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丸山蘭水楼の遊女たち2-8

时间: 2019-05-22    进入日语论坛
核心提示:   8 明け方、集中した雨に濡れた道路と晴れ上がった空の、何かしらちぐはぐな狭間《はざま》を歩くような気分で、卯八は仁
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   8
 
 明け方、集中した雨に濡れた道路と晴れ上がった空の、何かしらちぐはぐな狭間《はざま》を歩くような気分で、卯八は仁昌寺に向かっていた。探索の方向が変わったからには、一応峰吉の家に顔をだすのが筋だと知っていても、そこを素通りしてきたのだ。昨夜来親父《おやじ》は帰宅しておらず、それの憤懣《ふんまん》もあって女房に当たり散らし、早いうちに仕度された茶漬けも碌に食べていない。
「よか身分たいね。そんために息子がどげな目に会うとるかも考えんと、したい放題の朝帰りか。フランス寺の仕事じゃよっぽど儲《もう》かるごたるな」
「そんげん浮いた話じゃなかごたるとですよ。一昨昨日《さきおととい》帰んなさった時もそうやった。そう二日酔いの顔もしとんなさらんやったし、朝帰りというても難しか様子でしたと」わきはいった。
「そんならなおさらわるかとたい。酒も飲まずに朝帰りするとなら、ひと晩中何をしとったとか。え、酒も飲まずに朝まで何ばしとったというとか」
「うちにきいても知りまっせんと。おとしゃまは何もいいなはらんし、うちば責めても仕様のなかとでっしょが」
「誰も責めとりゃせんよ。そいでも、わけのわからん朝帰りを黙ってみとるわけにもいかんやろう。身内の者がみすみす伴天連《ばてれん》の黒か罠《わな》にはまっとるというのに、見逃しとったら、こっちまで火の粉ばかぶらにゃならんとぞ。その辺のところがぬしはまだようと納得しとらんけん、おととのことも平気で眺めとらるっとたい」
「どんげんすればよかといわるっとですか、うちに。……ああたのいう通り、危なか仕事ばしよんなさるとなら、じかにいいなさったらよかと。ああたがいえんことばなしてうちがいわるっとね」
「フランス寺の仕事は止《や》めろ、手を引いてくれと、おるが何べんも頼んだこつはぬしも知っとるじゃなかとか」
「ああたの頼みもきかれんとに、うちの言葉はなおさらでっしょ。そんげんいうとりますと。……」
「今度こそはっきり話ばつけるけんな。そんげんいうとくとよか。この上フランス寺に深入りするなら、親子の縁ば切って貰う。いくら親子というても、崖縁《がけつぷち》にぶら下がっとる人間に手を貸しとったら、そいこそともども真っ逆さまに墜落せにゃあならん。飽くまでプティジャンとかいう伴天連坊主にしがみついとるなら、こっちから手を切るほかはなか。ぬしもそう思うやろうが」
「うちには何もいえまっせんと」
「なしてや。なして何もいえんとか」
「おとしゃまの立っとんなさる場所が、いくら断崖《だんがい》じゃというても、後ろからそいば突き落とすごたる真似ばしてよかとでっしょか。うちにはそいが……」
「ぬしはまだそんげんことばいうとる。後ろから突き落とすというなら、突き落とさるっとはむしろおるたちの方たい。断崖に立っとるとは、おととじゃのうしておるたちじゃけんな。おるとぬしの足首に縄を結びつけられて、今にも谷底に引っ張り込もうとしとるとはおととの方ばい。そいけんおるはそん足首の縄ば切ろう、切ってしまおうというとるとよ」
「フランス寺の仕事ばしとんなさるとは、おとしゃまひとりじゃなかとですよ」
「それがどうした」
