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日本史の叛逆者67

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示: 帝は、即位して半年後の大化元年(六四五)十二月に、都を飛鳥《あすか》から難波《なにわ》に遷した。 改新の詔《みことのり
(单词翻译:双击或拖选)
 帝は、即位して半年後の大化元年(六四五)十二月に、都を飛鳥《あすか》から難波《なにわ》に遷した。
 改新の詔《みことのり》がただちに発布された。
「昔、大王《おおきみ》等の立て給《たま》える子代《こしろ》の民、処々の屯倉《みやけ》、及び、別《こと》には臣《おみ》・連《むらじ》・伴造《とものみやつこ》・国造《くにのみやつこ》・村首《むらのおびと》の所有《たもて》る部曲の民、処々の田荘を罷《や》めよ。仍《よ》りて食封を大夫より以上《かみつかた》に賜ふこと。各差《おのおのしな》有らん。降《くだ》りて布帛を以《も》て、官人・百姓に賜ふこと、差有らむ」
 詔の冒頭の部分である。
 帝はそれに目を通した時、さすがに不安になって言った。
「皇太子《ひつぎのみこ》よ、これで大丈夫か」
「はい」
 中大兄は声をひそめて、
「何事か、騒ぎ出す輩《やから》があるかもしれませぬが、わたくしが押さえます。どうぞ、お気遣いなく」
「そうか」
 帝は不承不承うなずいた。
 大王家の権力強化につながるということは、帝にもわかっている。
 だが、豪族たちの反感が心配なのだ。
 中大兄は宮中への参内を済ますと、帝の后の殿舎を訪ねた。
「これは、お后さまにはお変りもなく」
 中大兄は一礼した。
 間人《はしひと》の后は、硬い表情でそれを見ていたが、一拍置いて周囲の女官に命じた。
「下がっていなさい」
 女官たちは去った。
 あたりに人の気配がないのを確かめると、硬直した間人の表情が崩れた。
「兄様」
 それは、妹が兄を呼ぶ声ではなかった。
「間人」
 中大兄も立って、その名を呼んだ。
 帝妃《おおきさき》の名を口にするなど、いかに皇太子でも許されないことだ。
 しかし、中大兄はそれをした。
 どちらからともなく、二人は抱き合った。
「ああ、どうしてもっと早く来て下さらなかったのです」
 間人は涙声で訴えた。
 中大兄は、ほつれた間人の髪をかき上げながら、優しく言った。
「許せ。政務に多忙でな」
「うそ」
 間人は、にらんで、
「わかっています。他の女が出来たのでしょう。また石川麻呂の娘ですか、それとも——」
「馬鹿なことを言うな」
 中大兄は怒らず、辛抱強く、
「遷都もあった。改新の詔も出さねばならなかった。忙しかったのだ。それに——」
「それに?」
「帝妃のところなど、滅多に来られるものではない。見つかったら首が飛ぶ」
 まさか首をはねられるようなことにはなるまいが、皇太子の地位はまちがいなく失うことになるだろう。
 いま、この瞬間は、中大兄にとって暗殺者の接近よりも危険な時間かもしれないのだ。
「あら、そんなことはお気遣いなく」
 間人は笑って、
「ここには誰も近付かせませぬ」
「だが、あの者共も、何かおかしいと思っているのではないか」
「樟葉《くずは》らのことですか」
 間人は女官の名を言った。
「そうだ」
 中大兄が重々しくうなずくと、間人はさらにころころと笑った。
 中大兄は気分を害した。
「何がおかしい」
「だって、兄様。樟葉はとっくにこのことを知っていますのよ」
「何だと」
 中大兄は青ざめた。
 間人は、そんなことには無頓着で、
「兄様は、樟葉には気付かれていないと思ってらしたの」
 間人は、兄の中大兄に意外に抜けたところがあると、あらためて思った。
 中大兄は、声まで震わして、問い詰めた。
「心配ないのだな」
「ありませんわ。樟葉は、わたくしの娘の頃からの付き人ですもの。万事心得ています」
「それにしても、もし帝に、このことが知れたら」
「もし、そうなったら、古《いにしえ》の軽太子《かるのたいし》と衣通姫《そとおりひめ》のように、地の果てで暮せばよろしいではございませんか」
 間人は事もなげに言った。
 中大兄は言葉を失った。
 そんな伝説がある。
 衣通姫は、美しさが衣を通して光り輝くような絶世の美女だった。その妹を愛した軽太子は、その罪ゆえに皇太子の地位を失い、二人して南海の果てに追放された。
 妹はそれでもいい、と言う。
 しかし、そんなことは、中大兄は露も考えていない。
「愚かなことを言うでない」
「愚かなことでしょうか」
 そう言って中大兄を見上げる間人の瞳に、抗議の色があった。
「后の座を失ってもよいのか」
「かまいませぬ」
 きっぱりと間人は答えた。
「待て、そんなことを考えてはならぬ」
「なりませぬか」
「ならん。それよりも、わしのことを考えてくれ」
「兄様のことを?」
「そうだ。わしがこの国を本当に自分のものにするまで、そなたには陰から支えてもらわねばならぬ」
「——」
「たとえば、今度の詔だ。帝は今一つ腰が座っておらぬ。陰から励ましてはくれぬか。これを断行することは、この国のためでもあり、わしのためでもあるのだ」
「——ずるい、兄様」
 うつむいて、つぶやくように間人は言った。
「そうかもしれぬ。政事とは、ずるいということだ」
「でも、兄様。あの詔は下々に評判がよくないと聞いておりまする」
「ほう、そなたの耳にも入っておるか」
「あのようなものを続けてゆけば、大王家の威信がゆらぐことになりませぬか」
「かまわぬ。ゆらぐがよい」
「——?」
「ゆらぐのは、今の帝の威信じゃ。今の帝の威信がゆらげば、次の新たな帝を待望する声が起こる。——わかるな」
「兄様は恐ろしい方」
 間人はあきれたように言った。
「言ったではないか。それが政事というものだ」
 中大兄は今度は余裕を見せて言った。
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