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日本史の叛逆者61

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示: 皇太子中大兄は権力の頂点をきわめて、初めてそこが居心地の悪い場所だと気が付いた。 気が休まらない。夜に何度となく夢を見
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 皇太子中大兄は権力の頂点をきわめて、初めてそこが居心地の悪い場所だと気が付いた。
 気が休まらない。夜に何度となく夢を見る。その夢はこのところ決っていた。
 自分が、あの蘇我入鹿になっている。そして殺されるのである。
 自分の腹に太い槍が突き通される。
 そこのところで目が覚める。
 槍を持っているのは、古人大兄皇子その人だった。
(殺さねば)
 中大兄は、何度か同じ夢を見たあと、とうとう決意した。
 こういう時に呼ぶのは、鎌子しかいない。
「皇子様、何の御用で」
「古人を——」
 中大兄も、さすがに、すぐにそのことを口にすることはできなかった。
「古人大兄様を?」
 鎌子も中大兄が何を言おうとしているか、咄嗟には見当がつかなかった。
 勘のいい鎌子にしては珍しいことである。
「消しておきたいものだな」
「消す?」
「この世からな」
 中大兄は言った。
 鎌子は意外に思った。
 古人大兄は吉野で仏道修行をしており、政治的には何の力もない。
 その古人大兄を、どうして消さねばならないのか。
 もちろん、口には出さない。だが、中大兄は鎌子が何を言いたいのか、見当はついた。
「——枕を高くして眠れぬからだ」
「なるほど。左様でございますか」
 鎌子にも中大兄の不安はわからぬでもない。
「察せよ」
 これ以上は言わぬ。中大兄は面倒なことは嫌いである。
「わかっております」
 鎌子は深々と一礼した。
「では、ただちにかかれ」
「ただちに、というのは、いささか」
 鎌子は軽く首を振ってみせた。
「なぜ」
 中大兄は不満の色を見せた。
「それでは、暗殺《やみうち》になりまする」
「よいではないか。あの者にやらせればよい」
 中大兄が言うのは、むろん漢殿のことである。中大兄は、漢殿の武術の技量だけは認めるようになっていた。
「皇子様、あなた様は権力《ちから》をお持ちです」
「権力?」
「はい、その権力を使わずに、ただ殺すのは勿体ないことでございます」
「わからぬな」
 中大兄は率直に言った。
「天下の人民の賞罰の権は、皇子様の手にあります。誰であろうと、その罪を問うのは、皇子様でございます」
「罪とは古人の罪か?」
「はい」
「古人に何の罪がある?」
 奇妙な成り行きだった。
 古人大兄を殺そうとしている中大兄自身が、古人大兄に何の罪があると問うている。
「お作りなされませ」
「作る?」
「御意。罪さえあれば、それを討つのは、政《まつりごと》をつかさどる者として当然のこと。天地に恥じることなく、人もとやかく言いませぬ」
「では、どんな罪をかぶせる?」
「叛逆でございましょうな」
「叛逆?」
「叛逆の罪ならば、有無を言わせず、皆殺しにできまする」
「皆殺し?」
 中大兄は青ざめて、
「子まで殺すというのか」
「やむを得ませぬな」
 鎌子は非情に言い切った。なおも不審顔の中大兄に鎌子は、
「子を残すことは、恨みを残すこと。将来の禍根は今のうちに断っておくことでございましょう」
「——うむ」
 中大兄はうなずいて、
「よきにはからえ」
 と、一言命じて立ち上がった。
(やれやれ)
 鎌子は疲労を感じていた。
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