「もしお上のお咎《とが》めば受けんならんとなら、おとしゃまひとりじゃのうして、みんながそうなるはずでっしょ。ああたのごと、そんげんわるか方にばっかりとらんでもよかとじゃなかとですか」
 卯八はいきなり箸《はし》を膳に投げて立ち上がった。そういう積もりもなかったがその拍子に足を膳にひっかけて、茶漬けの碗と漬け物の鉢は散乱した。
「どげなふうにいいくるめられとるのか知らんが、おととの口裏によう似とるたい。ぬしもおととと一緒に土でんこねに加勢に行くとよか」
 そのまま家を飛び出したのだが、やり切れぬ苛《いら》だちはいまだに納まっていない。天秤《てんびん》を担ぐ豆腐売りのぬるっとした声まで癇《かん》に障り、卯八は裾をまくりながら目差すところへ急ぐ。
 およそ五ツ半(午前九時)にもなろうか。仁昌寺の門を望む界隈《かいわい》はひっそりと静まり返り、椿を塀《へい》代わりにした家の庭先で、井戸水を汲《く》む女の目とぶつかって、卯八は何気なくさらに坂道を進んだ。
 寺に住むという井吹重平の身辺を洗えという指図に対する自分の態度はまだきめかねている。いっそ何もかも打ち明けてしまうか、という思いのなかで、奉行所にあそこまで目をつけられている以上、すでに取り返しはつくまいと、犯そうとする裏切りをあらかじめ釈明しておくような理屈も一方に湧く。海岸の絵図面を異人相手に取引しているという仁昌寺住職にかかわる嫌疑には、当然井吹重平と咲が噛《か》んでいようが、一体どのような報告をあげればよいのか。
 マックスウエルを間に、自分と井吹重平の関係を知悉《ちしつ》していることを匂わせた上で、目安方の役人は新しい仕事を命じたのだ。その方、井吹重平にかなり昵懇《じつこん》の間柄ときいたがまことか。……
 卯八も談合に加わった咲と井吹重平のやりとりを注進しただけでも、捕手がそこに殺到するのは目に見えている。
 左官か大工の風態《ふうてい》をした二人連れの男が通りかかったので、卯八は植え込みの蔭に身を隠した。
「……血肉になるもんを食べちゃいかんといわれちゃ、もうどんげん仕様もなかもんな。今でん骨皮筋右衛門のごとしとるのに、滋養つけられんとなら死ぬほかなかですもんねというて、おかっつぁまも泣きよらすとたい」
「気性の勝っとらすひとばってんね。そりゃよくよくのことばい」
「滋養のあるもんば食べれば食べる程、病気ん瘤《こぶ》の肥え太るとげな。切るには切られず、なんとか瘤の方ばなだめて枯れさせるより手のなからしかが、そいまで体の方がもつるかどうか。毒と薬の両方ば加減して飲まにゃならんけん、看病する者がどいしこか辛うなってしまうというとらした。……」
 おっ、という声がしたので卯八が振り向くと、何時の間にきたのか峰吉がにこりともせず顎《あご》をしゃくる。折しも仁昌寺からでてきた男がいたのだ。井吹重平ではない。とすればあれが有馬永章か。僧衣もまとわず、白い襟《えり》元に釣り合う意気な作りのやや丈の短い羽織。
「あいが住職ばい。わたしはこのまま井吹の方ば見張っとるけん、ああた後ばつけてくれんね。そん方が仕易かじゃろう」
 口早にいう峰吉に頷いて、卯八はそのような姿勢をとった。そん方が仕易かとは、むろん井吹重平との関係を差しているのだが、自分と前後してそこにあらわれた峰吉の先廻りする行動に圧迫されるものを感じながら。
 削り節と昆布《こんぶ》売りが、仏具店の前で荷を下ろしている。前を行く男は滑るような足どりで歩き、行き交う人に挨拶をかわす時も殆ど止まろうとしない。鋳掛《いか》け屋と薬草売りの並ぶ露店の前に、しゃがみ込む童達《わつぱ》の恰好はまるっきり落とし話だ。
