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日本史の叛逆者31

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示:「皇子様、村国男依《むらくにのおより》どのより、吉報でござりまする」 舎人《とねり》の報告に、大海人は玉座でうつらうつら
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 「皇子様、村国男依《むらくにのおより》どのより、吉報でござりまする」
 舎人《とねり》の報告に、大海人は玉座でうつらうつらとしていた。
 男依は、大海人方で最も戦功をあげている将軍の一人である。
「帝を捕えたか」
 目をさました大海人は勢い込んで聞いた。
「いえ、それはまだでございますが、敵方の将軍|犬養連五十君《いぬかいのむらじいそぎみ》、谷直塩手《たにのあたいしおて》の両名を捕えましてございまする」
「犬養と谷とな、上出来じゃ。男依に手柄であったと伝えよ。それから、両名はただちに市《いち》にて首をはねよ、とな」
「かしこまりました」
 舎人は退出した。
「父上、これでもはや帝も逃れようがございませぬな」
 高市《たけち》皇子が言った。
 高市は大海人の最も年長の子である。
 今度の戦いでは、大将軍として見事な指揮を見せている。
「うむ、これで帝の将軍はことごとく滅ぼしたことになる。おそらく帝の本軍も、散り散りになっておるであろう」
 大海人は満足げにうなずいた。
「先に敵将|智尊《ちそん》を討ち取り、今度は犬養・谷の両将を生け捕るとは、男依の功は抜群でございまする」
「そなたも、戦場に出て、手柄をたてたいのであろう」
「お許し下さいますか」
 高市の目が輝いた。
「ならぬ」
 大海人は首を振った。
「何故《なにゆえ》でございます。わたくしが信ずるに足らぬと仰せられますのか」
 高市は色をなして言った。
 そうではない。
 大海人は改めて長男を見た。
 若い頃、身分の低い女に生ませた子である。だが、それゆえに、筋骨たくましく雑草のような強さを持っている。戦いの初期、大海人が高市を先鋒軍の将として起用したのも、その力量を買ってのことだ。実際、何人もいる男子のうち、最も頼りになるのは、この高市なのである。
「やめておけ、いまさら手を汚すことはない」
「手を汚す?」
 高市はけげんな顔をした。
「そうだ、仮にも相手は帝だぞ。殺せば、大逆の罪を犯すことになる」
「では、命を助けるのですか、ここまで来て——」
「馬鹿な。たわけたことを申すでない。首はもらう、百年の後を思うならば、そうせねばなるまい」
「ならば、わたくしが——」
「それが、たわけたことだと申すのだ」
 大海人は叱りつけた。
「よいか、わしはな、先帝に何度も汚れ役をやらされた。息子のそなたにも話せぬことをな。もう、よい、放っておけばよい。男依もおる、吹負《ふけい》もおる。まもなく吉報が届くであろう。吉報がな」
 高市は不服そうに口をつぐんだ。
 その将軍村国男依は、琵琶湖のほとり、大津京近くの粟津《あわづ》にいた。
 ここは定期的に市が開かれ、多くの民が集まってくる。水陸の交通の便もよく、大津京に最も近い大市であった。
 その大市の真ん中の広場に、荒縄で固く縛《いまし》められた二人の偉丈夫が引き出された。
 あたりは甲冑に身を固めた兵士によって、警戒線が張られている。
 二人の男、帝方の将軍犬養連五十君と谷直塩手は、髪をふり乱し、その顔も血と泥で汚れている。
 しかし、目だけは生気をみなぎらせ、警戒の兵士や、集まってきた群衆に噛みつかんばかりの勢いだった。
 男依は群衆が充分に集まったところを見計らって、二人の前に出た。
「犬養の五十君、谷の塩手、叛逆の罪により斬《ざん》に処す」
 男依は口頭で言い渡した。
「叛逆だと、笑わせるな」
 後ろ手に縛られたまま、五十君は叫んだ。
「——わしが誰に叛逆したというのだ? 男依、言ってみろ」
「知れたこと、大海人皇子様だ。自分の罪を忘れるとは、五十君、それほど恐ろしいか」
 男依は冷やかな声で言い返した。
 兵士がどっと笑った。
 五十君は顔を真っ赤にして、
「黙れ、黙れ。汝《なんじ》こそ、大逆無道の罪を犯しておる。わしと塩手は、畏《おそ》れ多くも帝の命《めい》によって戦に臨んだのだ」
「そちこそ黙れ、帝などはこの世におわさぬ。先帝が崩じられて後、帝は、いまだこの世におわさぬ」
 男依はことさらに大声で叫んだ。
 男依はもともと武人ではない。大海人の舎人《とねり》である。だからこそ、このことがいかに重要かを十二分に心得ていた。
 帝はいない。大海人が討つのは、あくまで大友皇子であって、大友の帝ではない。だから、これは大逆ではない——。
「斬れ」
 男依は五十君に反論の機会を与えなかった。
 首斬り役の剣が一閃し、五十君の首はころりと地に落ちた。
 塩手は絶叫した。
「おのれ、大逆無道の大海人め、いずれ天罰が下ろうぞ」
「ええい、斬れ、斬ってしまえ」
 塩手の首も地に転がった。
 男依はあたりを見回して、声を張り上げると、
「よいか、このまつろわぬ[#「まつろわぬ」に傍点]者共を滅ぼして後、大海人皇子様が天津日継《あまつひつぎ》になられるのだ」
 男依の大音声に向かって、異議を唱える声は寂《せき》として無かった。
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