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日本史の叛逆者38

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示:     四 中大兄は蘇我一族打倒の計画を、この「弟」に打ち明けた。 人払いして、低い声で話す中大兄の言葉を、漢殿は一言
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     四
 
 中大兄は蘇我一族打倒の計画を、この「弟」に打ち明けた。
 人払いして、低い声で話す中大兄の言葉を、漢殿は一言も口をはさまずに聞き終えたあと、
「兄君、このことをなぜ、わたくしにお打ち明けになるのですか」
 とたずねた。
 兄君——と呼ばれるのは、中大兄にはいささか抵抗があった。
 しかし、この際、そのことに文句をつけるのはやめにした。
(まず、こやつを味方につけることだ)
 中大兄は笑みを浮かべて、
「そなたを男と見込んでのことだ」
「では、わたくしも仲間に加えて頂けるのですね」
 漢殿は信じられないような顔をして言った。
「そうだ」
 中大兄はうなずいて、
「ぜひ加わってもらいたい。きょうはな、わざわざそのためにここまで来たのだ」
「そうでしたか」
 漢殿は感激して、目をうるませ、
「お許し下さい。わたくしは兄君が、わたくしのことを嫌っておいでになる、とばかり思っておりました」
「何を嫌うものか」
 中大兄は首を振って、
「やはり頼りになるのは、同じ腹から生まれた者よ。そなたのような者を弟としていることを、わしは天に感謝している」
「ありがとうございます。そのお言葉だけで、わたくしは生きていた甲斐がございました」
 漢殿の目から涙がこぼれ落ちた。
(御《ぎよ》しやすいやつだ)
 中大兄は本心をおくびにも出さない。
 この男を、入鹿打倒の駒として使う。
 それも捨て駒だ。
 用が済んだら、さっさと捨てればいいのである。
(万一、事破れても、この男にすべての責《せめ》を負わせればよい)
 中大兄はそこまで考えていた。
「兄君、何なりとおっしゃって下さい。わたくしは兄君のためなら、どんなことでも致します」
 漢殿はもちろん「兄」の胸中など知るよしもない。
「——どんなことでもするか、それは嬉しい。だが、本心か?」
 中大兄は冷静に念を押した。
「無論のこと」
「場合によっては、命も危ういことになるかもしれぬ」
「覚悟致しております」
 きっぱりと漢殿は言った。
「ならば言おう、入鹿をな——」
 殺してくれ、と言いかけた途端、二人が向い合っている卓の下から、低いがよく通る声が聞こえた。
「お待ち下され」
 中大兄は仰天した。
 それは床の下から聞こえてきたのである。
「虫麻呂か、何事だ」
 対照的に漢殿は落ち着きはらっていた。
 立ち上がろうとする中大兄を制して、そう言った。
「——間者が潜んでおります」
 床下の声は言った。
「何だと」
「逃げようとしておりますが、いかが致しましょう」
「殺せ」
「かしこまりました」
 それで気配は消えた。
「蘇我の間者でございましょうかな」
 漢殿はまるで他人事のように言った。
 中大兄の口は、からからに乾いていた。
 もしそうなら、自分は殺される。
 いや、それどころか一族皆殺しになるかもしれない。
 入鹿の強大な力に対して、中大兄は今のところ対抗できる力はない。
「早く、早く、捕まえねば」
「御心配なく、虫麻呂が片付けます」
 漢殿は動こうとさえしなかった。
 どれぐらい時が過ぎたろう、それは決して長い時間ではなかった。
「お待たせ致しました」
 また、床下から声がした。
「仕留めたか」
「はい、御覧になりますか」
「兄君、いかがなされます」
 漢殿は中大兄に聞いた。
「見よう」
 中大兄はうなずいた。
「そういうことだ。どこにある」
「道へ出るところの、柳の下でございます」
「わかった」
 漢殿は中大兄を見ると、
「この少し先でございます。御案内致しましょう」
 と、立ち上がって先に立った。
 中大兄もあとに続いた。
 家来たちが出てくると、中大兄は、
「よい、豊人だけついて参れ」
 と、従者を従えて馬に乗った。
 馬で行けば、ほんのわずかの距離だった。
 市へ続く大道へ向かう細い道、その脇に立つ柳の木の下に、くすんだ色の衣をまとった男が跪《ひざまず》いていた。
 気が付くと、その柳のかたわらに朱《あけ》に染まった男が倒れている。
「——これは乙丸ではないか」
 中大兄は叫んだ。
「御存じで」
「入鹿の使者の一人だ。いつも近くにいるのでな——」
「なるほど、では、入鹿の�シノビ�でございましょう」
「シノビ? シノビとは何だ?」
 聞きなれぬ言葉に、中大兄は言った。
「唐《から》の国で申す、間者のことにございますが、その間者を勤めるために、体を鍛え術を学んだ者のことを指すのでございます」
「それは、こなたの国の言葉か?」
 中大兄は漢殿に、あえて言った。
「いえ、この国の�忍ぶ�という言葉から出ております」
 漢殿は表情を変えずに言った。
「この者は——」
 と、中大兄は無気味そうに、虫麻呂を見て、
「そなたの�忍び�か」
「はい、わたくしの影とでも思って頂ければ」
「だが、わしは人払いを命じたはずだ」
「うかがいました」
「なぜ、この男を去らせなんだ」
「これは、わたくしの影。影は払えませぬ」
「——」
「それに、兄君。もしこの男がいなければ、いまごろこの者は大臣家《おおおみのいえ》へ駆け込んでいることでございましょう」
 中大兄は言葉を返せなかった。
 その通りだ。
 もし、この者が駆け込んでいたら——。
 中大兄は再びぞっとした。
「名は何と申したか?」
 気を取り直して、中大兄は言った。
「虫麻呂でございます」
「そうか虫か、人ではなく虫なら、よい。これからも頼むぞ」
「ははっ」
 虫麻呂はその場に平伏した。
「虫麻呂、この骸《むくろ》は、どこか目立ぬところへ埋めるのだ。大臣家の犬に嗅ぎつけられてはならぬぞ」
 漢殿は落ち着いた声で指示を与えた。
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