 遅かれ早かれ、井吹重平の肩と腕に縄がかかるとして、彼自身の罪科は許されるのかどうか。そう考えるうち、思いもかけず菓子屋に立ち寄った有馬永章を待とうとして、炒豆《いりまめ》屋の割箱を覗《のぞ》く。
「そこにあっとはみんな今朝方炒ったとですよ」
「一合くれんね」
「荷口(今日の初売り)ですけん、負けときますたい。三合も買うてやんしゃい」
「おるが自分で食べるとだけん、一合でよかと」
「あんしゃんは今日、縁起のよかことのありますばい」
「なしてな」
「うちの炒豆はそんげんいわれになっとっとですたい。荷口ば食べたもんは、四十後家でん嫁に行かるっといいますけんな」
 炒豆屋の男はまだ三十そこそこの面体をしながら、大層年寄りじみた口をきく。
 炒豆屋は土台後家の口たい。声にださぬまま飲み込んだ文句が咽喉《の ど》につかえる。渡された紙袋と引き換えに代を払うと、卯八はつっと向かい合わせのやきもの店に入った。相手が菓子屋からなかなかでてこないのである。
 雇われ者らしい小娘が首をのばすような恰好で奥からあらわれると、卯八をしげしげと見た。
「何ば探しとんなさるとですか」
「湯呑みばちょっと見せて貰おうかと思うてね」
「湯呑みならちょうどよかとの入っとりますと。有田から荷の着いたばっかりですけんね」
 小娘はませた口をきく。途端に卯八は店先を離れた。有馬永章が菓子屋を後にしたのだ。炒豆の袋が懐中でぎっぎっときしみ、遠くの方で鶏の啼き声がきこえる。打ち合わせもなく峰吉が仁昌寺にきたのは、昨夜あれから目安方に余程のことをいわれたに違いない。
 菓子折りを下げた男は傘屋の前でふっと歩調をゆるめ、それからふたたび急ぎ足になると、道路の曲がりばなでちらと振り向く。尾行に気付いたのかどうか、しかとはわからぬが、卯八はそう感じた。歩き方こそ目立たぬが、実際に後を追うと、前方の足どりは異常な位早く、卯八は合間に小走りさえまじえた。
 それにしても何処に行くのか。方向からいうと西浜か東浜町辺りだと思われたが、川沿いの道の途中で、先方からきた荷車と擦れ違うと、いきなり左折したのである。慌てて卯八も路地に飛び込んだが、すでに男の姿はなかった。
 菓子屋の時にはもう気付いていたのだ。卯八は近辺の路地や往来をあちこちと駈け抜けながら、なぜかあまり口惜しい気にもなれない。したたかな相手だと判明したので、かえってほっとするような感じが何処かにある。
 一旦仁昌寺に戻るべきか否かを思案しながら、卯八の足は咲の家に向いた。もしかすると、最初からそれを目論《もくろ》んでいたのかもしれないのだ。咲と会えば井吹重平の近況も知れようし、いずれにせよ、その辺の判断がつくと考えたのである。かなりの期間無沙汰していたことに対する相手の思惑もはかれよう。
 阿媽《あま》上がりの女は彼を見ると、驚いた表情をあらわに浮かべて家の中に招じ入れた。
「一体どんげんしとんなさったとね。井吹さんにきいてもさっぱり要領を得なさらんし、海にでんはまらしたとかと思うとったとよ」
「親戚《しんせき》に不幸のあって、後のごたごたで島原に行っとったとですよ」卯八はでまかせをいった。「十日もすれば戻るつもりが、後から後から用事のできて。……ひとには風邪ひいて寝とることにしとりますが、ほんなこつはそんげんことやったと」
「とにかくまあ変わったことの起こっとらんでよかった。ぱたっと音沙汰ののうなったけん、本気で心配しとったとよ」
「井吹さんにでん言い付けしとけばよかったとばってん、いまもいうごとすぐにでん帰ってくるつもりで出掛けたもんで、どうしようもなかったとですたい。心配かけてすみまっせん」
「謝ることはなかばってん、おうちがおらんとほんなこつ不自由しますばい。何かあってもしょっちゅう井吹さんに会うというわけにはいかんし、やきもきしとりましたと」
