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日本史の叛逆者54

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示: 蝦夷の館は、巨勢徳陀を大将とする軍勢に、蟻の這い出る隙もないほどに、びっしりと取り囲まれた。 脱走者が相次いでいた。 
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 蝦夷の館は、巨勢徳陀を大将とする軍勢に、蟻の這い出る隙もないほどに、びっしりと取り囲まれた。
 脱走者が相次いでいた。
 徳陀は、「前非を悔いて投降するなら許す」と、繰り返し呼びかけていた。
 味方は、あっという間に半分に減り、さらに半分に減り、気が付くと数えるほどしかいなかった。
(これはいかん)
 蝦夷は覚悟を決めざるを得なかった。
 残った一族を呼び集めて、最後の宴を催した。
 誰も笑う者はいない。
「猿手」
 蝦夷は最後まで残っていた間者の頭を呼びつけた。
「御前《おんまえ》に——」
「見ての通りだ。大臣家もこれまでよ。われらは自害する」
「大殿様」
 猿手の顔が悲しみにゆがんだ。
「——申しわけもござりませぬ。もとはと言えば大臣様をむざむざ討たせた、この猿手めの油断」
「言うな。もう済んだことだ」
 蝦夷は淡々とした口調で、
「最後の下知じゃ。わが首を敵に渡すな。われらの自害を見届け、館に火を放て」
「——」
「そのあとは、勝手にせよ。——よいな」
「ははっ」
 猿手は大地に平伏した。
 その場を離れようとした蝦夷は、ふと振り返った。
「もし、死に損ねた者がおれば、とどめを刺してくれ。この、わしもだぞ」
 そう言って蝦夷は館の中に消えた。
 猿手は声をあげて哭《な》いた。
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