梁《とうりよう》の頭ん中に虫でも起きとるんじゃないか。雨の降るとはおるのせいじゃなかと、よっぽど怒鳴り返してやろうかと思うたと」
「ぼた餅、ぼた餅……」
「そんげん、甘かことばいうとるかね、おるは……」
 それは卯八の前を行く二人連れのやりとりだ。ぼた餅といった男のそれから先の言葉はききとれないが、もうひとりの男は傘をくっつけ合うようにしてうなずく。
 小料理屋中津と、再度の門屋。井吹重平に会う手がかりはもう一軒、摂津町にある行きつけの髪床を覗《のぞ》いてみるよりない。卯八の胸を突然わけのわからぬ不安がかすめる。
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