「そいで、井吹さんの方の仕事はうまく行きよっとですか」
「そいが……」
 咲はみなまで答えず、鉄瓶の湯を急須に移した。茶托《ちやたく》にのせた小作りの伊万里。
「嬉野《うれしの》ですけん、ちょっと味の濃過ぎるかもしれまっせん」
「おおきに」卯八はいう。「マックスウエルの方のつなぎはああたのおらすけん安心しとったばってん、後の仕事はきちんと行きよっとでっしょね」
「今んことで手一杯になっとらすけん、うちの考えとったことまでなかなか廻らんとよ」咲はいった。「以前のごと大浦にも気儘《きまま》に出入りできんし、何かしらん窮屈になってきたと。そうそう、あん時そんげん話のでたとでっしょが。おうちに尾行のついて、要心せにゃならんというて……」
「マックスウエルはなんかよっぽどわるかことばしとるとかもしれんね」卯八はいった。「奉行所は大方そいに目ばつけとるとやろう」
「異人たちのやっとるとはみんなわるかことだらけばってんね。居留地に手をつけるわけにはいかんけん、出入りの日本人ば狙うことにしたのかもしれんよ。少し奉行所の動きの落ちつくまで模様見とった方がよかかもしれんと、井吹さんもいうとんなさったと」
「井吹さんとはあいからずっと、きまった日に会いよっとね」
 咲は首を縦に振ると、「おうちの戻ってきなさったけん、あん方もまた気強うなんなさるでっしょ」という。
「よんべ、あんひとと会いたかと思うて、行きつけの小料理屋に行ってみたばってんおんなさらんやったと。何処に住んどんなさるかわからんし、ほんなこつ忍者みたいなくらしばしとんなさるおひとじゃけんね」
「おうちも住居を知んなさらんとね」
「前々からたい」
「卯八さんも知らんことをうちに教えて貰えるはずもなかったとたいね、そいじゃ……」
「井吹さんとは今度、何時会う手筈になっとっとですか」
「明日」
「明日」卯八は鸚鵡《おうむ》返しに呟く。
「明日の昼前、此処《こ こ》にきなさるとよか。一緒に行けばどんげんかよろこびなさるとでっしょ」
「今夜もう一度、丸山辺りば探してみまっしょ。井吹さんの根城は何ちゅうても丸山じゃけんな」
「丸山といえば、ようべ心中のあったらしかばってん、何もきいとんなさらんね」
「心中。……丸山の何処ね、それは」卯八は息を飲むような口調できいた。染田屋の尾崎が遂にやったのか。
「確か門屋とかいうとらした。二人とも血まみれになっとるのを明け方早う見つかって、客の方はもう息の絶えとったが、女郎は助かるかもしれんというとらした。助かったところでどっちみち落とされるところに落とされるとばってんね」
「そん女郎の名前はだいね。まさか小萩とはいうとらんやったろうな」
「小萩。……そんげん名前じゃなかったとよ。そん小萩というひとに何かかかわりでもあるとね」
「井吹さんのしゃんすですたい」
「丸山にもそんげんひとのおらすと……」咲の声はなぜか乱れた。「門屋の小萩といわるっとね」
「しっかい惚《ほ》れられとんなさっと。あんひとは遊び上手じゃけん」
「うちはまた井吹さんのしゃんすはひとりかと思うとった」
「そいが小萩さんじゃろう」
「うちがきいとるとは、阿茶さんとのあいの子たい。なんでも英語の塾に通うとる娘さんらしかとよ」
「阿茶さんのあいの子。……」卯八はいう。「だいの話ね、そいは」
「井吹さんは黙っとんなさるばってん、だいでも知っとる話よ」
「そん娘は何処に住んどらすと」
「何処かは知らんばってん、井吹さんは今そんひとと一緒に住んどらすとじゃなかと」咲の声は唾でも絡んだようにきこえる。
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